概要
戦争で愛する家族を失ったわたしたちが、もう一度幸せをつかむまでの物語。
進駐軍占領下の昭和二十二年、東京の隅田川にかかる厩橋近く。二十一歳の女性、横澤かつらは雨漏りのするバラックで、食べ物や着る物に不自由しながらも弟の康史郎となんとか暮らしている。
仕事場であるヤミ市の食堂「まつり」で酔いつぶれていた青年、京極隆を助けたことからかつらの世界は広がっていく。台風で壊れたバラックを直したり、一緒に映画を見たりしながら二人の絆は深まっていくが、戦争で家族を失い、残った弟が一人前になるまで自分の幸せは後回しだと思っていたかつらは、隆のプロポーズを断る。
頼りになるかつらの隣人たち、バラックの土地を狙う地上げ屋、隆を苦しめる謎の男、康史郎の友人になる戦災孤児のきょうだい、思いがけない再会をした女学校の親友、意に沿わない縁談に苦しむ赤い銘仙の少女。
様々な人々とのふ
仕事場であるヤミ市の食堂「まつり」で酔いつぶれていた青年、京極隆を助けたことからかつらの世界は広がっていく。台風で壊れたバラックを直したり、一緒に映画を見たりしながら二人の絆は深まっていくが、戦争で家族を失い、残った弟が一人前になるまで自分の幸せは後回しだと思っていたかつらは、隆のプロポーズを断る。
頼りになるかつらの隣人たち、バラックの土地を狙う地上げ屋、隆を苦しめる謎の男、康史郎の友人になる戦災孤児のきょうだい、思いがけない再会をした女学校の親友、意に沿わない縁談に苦しむ赤い銘仙の少女。
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おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!苦難を糧に、蓮華は花開く
戦後を強く生きる人々の物語。
そう聞くと「難しそうな話だな」と苦手意識を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、本作においてはそんな心配は無用です。易しい文章表現と、個性的な登場人物たちが織りなす物語に、気づけば貴方は夢中になっていることでしょう。テンポがよく、それでいて細部にまで配慮の行き届いた筆致はまさに圧巻の一言。軽小説の趣を維持しつつも、時代背景や小道具を疎かにしない構成からは、作者様の作家としての練度の高さが窺えます。
そんな中でも本作の醍醐味は、やはり人のぬくもりが繊細に描かれている点でしょうか。厳しい生活の中にある悲哀ばかりに焦点を当てるのではなく、そんな状況で生きる人々の逞し…続きを読む