小津の映画のような

戦後東京の混乱を生き抜く姉弟を軸に、人々の姿がたくましく描かれます。
ボロ家に住み、服にツギをあて、粗末な食事。それでも家族がそこにいるから頑張れる。誰もがそんなだった時代を鮮やかに教えてくれます。
低い視点から静かにつづる、昔の映画を観るような小説です。
空襲や戦場の記憶、そしてかっぱらいや刃傷沙汰などを書きつつも端正な印象なのは、抑制的で上品な文章のおかげでしょうか。嫌な気持ちになることなく読み進めることができました。
日常の喜びがここにあります。

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