この世に生きること

この世に生きることの苦しさを喩えた「苦界(くがい)」という佛教用語があります。
昭和初期、終戦直後の人々の生活は、まさに苦界。戦争を知らない世代にとっては想像すらできない大変なものだったのでしょう。

この作品は、そんな大変な時代を生き抜く姉弟と、戦争で心に傷を負った男性を巡る物語です。
時にハラハラし、時に和み、人の温かさや愚かさなど、様々な人間ドラマがぎゅっと詰め込まれていて、どんどん惹き込まれていきます。

タイトルの一蓮托生とは、善き行いをした者は極楽浄土に往生して、同じ蓮の花の上に身を託し生まれ変わること。転じて、事の善悪にかかわらず仲間として行動や運命をともにすること。という意味があります。

同じ空の下に集う主人公達が迎える、美しく圧巻なラストに深い感動を覚えました。

皆さまにも是非、この物語の運命を味わっていただきたいと思います。

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