弱小領地の悪役貴族に転生したので最高に美人なヒロイン姉妹と革命開拓しようと思いますっ!〜前世の便利家電を魔法で再現してたら、いつの間にかシナリオをぶっ壊してた〜
第46話 悪役貴族、賑わう街中をぶらぶらする
第46話 悪役貴族、賑わう街中をぶらぶらする
闘技大会。
女王フレイヤが今年から急に始めた国内外を問わず選手の参加を認める大会。
本来ゲームのシナリオには無かったイベントだ。
その優勝商品は『女王への何でもお願い権』という、胡散臭さはあるものの、間違いなく王家が約束した代物。
そして、今日はその大会当日である。
王都には今回のイベントを稼ぎ時と見極めた商人たちが集まり、露店を開いている。
俺は大会までの時間を適当に潰そうと思って――
「見てください、クノウ様!! 見たこともない異国の装飾品がありますよ!!」
「そ、そうですねー」
エレノアが目を輝かせながら露店に並ぶ品々を眺めている。
いや、エレノア!! アンタ王女でしょ!! 街中ぶらぶらしてたら駄目でしょうが!!
俺は彼女の後ろに控えるヴィオラに視線を向ける。
「そんな目で見るな。僕はお止めした」
ヴィオラが俺の視線に気付いて、居心地が悪そうに言う。
俺はエレノアに聞こえないよう、耳打ちした。
「止められてないなら駄目でしょ。エレノア様に何かあったらどうするんです? 俺とあんたの首が飛びますよ」
「……どうしよう……?」
「お二人とも、私に内緒話ですか? 秘め事は許しませんよ!!」
俺たちの気も知らないで、エレノアが楽しそうに笑っている。
……いや、まあ、この笑顔を見たら下手に止めることもできないのは分かるが。
「仕方ない。やはり王女殿下を説得して、せめて護衛の騎士を数名付けさせてもらおう」
ヴィオラがエレノアに意見しようと近づく。
その時だった。
「食い逃げだー!! 誰かそいつを捕まえてくれー!!」
「邪魔だ、退け!!」
「きゃっ!!」
食い逃げ犯がヴィオラを突き飛ばし、危うく転びそうになる。
「危ねっ!!」
「っ、す、すまん、助かった」
俺は咄嗟にヴィオラの身体を支える。
すると、意図せず俺とヴィオラの顔が触れてしまいそうなほど近づいてしまった。
……ふむ。やっぱり近くで見ると綺麗な顔してるな。
「お、おい。転ばないよう抱き止めてくれたのは感謝するが、手を退けろ。その、僕の……に、触れている」
「え? あ、すみません」
俺の右手はガッツリ彼女の胸に触れていた。
……柔らかくない。むしろ、硬い。しかし、不自然な硬さだ。
その理由に気が付いて、俺は呟いた。
「ああ、サラシを巻いてるのか」
「っ、き、貴様は、デリカシーというものが死滅しているのかッ!!」
まあ、十三歳だしな。
女の子は成長期で身体が丸みを帯び始めて、体型も変わってくるであろう年頃。
男装しているなら、胸を誤魔化す必要も出てくるのだろう。
……誤魔化す必要がある程、大きいということになるのか……。
いやいや、同級生を相手に俺は何を考えている。
前世の年齢も考慮すれば、立派なロリコンになってしまうじゃないか。
「クノウ様、何やらヴィオラと楽しそうですね?」
「あ、お、王女殿下!! こ、これは決して、その!!」
「ふふっ。何も言わなくて良いのよ、ヴィオラ。ええ、クノウ様は素敵な殿方だもの。仕方ないわ。仕方ないとは思うけれど、ちょっとあっちでお話しましょう?」
物腰柔らかい笑みを浮かべて言うエレノア。
とても嬉しそう微笑みだが、先程までの無邪気な笑みと比べると、何か背筋が冷たくなるようなものを感じた。
やだ、怖い。俺に矛先が向く前にとっとと姿を消そう。
「お、おい、ドラウセン!! 助け――いない!? あ、あいつ、一人で逃げたのか!! 貴族の風上にも置けない奴め!!」
「さあ、こちらへ。ゆーっくり、お話しましょう」
日本にはあることわざがあってな。
逃げるが勝ち、である。
逃げるんだよおおおおおおおお、ヴィオラ!!
「ん? コトリ、何やってんだ?」
「ん。露店」
いや、見れば分かるが。
エレノアとヴィオラと別れた俺は、露店が立ち並ぶ大通りを適当に歩いていた。
すると、その一画に見慣れた顔があった。
俺と同じSクラスの生徒。
そして、俺にお米を売ってくださった恩人でもあるコトリだ。
だが、気になることが一つ。
「お前ら、コトリの店で何やってんの?」
「あ、はい。えっと、バイトです。従者の仕事ですらままならないのに、接客なんて……。おぇ、緊張で吐きそう」
「綾乃様ったら、また口周りに吐瀉物が付いておりますわ」
「アヤノ!! お店の品にゲロがかかったらどうする!! 吐き気は我慢しろ!!」
カオスだった。
今にも死にそうな顔をしている綾乃と、お嬢様口調のマリア、人化しているクエリア。
何がどうなったら、この面子なの?
いや、マリアと綾乃は面識があるから、綾乃経由でマリアとクエリアが繋がるのはまだわかるけどさ。
コトリに至っては誰とも面識がないはず……。
「ん。マリアには借金がある。その返済に働いてもらっている。他二人はその助っ人」
「おい、さらっと人の考えていることを読むな」
「ん。クノクノが分かりやすいだけ」
む。まあ、たしかに俺は考えてることが顔に出るタイプだが。
「それより、こいつらのこの格好は?」
「ん。この格好をさせると売れる」
綾乃たちは全員、なんというか、コスプレさせられていた。
綾乃は看護師、クエリアは婦警、マリアはバニーガール。
前者二人はまだ良いとして、マリアに至っては白昼堂々とよくそんな格好ができると感心してしまった。
「これ、何の店なんだ? いかがわしい店じゃないだろうな? 一応言っておくが、綾乃とクエリアは俺の従者だぞ。変なことをさせてるなら、いくら恩人でも許さないが」
「ん。違う。営みがマンネリ気味な夫婦のために特別な衣装や薬を売ってる」
「……お前、本当に十三歳だよな? 本当は中身がアラサーのおっさんとかじゃないよな?」
「? ん。言ってることがよく分からない。この服のアイデアはマリアからもらった」
まあ、違うよなあ。
見たところ、売れ行きはかなり良さそうだ。男性客よりも女性客が多いのは不思議だが……。
世の中の夫婦は、女性の方が夜の営みに気を使うのだろうか。
「二人とも、嫌になったらすぐに言うんだぞ。お前らのその格好を見て、邪なことを考えない輩がいないとは限らないんだからな」
「あ、はい。嫌です。今すぐ止めたいです。今すぐ引きこもって一人で過ごしたいです」
「おい、アヤノ!! まだバイトは始まったばかりだぞ!! 弱音を吐くにはまだ早い!! 報酬の串焼きが貰えぬではないか!!」
「弱音じゃないけど吐きそうです。おぇ……」
……やっぱカオスだな。
なんて考えていると、マリアが日本語で耳打ちしてきた。
『なんで綾乃はんとクエリアはんは心配するのにうちのことは心配せぇへんねん? うちが一番恥ずい恰好しとんねんぞ』
『お前は……まあ、大丈夫かなって』
『ほーん? 上等や。うちがか弱い乙女ってこと思い知らせたるわ』
『遠慮しとく』
マリアから視線を逸らすと、今度はコトリと視線がかち合った。
そして、何を思ってか小瓶を手渡してくる。
「これは?」
「ん。すごく絶倫になる薬。一滴で一晩、二滴で一週間、三滴で一ヶ月は飲まず食わずでデキる薬」
「絶対にやべー薬だろ」
「ん。大丈夫。これは私の故郷の極東の国の王族が、子孫をより多く残すために使うもの。女に飲ませたら子供も一発でデキる」
なんでそんなもの売ってんだよ。どうやって手に入れたんだ。
……もしかしてコトリって、極東の国では結構な地位の娘なのか?
それこそ、王族なんて可能性も……。
……流石にないか。
こんなものを平然と露店で売るような輩が王族とか終わってる。
まあ、フリーダムさで言ったらフレイヤも負けてはいないだろうが。
「ん。おひとついかが?」
「そんなこと言われても、俺には使う相手がいないしなあ。……ちなみに副作用とかあるのか?」
「ん。あるけど、大したことじゃない」
「……言ってみろ」
「ん。四滴飲むと、玉が爆発する」
「絶対に要らん」
股間がヒュッてなったぞ!!
「はあ、商売は程々にしておけよ。っと、そろそろ闘技大会のエントリー開始時間だ」
「ん。参加するの? 頑張って」
「ああ」
俺はコトリの露店から離れ、一人で闘技大会が行われる円型闘技場――コロッセオへ向かうのであった。
――――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイントどうでも良くない話
ヴィオラはクノウを意識し始めている。あとエレノアはヴィオラが男装していることに気づいている。
「ヒロインが沢山だあ!!」「ヴィオラがフレイヤに続く!!」「頑張れエレノア!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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