第27話 悪役貴族、助言を求める






「コホン。話はここまでにしよう」



 衝撃的な担任の恋愛事情を聞いた後、ベルメイが改めて咳払いをする。


 そして、真剣な面持ちで話し始めた。



「来月、一年生は各クラス内で少人数のグループを作り、三日間の野外授業を行う。各々で必要な準備をしておくように」



 野外授業、か。


 てっきり前世でやったようなカレーを作ったり火を熾したりするものかと思ったが、どうやら少し違うらしい。


 ベルメイが野外授業について、詳しい内容を説明する。



「学園に通う生徒たちの中には、いずれ領主となる者もいるだろう。将来、そういう者は場合によるが、軍を率いる必要が出てくるかも知れない」



 領地に魔物が出たり、他国と戦争になった時は領主が直接軍を率いる場合が多い。


 どうやら今回の野外授業は、軍を率いる上での知識を実践的に身に付けさせるために行われるものらしい。



「なお、実施する場所は王都近郊にある森だ。魔物との戦闘も十分に有り得る。武器防具の類もしっかり手入れしておけ。それから魔法袋の使用は禁止だ。監督生として上級生が各班に一人同行するから、使ったらすぐに分かるぞ」



 げっ、まじかよ。


 魔法袋が使えないとなると、物を運ぶのが少しばかり面倒だな。


 まあ、無いなら無いやりようはあるだろう。


 ……でも一応、何かあると怖いしこっそり持っていこうかな。

 使用が禁止ってだけだしね。持って行くだけだから。


 必要になるのはテント、寝袋やランプ、あとは大容量のリュックサック辺りかな。


 

「それから、情報収集を怠らないように。今回の野外授業は事前準備が物を言う。上級生や教師から色々訊いて、備えておけ」


「「「「「はーい!!」」」」」



 上級生、ね。











「というわけなので、必要なものがあったら教えてください、リオン先輩」


「あはは。あったなあ、野外授業。懐かしいや」



 授業を終え、寮に戻った俺はお隣に住むリオン先輩に助言を求めることにした。


 リオン先輩は嫌な顔一つせず、快く俺の相談を真剣に聞いてくれている。


 本当に、良い先輩だなあ。



「そうだね、まずは持って行こうと思っているものを教えてくれるかな?」


「テントとか寝袋とか、あとランプです」


「うん、それは必須だね。王都付近にある森は夜中になると凄く冷えるから、寝袋は質の良いものを選ぶと良いよ」


「ふむふむ」


「テントも隙間風が入らないしっかりした作りのものが良いかな。あっ、でもそれじゃあ嵩張って重くなっちゃうかも……」


「あ、そこら辺は大丈夫です。こう見えても鍛えてるので」


「そう?」



 リオン先輩が花のように微笑む。


 いや、この人って本当に男なんだよな? 笑い方とか仕草とか女の子のそれなんだが。



「それ以外だと何かありますか?」


「うーん、あとは……調理器具かな?」


「調理器具?」



 それってフライパンとかお鍋とか?



「去年、僕の班の子は誰も調理器具を持ってきてなかったんだ。だからちゃんとした料理をできなくて、川で採った魚を焚き火で焼いて食べたんだよ」


「それはそれで美味しそうですね」


「んー、まあ、美味しくはあったけどね? ただ塩すら持ってきてなかったから、その、凄く味気無かったなあ」



 じゃあ調理器具だけじゃなくて、調味料もいくつか持って行くか。


 まあ、コショウは馬鹿みたいな金額だし、塩が精々だろうな。



「あっ、あとキノコ!!」


「キノコ?」


「うん、キノコは絶対に食べちゃ駄目だよ。去年、同じクラスの子が食べて倒れちゃったから」


「あー、たしかにキノコって無毒か有毒か、素人は判断できないって言いますもんね」



 よし、キノコは食べない。


 その後も色々とお役立ち情報をリオン先輩から貰って、俺は必要なものをあらかた備えることができた。


 時間帯は真夜中。


 おそらく寮住まいの誰もが寝静まった頃、俺は一人作業に没頭していた。


 俺は常に文明的な生活を望む。


 それは野外授業という行事に置いても譲る気は無い。



「いてっ。……針作業は何年やっても……苦手だな……」



 俺は今、布を縫っている。野外授業で使う寝袋を自作しているのだ。


 造形魔法を応用させれば布の加工もできるらしいが、残念なことにそこまでの技量が俺にはまだ備わっていない。


 針を何度もちくちく刺して、寝袋を作る。



「あとは中に綿を詰めて……完成ッ!!」



 綿は保温性抜群だからな。


 試しに入ってみたら、思ったより寝心地が良くて眠たくなってきた。


 いかんいかん。まだ作業は終わっていない。



「あとは魔鉱石と鉄を練り混ぜて作った針金に弱めの火魔法を付与して、中に仕込めば……」



 これでいつでもどこでもぽかぽか寝袋の完成ってわけよ。


 多分、これなら真冬でも凍死の心配無く野営とかできるんじゃないかな?


 ……将来、こういうものを売ったら儲かるだろうか。


 銃や車、なんちゃって家電製品を売るつもりは無いが、こういうちょっとした工夫をしただけのものなら問題無さそうだもんな。


 考えておこう。



「あとはテントか。うーん、普通のテントじゃつまんないよなあ」



 何か良さそうな魔法を付与してみたい。


 少し想像してみよう。


 野外授業が行われるのは王都近郊の森。当然、魔物だって出る。


 魔物から身を守れるような、そんなテントが欲しいところだ。



「結界魔法……は効率が悪いしなあ」



 付与魔法で付与する魔法には、いくつか向いていないものがある。


 普通、魔法は魔力に〝形〟を与えることで発生する現象だ。

 この〝形〟を変えることで魔法の威力や効果を高めることができる。


 付与魔法は、その〝形〟を事前に物体に付与しておくもの。


 魔法の〝形〟を変える手間を省くことで、魔力の消費を抑えられるのが付与魔法の利点だ。

 ……まあ、臨機応変に対応できないってのは欠点だが、その話は置いておこう。


 結界魔法はこの〝形〟に加えて、〝厚み〟が必要になってくる。


 要は耐久性だな。


 この〝厚み〟の調整が複雑で、できないこともないのだが、それをやろうと思うと返って魔力の消費が多くなるのだ。


 母上やレルドならその辺りを上手く調整して効率的に運用できるらしいけどな。


 もう一度言うが、そこまでの技量が俺には無い。



「うーん、土魔法でカモフラージュ? ちょっと見た目がな……」



 ふと窓から差し込む月明かりが目に入る。


 月……太陽……光……。



「光……光魔法か。光を屈折させて、テントを隠せないかな?」



 俺は何日か徹夜して、着々と野外授業への準備を進めた。


 翌月、野外授業が始まった。








――――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイントどうでもいい作者の経験

キノコであたったことがある。スーパーで売られてるキノコでも、しっかり火が通ってないとお腹が大変なことになる。


「リオン先輩、頼りになる」「続きが気になる」「あとがきが本当にどうでも良くて草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る