弱小領地の悪役貴族に転生したので最高に美人なヒロイン姉妹と革命開拓しようと思いますっ!〜前世の便利家電を魔法で再現してたら、いつの間にかシナリオをぶっ壊してた〜
第13話 悪役貴族、叔父の家にお邪魔する
第13話 悪役貴族、叔父の家にお邪魔する
翌日。
俺は叔父ことレルドの屋敷、つまりは母上の実家であるアンダイン子爵邸を訪れることにした。
ちなみに父上はいない。
どうやら王都の武器屋を見て回りたいそうだが、妙にそわそわしている様子を見るに武器屋へ行くつもりは無さそうだった。
あれはどう見ても、夜のお店に入る前の男の行動だろう。
まあ、長旅で溜まっているだろうし、男としてその気持ちは分かる。
……それはそれとして母上に報告するがな!!
何はともあれ。
「あの、すみません」
「ん? 子供? 何か用かな?」
アンダイン子爵邸の門を警備している兵士さんに声をかけると、笑顔で応対してくれた。
「私はクノウ・ドラーナ……じゃなくて、クノウ・フォン・ドラーナと申します」
「おお、君がレルド様の仰っていた!! すぐにレルド様を呼びに行ってくるよ」
一応、俺は貴族なのだが、見た目が子供だからか頭をポンポンと撫でられた。
悪い気はしないが、貴族への接し方としちゃ心配になるぞ。
門番が屋敷へ入ってしばらくすると、中からレルドが駆け足でやって来た。
「よく来てくれた!! 早く屋敷の中へ!! 母上を止めてくれ!!」
「え? あ、えっと、はい?」
レルドの母というと、母上の母。つまりは俺の祖母に当たる人物だ。
祖母を止めろとはどういうことだ?
とにかく言われるがまま、俺はレルドに付いて屋敷の中へ入った。
「実は、母上に君が来ることを話したんだ。そしたら……」
「そしたら?」
「孫が来ると張り切って、大量の料理を作り始めてな。その、量が、な……」
ん? 料理?
レルドが大慌てしているから何事かと思ったら、それだけか。
まあ、それくらいなら遠慮なく頂こう。
「ちょうどお腹も空いてますし、大丈夫ですよ。ご相伴に預かります」
「……驚くなよ?」
そう言って食堂の扉を開いたレルド。
その先に待っていたのは、本当に大量の料理であった。
バイキング形式で食べるのかとも思ったが、丁寧に更に取り分けてあるので違うらしい。
まさしく料理の山。
そこへ更に料理を運ぶ若い女性が一人。
給仕服を着こなしており、綺麗な黒髪の女性であった。
アンダインの証である黒髪……。
もしかして、母上の妹だろうか。
「ふんふーん♪ って、あら? もう来ちゃったの!? 半分もお料理ができていないのに!!」
「母上!! 一般的な食事の量にしてくださいとあれほど言ったではありませんか!! ほら、クノウ君も引いております!!」
「何を言ってるの!! 育ち盛りの子供は沢山食べなきゃ!!」
母上。……母上? え、母上!?
「え、いや、あの、レルド叔父さん? この人がお祖母様? 叔母上ではなく?」
「妹はもう嫁いでいて王都にはいない。ああ、言いたいことは分かるぞ。皆、母上を見た者はそう驚くのだ。……クノウ君? なんか、顔が変なことになっているぞ?」
若いなんてもんじゃない。どう見ても十代だ。
スタイルも抜群で、とても三人の子供を産んだ女性とは思えない。
まじかよ。驚き過ぎて変顔になったわ。
「それにしても……。可愛い子ねー!! 目元とかあの子にそっくりだわ!! んもー、食べちゃいたいくらい!!」
「母上、どうかそれくらいに」
やたらとテンションの高い祖母に構われながら、俺は食事を済ませた。
もちろん、全部は食べ切れなかった。
仕方ないので魔法袋に入れて、ドラーナ領に持ち帰ろう。
どれも普通に美味しかったし、フェルシィやウェンディも喜ぶはずだ。
食事を終えた俺とレルドは、やたらと構ってくる祖母を置いて食堂を出る。
「付いてこい。私の工房を見せよう」
そう言ってレルドが案内したのは、屋敷の地下であった。
大きな保管庫と作業台、作っていて失敗したと思われる物が大量に足元に転がっている。
「私からのプレゼントだ。持っていけ」
「これは……もしかして、魔鉱石!?」
「ふっ、よく勉強しているな。流石は姉上の子だ」
魔鉱石というのは、他の鉱物に混ぜることで魔力の通りを良くして無駄を減らすことができるレアな鉱物だ。
これを魔力駆動二輪車の素材に混ぜたら、より長距離を走れるようになる。
「いいのですか? 魔鉱石は……」
「ああ、結構な値が張る。しかし、アンダインは魔鉱石が採れる鉱山を保有していてな。毎年有り余るほどの量が手に入るんだ。気にせず持っていきなさい」
「あ、ありがとうございます!!」
俺はレルドに深々とお辞儀をした。
「それにしても……叔父上の工房、散らかってますね」
「片付けようとは思っているんだがな。つい作りたいものを優先してしまってな」
分かるぅ。
俺も片付けできないタイプの人間だからなあ。
「ん? 叔父上、あれは?」
俺はレルドの工房の一角にあった何本かの剣を指さして問いかけた。
無性に目を離せないオーラを放っているというか、妙に気になってしまう、不思議な剣だ。
「ああ、あれは私が趣味で作っている神剣の模造品だ」
「神剣の模造品!?」
神剣。
それは『ファンタジスタストーリーズ』をプレイしていた者なら誰でも知っている代物だ。
主人公の初期装備であり、主人公を魔王を倒す勇者たらしめるもの。
主人公の身体に封印されていて、ラスボス戦ではその力を解放し、不死身の魔王にトドメを刺す役割を担っている。
この世界では数多くの伝承から神剣の存在が知られており、鍛冶職人の中には神剣を造ると本気で息巻いている者もいるくらいだ。
ただ、その多くは叶わないのが現実。
しかし、レルドが造ったという神剣には普通の剣とは違うオーラのようなものが感じられる。
これは一体……。
「ふむ。その様子だと、神剣については知っているようだな」
「まあ、有名な代物ですし」
「ふっ、馬鹿馬鹿しいだろう? お伽話や伝説で語られるものを作ろうとは」
「いえ、馬鹿だとは思いませんよ? そういうのってロマンがありますし」
「……ふむ。やはり君も、アンダインの人間なのだろうな」
うんうんと頷くレルド。
なんか一人で納得してるけど、それはどういう意味なんだ?
「そうだ、魔鉱石以外にも欲しい鉱物があったら手紙を送りなさい。可能な限り、こちらで融通しよう」
「え!? そ、そこまでしてもらっていいんですか!?」
「構わん。可愛い甥のためだ」
実は問題になっていた資源不足という課題が、まさかの急な解決。
ますます俺の快適な生活に拍車がかかりそうだ。
その後、俺は娼館にいた父上を回収して翌日には領地へと戻った。
もちろん、娼館の件は母上に報告したため、父上はモヒカン肩パッドを装備した母上にバイクで追い回される羽目になるのであった。
――――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイントレルドのメガネ設定。
暗いところでは自動で光る。
「面白い!!」「レルドのメガネに無限の可能性を感じる」「続きが気になる!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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