第19話 事件簿が増えそうな予感

「なんでですかぁ~! 私と遊び行きましょうよぉ~!」


 地団駄を踏みながら駄々をこねる真城。


「無理だろ。身の危険を感じるから」


「私なんもしませんって~! てか私誓ったじゃないですか~!」


「ビッチをやめるってだけだろそれ。襲わないとは一言も口から聞いてないんだけど」


「じゃぁ襲いません! 絶対に誓います!」


 誓うという言葉が軽すぎる。


「しかも、何して遊ぶんだよ」


 カラオケとかだろうが、密室は避けたい。カフェでも行って話すくらいなら考えなくもないが。


「とりあえずどこかブラブラしませんか? 服見たり~、そうだな~……美味しいもの食べたり!」


「意外に健全」


「分からないよ実真。油断させる罠かもしれない」


 疑いの眼差しを向けるのは佐那であった。


「罠……あり得るけど」


 やけに過干渉してくるよな、真城に関することだと。

 まあ逆の立場だったら俺も同じことするから何も言えない。佐那にヤリ〇ンが近づいて来たら俺と智親も全力で止めるだろうしな。


 どうしても、佐那が真城と関わるのをやめてと言ってくればやめるが、その未来はなさそう。

 何かしらがきっかけで、仲良くなることくらい2人の姿を見ていれば分かるからな。


「佐那先輩そんなに実真先輩を独り占めしたいならそうやって言えばいいじゃないですか!」


 余計な一言を足す佐那に、真城は顔をしかめる。


「別に独り占めしようとはしてないし……」


「ならいいじゃないですか~! 佐那先輩は実真先輩の彼女でもないんですし、他の女子と遊んでも関係ないじゃないですか! これ何回言いました?私」


「だからあんたみたいな危なっかしいヤツを実真に近づけたら、実真が危ないって私も何回言ったと思ってるの?」


「私はその『危なっかしい女』は卒業したので大丈夫ですよ? ちゃんと行動でも示しましたし」


「だとしても、過去にやってきたことは消せないし、そのイメージが浸透されてる以上警戒されることくらい分かってるよね?」


「そうですけど……私は変わりましたもん!」


「ほらほらまた始まったよ」


「また事件簿が増えそうな予感」


 言い合っている2人を、俺と智親は席でゆっくりと傍観する。

 どちらも正論だから、どちらの味方も出来ない。どちらの良い所も悪い所も知ってるから、どちらの味方も出来ない。


 強いて言うなら、俺は真城と佐那、両方の味方だ。

 それに、2人は面と向かって言い合えるから和解すれば仲良くなれると思うんだけど、どこか馬が合わないんだよな。


 なんとも難しい問題。


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