第17話 仲良くはない

「ん? どうしたんですか? みんな変な顔して」


 きょとんとした顔を浮かべる真城。


「もうちょっと、入って来るタイミング考えような」


「私を空気読めないとでも言いたいんですか⁉」


「その通り」


 教室を覗いてみて、入れそうな空気かそうじゃないかを確認して入るなり配慮をして欲しい。


 それにいきなり教室に入ってくると、クラスメイトに不審がられる。


「なんで真城と実真くんが?」「もしかしてそうゆう関係なのかな」


 コソコソとこちらを見ながら話す女子。


「実真ズルい! あんな美少女!」「俺たちまだ襲われてないのに抜け駆けしやがって!」


 羨ましそうにしている男子。

 視線が痛い。女子からは不審な目を向けられるし、男子からは嫉妬の目を向けられる。


 変な妄想はやめて欲しいものだ。俺だって自分から好んで真城と関わったわけじゃないし、真城と出会った場面に戻れるなら、教室の扉を開ける役を変わってあげたい。


「クラスに凸って来るとかありえないからね?」


 真城に先に食いついたのは佐那であった。


「え~。私なんか悪いことしましたか?」


「現在進行形でしてるから」


「仲がいい先輩の教室なんて普通に行きますよ~」


「私達とそんな仲良くないでしょ真城」


「佐那先輩とはあんま仲良くないよ? けど実真先輩とは仲いいですよ」


「え、仲良くはないけど」


 ルンルンで俺にくっ付いて来ようとする真城に、棒読みで俺は言う。

 学校ですれ違った時に、手を振られたら振り返すし、話すくらいの仲ではあるが、決して親しくはない。


「えぇ~、酷いですって先輩ぃ~」


「おいこらくっつくな!」


「先輩が私と仲がいいって事を認めてくれるまで私は離れませんからね!」


「認めねーし、離れないとお前が痛い目になるぞ」


 視線をゆっくりと佐那の方に向けると、真城には既に殺意の目が向けられていた。

 真城が俺にくっつくと、大体この目が向けられる。最初に佐那と真城が会った時も同じ目をされた。


 あの時はもっと恐怖を感じるオーラは発せられてたが、あれは周りの目がないからだろうな。

 教室であれをされたら注目が俺そっち抜けで佐那に集まるからな。


「実真から離れろこのビッチ!」


「ちょ、なんで俺を前に出すわけ? 後ろに隠れないでくれる?」


 佐那は智親を盾にして、ちょこりと怒った顔を出す。


「佐那先輩~。愚痴を言うなら面と向かって言ったらどうですか~?」


「無理! 前みたいなことになったらこいつらウザいし」


「そのウザい俺の後ろに隠れるのはどうなの?」


「うっさい!」


「なんだ~、泣いてた佐那先輩可愛かったのに~」


「かわい……って今はその話をしてるんじゃない!」


 一瞬流されそうになったな。そんなに可愛いって言われるのが嬉しいのか佐那は。弱点を真城に知られてしまった以上、強く言い返せないだろうな。

 佐那はキャンキャン吠えるだけで、優位な位置にいるのは真城。


 自分を守るために俺と智親を盾にしてくるのはどうかと思うから、せめてカーテンの裏に隠れるとか、逃げるとか俺達を使わないで自分の身を守ってほしい。


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