第18話 色んな意味で

「ほらほら~、前に出て可愛い佐那先輩を見せて下さいよぉ~」


 前のめりになりニヤニヤと佐那に詰め寄る真城。


「無理無理! 私にそれ以上近づかないで!」


「逃げないで下さいよ~」


「智親ガード!」


「だから俺を盾に使うなよ!」


 メスガキのように詰め寄って来る真城に、必死になって智親をガードに使う佐那。


「なら私は先輩の後ろに隠れますけどいいんですね~?」


「ダメ! それもダメ!」


「なら可愛い姿見せて下さいよ~」


「ダメだっつってんでしょ⁉ なんで先輩の言うことが聞けないわけ⁉ 上の人には従わなきゃいけないんだよ常識的に!」


「え、私佐那先輩より上の立ち位置だと思うんですけど。色んな意味で」


「生意気なぁぁぁ!」


 どうやら、下等生物に思われているみたいだ。実際、色々真城の方が上な部分はあるし。


 身長とか、経験人数とか、胸とか……胸とか胸。まぁ、主に胸だ。

 俺からしたら、佐那の方が勝ってると思う。それも大いに。


 単純に付き合いが長いからか、一緒に居てどんな人物なのかをある程度知ってるからなのかは分からないが、どれだけ真城を知ったとしても、佐那には到底及ばないだろう。

 胸以外だけど。


「あの~、俺に要件があるんじゃないの?」


 傍からじゃれ合いを見つつ、俺は真城に聞く。

 俺を呼びに来たはずなのに、気づいたら俺を除く3人で勝手に盛り上がっている。

 早く帰りたいけど、家でゲームをするよりこっちを見てた方が面白い。


「そうでした! こんな事してる場合じゃなかったです私!」


 ハッとした真城は、佐那と智親との会話を放棄する。


「このやり取りはなんだったんだよ……」


「知るかっ! 私が一番の被害者だよ!」


 捨てられた2人は引き攣った顔をしたまま何かぼやいている。

 そりゃそうだよな。いきなり面倒事を吹っ掛けられたんだからそんな顔をしたい気持ちも分かる。


「先輩! 今から遊びに行きましょう!」


 そんな2人をそっちのけで、俺の手を掴みながら言う。


「あ、もう一度言ってもらっていい?」


「今からどっか遊びに行きましょう! 私と2人で」


「え、嫌だ」


 当然のように即答する。

 真城と2人で遊ぶとか……想像しただけで悪寒がする。何されるか分からない、ていうか襲われるに違いない。


 遊ぶのなんてどう考えても無理だ。俺に得も無いし。


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