第11話 ヤってないから!
心配していることは、心配していると起こるものだ。
「せんぱ~い! 遊び来ちゃいました!」
バンっと勢いよくドアが開くと、相変わらずのハイテンションで真城が現れた。
なんでこうもタイミング悪く現れるのだろうか。
この種の生き物は空気と言うものがよく読めないらしい。
「……誰?」
引き攣った顔を浮かべながら、俺と真城を交互に見る佐那。
「誰も何も、今さっきまで話してた人だよ」
「え……真城?」
「そう、その例の真城だな」
「髪の長さと髪色が全然違うんだけど」
ギョッとした顔を浮かべる。
変な顔になる気持ちも分かる。噂で聞いていた人がいきなり清楚な見た目になって現れたら唖然してしまう。
「先輩~? この女子は何者ですか?」
真城は教室の中に入ってくると、端に置いてあった椅子を持ってくると、俺と佐那の間に置いて座る。
「実真に馴れ馴れしいけど、どうゆう関係なわけ?」
「そっちが先に言ってくださいよ。彼女でもなんでもないのに馴れ馴れしい」
「実真説明して。この生意気な女とどうゆう関係なわけ?」
「先輩説明してください。このいかにも堅物な女とどうゆう関係なんですか?」
ジーっと2人から視線を向けられる俺。
なんて説明したらいいものか、これ。
真城への説明は女友達といえばなんとかなるが、佐那にどう説明すればいいものか。
「とりあえず、こっちにいる佐那愛奈。俺の友達」
「佐那愛奈、ね~。女友達……怪しい」
「それで、こっちが真城悠紗。色々あって最近仲良くなった」
「色々って……まさかっ!」
音を立てながら椅子を立ち上がる佐那に、
「ヤってない! ヤってないから!」
と、弁解する俺。
変な誤解をされては困る。俺の言い方も悪かったが……バッタリと行為中に遭遇してそこから仲良くなったとか言えたもんじゃない。
「そう、先輩は私に童貞をくれなかったんですよ~。私、悲しいです」
「襲おうとしてたんだやっぱ。噂通りのビッチだね」
「いえ、私、見た目で分かる通りビッチを卒業したので」
「そんなの口でだったらいくらでも言えるじゃん」
「私、先輩一筋になったので」
「おい、ちょっ――」
俺の腕に抱きつき、顔をスリスリとしてくる。
それを見せつけられた佐那は、こちらにコォォという覇気を背中に宿しながら殺気の視線を向けてくる。
これ、終わったかもしれない。
「佐那、こいつの話を信じるな。俺はこいつと付き合ってもないし、ヤってもないから」
「じゃぁ、その距離感は何?」
「こいつの距離感がバグってるだけだから。俺には関係ない!」
誤解を解きたいところだが、ものすごい圧力を掛けられ、俺も子犬のように喉を鳴らしてしまう。
このままでは、殺やられてしまう。
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