第12話 図星ですか?

「さっきから、佐那先輩は何なんですか? 友達ってだけなら先輩が誰と仲良くしようが勝手じゃないですか」


 グっと俺の腕に抱きつきながら言う真城。


「友達に変な虫が付かないようにするのが、友達としての役目なんだけど?」


「私を変な虫とでも?」


「当り前じゃん」


 佐那から見たら、確実に真城は部外者だ。

 それに、周囲からの評判もあまりよくないから、心配するのも当然のこと。

 噂通りのビッチなこてゃ確かだ。けど、話していると、そこまで悪いヤツではない。


「佐那先輩、もしかして嫉妬ですか?」


 小バカにするような笑みを浮かべる真城。


「し、嫉妬……?」


「そうですよ。佐那先輩が先輩の事好きだから私に妬いてるんじゃないんですか?」


「そ、そんなんじゃない……し」


 指摘された佐那は、おもむろに頬を赤らめる。


「図星ですか?」


「違うから! 私はただ実真に誤った道に踏み込んで欲しくないから言ってるだけだから!」


 耳まで赤くなったまま、佐那は言い張る。

 俺は何を見せられているのだろうか。女子のネチネチとした喧嘩なんて見たくないぞ。


「あのー、2人とも仲良くできませんかね?」


 間に入り、場を鎮めようとするが、


「無理!」


「無理です!」


 息ピッタリに拒否されてしまう。


「別にお互い害があるわけじゃないんだしさ」


「害大アリでしょ。こんなのと一緒に居たらいつ襲われるか分からないんだよ?」


「先輩! こんな女子と一緒に居たら先輩の自由がなくなりますよ?」


「襲われてないし、俺は自由だぞ」


「これから襲われるかもしれないじゃん! 何するか分かんないよこうゆうタイプは!」


「友達も自由に作れないとか、束縛されてますよ先輩!」


「はぁ? 何が束縛ですって? ビッチを友達から遠ざけたいのは普通でしょ」


「それって、先輩から女子を遠ざける為の口実にしかなってないんですけど? もっとまともな理由を考えて見たらどうですか?」


 更にヒートアップする2人の口論。

 バチバチと目から閃光が走っている。このままだと愚痴大会を開催し始めそう。


「俺的にはさ、友達同士仲良くしてもらいたいんだけど、無理ですかね?」


「だから無理だって」


「無理ですよ。話通じませんもん」


「でもさ、やっぱお互い初めましてで知らないことがいっぱいあるわけじゃん? 俺はどっちの良い所も悪い所も知った上で友達なわけで、仲良くは出来ると思うんだけど……?」


 2人の様子を伺いながら俺は言う。


「そ、そんなに実真が言うなら……とりあえず一緒の空間には居させてあげてもいいけど」


 そっぽを向いて、頬を膨らませながらも一応納得する佐那。


「まぁ、仲良くできるか分かりませんが……努力はしてみます」


 口をすぼめながらコクリと頷く真城。

 まだ、2人の間に火花が散っているような気がするが、ひとまず安心だな。


 落ち着いて話をすれば、どっちも理解してくれるだろうし、ゆっくりと様子を見ながら話すとするか。



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