第10話 童貞だから大丈夫……って?

 ビッチな後輩ギャルと友達になってから一週間。


「真城、これまで繋がってた男子との関係全部切ったって聞いた?」


「マジ……か」


 放課後のたまり場である空き教室にて、俺は学校に流れる噂を耳にして唖然としていた。

 まさか、本当に実行するとは。

 半信半疑だったが、ちゃんと真城が誠意を持っていたことに少し好感を持てる。噂に反して実はちゃんとしたやつなのでは?


「――ちょ、実真聞いてる?」


「あ、あぁごめん。何?」


「何があったんだろうね~。あんなにビッチで有名だったのに」


 そう頬に手を付きながら言うのは、佐那愛奈(さなあいな)。


 同じクラスで、俺と智親の共通の女友達だ。

 女子はやはり、こういった類の噂に敏感だ。今、こうやって空き教室に来ては、俺に報告してきている。


「さぁな。気まぐれじゃね?」


 と、俺は答える。

 ここで「俺の為に全員の男と関係切ったっぽいよ」なんて口が裂けても言えない。

 この騒動の犯人が俺だとか、真城と関係を持っている男子に知られたら殺されるかもしれない。


 佐那にも知られると色々困る。

 質問攻めをされた挙句、ビッチ好きと勝手に断定されて絶縁されてしまうかもしれない。


「ま、危ない人が学校から消えてよかったっちゃよかったけど」


 机にうなだれながらスマホを見る佐那。


「あいつがいることで、なんかお前に関係あるのか?」


「そりゃーあるに決まってるじゃん」


「例えば」


「実真と智親を喰われずに済むから」


「いい方やめろ」


 あんま女子が喰うっていう発言はしない方がいいと思う。ガラが悪い。

 佐那みたいなギャルと正反対な清楚な見た目の女子に合ってない。


「しかも俺達が喰われる前提なんだ」


「この学校の男子と8割近くヤってるんだよ? いつ2人が狙われてもおかしくないじゃん」


「そんな人を獲物みたいに」


「真城からしたら超手軽い獲物に決まってるじゃん」


「いや、智親はともかく、俺は――」


「童貞だから大丈夫……って?」


 見透かしたように二ヤける佐那に、


「いや、意思が固いから大丈夫って言いたかったんだけど」


 と、苦笑する俺。

 童貞の方が可愛がられて狙われそうな気がするけど。俺も童貞って理由で初めてを奪われそうだったわけだし。


「ま、実真は自分を貫くし襲われても動じなそうだね」


「石のように意思が固いからな俺は」


「フフっ――何それダジャレ?」


 小さく笑う佐那。


 嘘は言っていない。狙われたし襲われかけたが、実際ヤってない。

 でも、真城との一件がバレたら……色んな意味で佐那に殺られるんだろうな。



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