第9話 後輩の初めて


「友達くらいなら……なってもいい」


 これ以上の以下の意味もない。


 友達くらいなら、なっても損はないだろう。


「……いいんですか?」


 俯いていた顔を上げる真城。


「まぁ、そこまで腹を括ってるのに、お前の生活に言うだけ言ってあとは放置とはいかないからな」


「友達……かぁ」


 ポツリと呟く。


「なんか文句ある?」


「いやいやないです! めちゃ嬉しいです!」


「だから、俺に色仕掛けとかしてくるのは禁止な。次、谷間を見せてきたり誘ってきたらホントに関わらないからな」


「分かりました……でも、胸を見てくるのは先輩の方ですよね?」


「見てない」


「目線が顔より若干下にあったんですけど?」


「見間違えだ」


「先輩、ムッツリさんですよね」


「今の話、全部なしにするぞ?」


 クスクスと笑う真城に真顔で言うと、


「嘘ですごめんなさい」


 ペコリとすぐに頭を下げる。

 どうぞ見てくださいと誘ってるのはそっちだろうが。

 ワイシャツからの主張が激しすぎるし、谷間が見えてるんだ。自然と視界に入ってくるのだからしょうがない。


「友達かぁ……」


 そうポツリと呟く真城。


「やっぱ不満か?」


「男友達って、そうえば出来たことないな~って」


「マジ?」


「こう見えて、ガチなんですよ」


 男とばっか遊んでいたと言っても、体の関係だけだったということか。

 友達にもならない、ただ会ってやるだけの関係。改めて考えると、やっぱり虚しい。


「だから、先輩が私の最初の男友達ですね」


「なんか、あんま嬉しくない」


「なんでですか! こうゆう時って感動の場面なんじゃないんですか⁉」


「ごめんだけど、感動なんて微塵もしない」


「私は結構感動したんですけど?」


「人によって感性が違うからな、しょうがない」


「先輩、乙女心を分かってないから童貞なんですよ」


 ジトっとした目をこちらに向けてくる。

 少しその言葉は刺さるな……


 童貞って、高校生ではまだ普通なんだろうが、周りが卒業しつつあると、遅れていると思う事もある。


「ま、先輩は私の初めてを奪ってくれたんだし、私も時が来たら先輩の初めてを奪ってあげますね」


 にっ、と八重歯を見せながら小悪魔に微笑む真城。


 経験人数3桁の後輩ギャルに、初体験を奪われかけたが、どうやら、俺の方が、彼女の初体験を奪ってしまったらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る