第8話 卒業します!

「先輩、私をなんだと思ってるんですか?」


 ジト目を向けてくる真城に、


「イメチェンしてまで先輩を襲おうとしてるクソビッチ」


 マジレスする俺。


「もう~! なんでそうゆう事しか言わないんですか~!」


「事実だからに決まってるだろ」


「でも口に出して言うのは酷くないですか!」


「んなら心の中でずっと思っておけと」


「そうゆうわけでもなくてですねぇ~!」


 地団駄を踏みながら不満そうな顔を浮かべる。

 とんだわがままだ。

 こうでもハッキリと言わなきゃ、この先ずっと絡んできそうだからなこういうタイプは。


 俺も結構バッサリと言ってるはずなのに、真城は諦めが悪い。


「じゃぁ分かりました!」


 指でパチンと音を鳴らすと、真城は器用にウインクをする。


「私、ビッチを卒業します!」


「無理だろ」


 即答する。

 そんな今すぐに、今までの生活をやめるのは無理がある話だ。

 習慣づいているものをすぐにやめるなんて人間の本能的に無理だ。


 タバコやお酒のように、エッチも依存症の一つだ。本当に依存症の人はこの世にいるらしいしな。


 真城は依存症に近い形だと思うから、そう簡単にやめられるものではないと思う。


「先輩、私は本気ですよ」


 俺の膝に手を置き、真剣な眼差しでそう言ってくる。

 表情を見る限り、本気で言っているようだ。


「だからなんでそこまでするんだよ」


 呆れた目をする俺に、真城は少し息を整えると、


「私、先輩が初めてって言ったじゃないですか」


「言ってたな」


「嬉しかったんですよ、私みたいな人に注意してくれる人がいて。私のことを考えて言ってくれて」


「……そうか」


「それに正直、私もこの生活をやめたいと思ってて……自分でも何やってるんだろーって思ってたんですよ。こんなの自傷行為の一種なんじゃないかって。でもできなくて……そんな時に、先輩に出会ったんです」


 肩を竦めながら言う。

 俺を見つめる真城の瞳は、希望を見出したように輝き、どこか奥底で助けを求めているようにも見える。


「先輩なら、今の私を変えてくれると思ったんです」


 俺が救いの手だったということか。

 たしかに、俺は救いの手を差し伸べた。言っても無駄だろうと思ったが、真城にちゃんと響いてた。


 それは嬉しいことだ。

 余計な事、とは言わないが、あの時首を突っ込んで真城に言ってしまった以上、俺にも責任はある。

 このまま放っておくと、また同じ道を辿ってしまうかもしれない。


 真城も、自分を変えようと、黒髪に戻し、現状までも変えようとしている。

 必要にされている以上、俺に出来ることは一つしかない。


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