第6話 刺客


「暖房効いてるし、ここは最高だな」


 土日を挟み、月曜日の放課後。

 俺は、学校の4階の一番奥にある小さな空き教室にて、一人の時間を楽しんでいた。

 机の上には、チョコ菓子。手に持つは、ゲーム機。


 肌寒くなった10月前半に、誰もない暖房を効かせた空き教室で優雅にゲームをしている。


 最高の時間すぎる。

 このまま学校が閉まるまでゆっくりと楽しもうとしていた矢先、


「実真先輩~?」


 誰も来るはずないのに、扉がガラガラと開く。


「……げっ」


「あ、ホントにいる~!」


 聞き覚えのある声と共に、俺の方を指差すのは、昨日話したばかりの真城。

 しかし、真城は昨日とは……違う。


「髪の毛……どしたお前?」


 綺麗に染め上げた金髪のはずが、艶やかな黒髪へと変わり、ロングヘアーだったのが、ボブショートまでカットされていた。


「えへへ~、いいでしょ。この髪」


 くるんと指でいじりながら言う真城。


「……てか、なんでここに」


 髪の話題より先に、なんで真城がここに来たのか。それが一番重要だ。

 髪型。髪色共に俺のドストライクというのは一旦置いておこう。


「なんでって、智先輩から聞いたんですよ~。先輩はよくこの教室にいるって」


「あいつか……」


 智、と言うのは俺のクラスの友人である安斎智親(あんざいともちか)

 人当たりうがいいため、友達が多い。真城の話もたまに智親から聞くこともある。


「ホントに居てよかったです~。先輩帰ってたらどうしようかと思ってたんですから~」


「何の用だよ。用事なんてないだろお前」


「先輩に会うっていう用事が私にはありますよ!」


「俺に会って何をするんだ」


「そんなの、先輩とお話するために決まってるじゃないですか」


 まじまじと俺を見ながら言う真城に、


「話す事なんてないだろ。てか帰れ」


 鋭い目を向ける。

 一人の時間が台無しだ。

 まだ来るのが智親だったらいいものの、よりによって真城。昨日まともに話したのが初めてなのに。


「先輩~。そーやって可愛い後輩を見捨てるのはあんまりよくないですよ~」


「至福の時間を邪魔しないでくれ」


「ぜ~ったい私と話した方が楽しいですって~」


「んなわけあるか」


「私、先輩に興味が湧いたので絡みたいんですよ~」


 真城は、ササっと俺の横にある椅子に座る。


「興味?」


「ほら、先輩初めてだって話しましたよね?」


「昨日のやつか」


「それで私、先輩に興味津々なんですよ。どんな人なのかな~って」


「んなの智親に聞けよ」


「大丈夫です。智親先輩に、先輩の話はある程度聞いておきましたから」


 あいつ……今度シバき倒す。

 真城みたいなタイプは、俺が関わりたくないタイプって事を知っているはずなのに、何故こうも面倒くさい事をしてくるのか。


 面白半分なのだろうが、俺は全く面白くない。


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