第5話 胡散臭い


「男子はやっぱ、おっぱいに弱いですよね」


 チラッとブラをずらしながら言う真城に、


「そりゃ、男子にはないものだからな」


「先輩が断らなきゃ、今頃これを揉んだり吸ったりできたのに、残念ですね」


「からかうのはやめろ」


 自分の胸をツンツンとつつき揺らす真城に、ため息を吐く。


「ホント凄いですよね。こんなに誘惑してもコロッといかない人なんて、初めてですよ」


 組んだ腕に、胸とドシっと乗せながら関心する真城。


「まぁ、普通なら流されるかもな」


「どんなに拒否った人でも、胸押し付けて『シよ?』って言ったら絶対にシてくれるのに、先輩はそう簡単にいかないですね」


「意思は固いもんでな」


「私、そうゆう人、嫌いじゃないですよ」


 口角を上げ、軽く微笑む。

 なんだろう、この吸い込まれそうな笑顔は。

 ビッチだと分かっていても、魅力を感じてしまう。


「先輩は、恋人としかシたくない人ですよね」


「当り前だろ。お前みたいに誰とでもスるわけがない」


「恋人……ね」


「なんか問題でも?」


「いいと思いますよ? 一途な方が彼女的には嬉しいでしょうし」


「なんかお前が言うと説得力がイマイチない」


「え~、酷くないですか~?」


「一途じゃない奴が、一途を語ってるのが胡散臭すぎる」


 何年も同じ人と付き合ってる人から言われると納得は出来るが、真城から言われてもそれってあなたの感想ですよね? としかならない。

 なにせ、一途とは無縁な存在だろうし、そもそも恋人という概念がもう消えていそうだ。


「……って、もう俺行かなきゃ。じゃあな」


 ふと時計を見ると、もう夕方の4時半。

 5時から予定があった俺は、そそくさと教室を後にしようとする。

 ドアを開け、廊下に出ようとした時、


「名前! 先輩の名前教えてください!」


 後ろから大きく張った声でそう言われる。


「園田、2年の園田実真だ」


 半身振り返り、それだけ言い残すと、俺は廊下を駆け足で去っていく。

 またもや、はだけた服のまま教室に残される真城。


「園田実真……実真先輩、かぁ……」


 ポツリと呟かれた言葉は、フフっという小さな笑い声と共に、その教室に静かに消えていった。


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