第4話 先輩が初めてです
「あのさ、アホなの?」
「あ、アホ?」
呆れる俺に、眉を顰めながら聞き返す真城。
「股を開いてる相手に運命の人なんているわけなやん」
「いるかもしれないじゃん!」
「みんな、お前がすぐヤらせてくれるから近寄ってるだけで、それ以上でも以下でもない。ただのヤリ目だ」
性欲の権化みたいな存在の思春期男子が、そこに本気の恋愛を持ちかけてくるなんてものはない。
例外はあるかもしれないが、9割はヤりたいだけだろう。
「そ、そうかもしれないけど……」
肩を竦める真城に、
「あのさ、現実見た方がいいよ。このまま色んな人とヤっても、虚しくなるだけだろ」
正論をぶつける俺。
これは、真城のためだ。別に、深く干渉するつもりはない。
だけど、この際誰かが言ってあげなきゃ堕ち続けるだけだ。
これで話を聞かないのであれば、堕ちるところまで堕ちればいい。ただそれだけ。
ちゃんと話を聞いて、生活を直すのであればそれはそれでいい。
どうせこの後関わることもないだろうし、どうでもいいんだけど。
「……先輩が初めて」
「……え?」
「私にこんな事言ってくれる人……先輩が初めてです」
つぶらな瞳を、まっすぐ向けてくる真城。
「そんな目を向けられても困るんだが……」
俺の顔に迫る、真城の整った顔立ち。
長いまつ毛にパッチリとした二重。綺麗なラインを描く鼻筋、薄っすらとピンク色のハリのある唇。
誰が見ても、口を揃えて可愛いと言うだろう。
いくらビッチだとはいえ、こんなに顔を近づけられ、見つめられると照れる。
可愛いというのもあるが、俺が女子に慣れていないというのも大きいだろう。
「なんで、私を気に掛けるようなこと言ってくれるんですか……?」
「特にこれと言って理由はないけど、まぁ、見てて気に食わないからな」
「それだけ?」
「だけだな」
「他になんの感情も?」
「抱いてないから安心しろ」
「そこに漬け込んで私とシようとも――」
「してないから大丈夫だ」
だったら最初から真城の誘いに乗ってるだろ。わざわざこんな回りくどい事をしなくても、二つ返事でヤらせてくれてたんだから。
「先輩、変わってますね」
クスッと、含み笑いをする真城。
「普通だろ」
「普通じゃないですよ。普通だったら今頃、お互い気持ちよくなってますもん」
「それが普通なら、お前の普通は異常だ」
「私もですけど、みんな異常ですよ。特に男子は」
「思春期男子なんか、性欲に支配されてるサルばっかだ」
「でも、先輩は違うんですね」
「俺は誠実な人間だからな」
「私の胸はチラチラと見てるのに?」
「……誠実ではないかもな」
と、俺はおもむろに顔を背ける。
いくら自制心がある男子とはいえ、目の前に赤色のブラを付けている胸の谷間が見えたら、流石に見てしまう。
しかも、ワイシャツがはだけているから、どうぞ見てくださいと言っているようなものだ。
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