第15話 コスプレ

 もう冬が来る。

 やけに朝は肌寒いし、日照時間はあっという間に短くなっている。


 学校のみんなもブレザーの下にセーターを着たり、マフラーを付け始めたりと冬支度を既に終えている人ばかりだ。11月に入ったから、当然といえば当然の光景なのだろう。


 午後3時半。6限の授業を終え、太陽が45度程傾いているのを見て、冬の訪れをしくしくと感じる俺。

 外を見ながら黄昏ていると、後ろから声を掛けられる。


「実真、今日放課後どうするー?」


 大容量のバッグを背負い、気さくに片手を上げる智親。


「最近疲れてるから家でのんびりだな。お前は?」


「俺バイトー。コンビニ鬱過ぎる」


「労働なんだからしゃーないだろ」


「冬になるとおでんとか肉まんとかの準備が始まって仕事が増えるのが更に鬱」


「コンビニバイトならではの悩みだな」


 バイトなんて、生まれてから一回もしたことない。

 これまで日常生活で使うお金なんて、ゲームを買ったり、周辺機器を揃えたりするだけなので、小さい事から貰っていたお小遣いやお年玉で十分足りる。


 智親や佐那と遊びに行く時もあるのだが、頻繁ではないのでバイトをしなくても金欠になんかならない。


「でも、冬服の為にバイト頑張らなくては――」


 教室の天井を見上げて、つらりと頬に涙を流しながらガッツポーズをする智親。


「私も、冬服買いたいからバイト頑張らなきゃな~」


 荷物をまとめると、前の方の席からホットのミルクティーを両手で握り、話に入る佐那。


「佐那はケーキ屋のバイトだっけか?」


「そうそう。私もこの時期になると憂鬱」


「クリスマスだもんな。しんどそう」


「おいおい、ケーキ屋じゃなくてコンビ二もクリスマスはしんどいんだぞ」


「コンビニもケーキの予約入ったりで忙しいったらありゃしない」


「コスプレもさせられるしな」


 スマホの写真フォルダーから、去年のクリスマス頃の写真を2人に見せる俺。

 去年のクリスマス。智親のバイト終わりにそのまま遊びに行こうと約束して迎えに行ったのだが、その時、サンタの格好をして接客をしていた智親の写真。


「意外に似合ってるんよね。智親」


「やっぱガタイが良いからなのかな?」


「全然顔はサンタみたいに優しそうな顔じゃないのにな」


「おい、シバくぞ」


 クスクスと笑う俺と佐那に、蔑むような目を向ける智親。


「ま、私も今年はサンタコスしなきゃいけないんだけどね~」


「「マジ?」」


 ボソリと呟く言葉に、声を合わせて反応する男性陣。

 そんなの見に行くしかないだろ。サンタコスとか需要しかない。でも、ミニスカサンタなのか否かで見に行くモチベーションが変わってくる。


 コスプレをするなら、多少はエッチな格好だとこちらとしても嬉しい。ケーキ屋で破廉恥な格好はありえないとは思うが、期待はしておこう。


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