第20話 ちょろい

「はいはい、もういいから~」


2人の間に入って、口論を止める俺。

流石にこのままヒートアップするのは見ていられなくなる。友達同士のガチ喧嘩などは見たくないからな。


「多分、この話を丸く収める方法は一つしかないと思うんだよね俺は」


「実真、どっちに付くわけ?」


「そうですよ~! 佐那先輩と私どっちに付くんですか~?」


どちらも、俺にグーンと顔を寄せてくる。


「結論から言うと、どっちも付く」


「どっちにも?」


「実真、舐めてるでしょ」


「あと、今日は真城と遊びに行く」


「なんですってぇぇ!」


呆れた様子であった佐那であったが、慌てふためき、俺の胸ぐらを掴み揺さぶる。


「あ、あんたとうとう頭おかしくなったわけ? どうしたらその答えに行きつくか詳しく教えてもらっていいぃぃ⁉」


この問題を解決にするには、2人のニーズに答えなければいけない。ということは、先にどちらかの要望を応えなければ話は進まない。

今回優先するのは、先に話を持って来た真城。


「明日、佐那は暇でしょ?」


「え、あ、うん。暇だけど」


唐突に聞かれたことに、ハッとして答える。


「明日、映画でも見に行くか。2人で」


次に佐那だ。


「え、えぇ~……私とも2人で遊び行ってくれるの? それもふ、ふたりでぇ~……ふぇぇぇ」


赤くなった頬を両手で抑えながら、舞い上がりそうな声を上げる。

本当の結論を言うと、佐那はちょろい。ちょろすぎる。


相手と対等、それ以上の条件を出せば言い包めるなど容易い御用なのだ。


「なになに? どこ連れてってくれるの? 映画だけじゃなくてオシャレなカフェとか? それとレストランとか行っちゃったり?」


キャッキャと一人で明日の妄想をする佐那。


「明日の話は、明日学校で話そうぜ。プランは佐那が考えて来ていいぞ」


「私が決めていいの?」


「楽しいプランを存分に考えておいてくれよな」


「どこ行ってもいいの?」


「常識の範囲内ならどこでも、なんでもいいぞ」


「……ホント?」


「明日は佐那のしたい事全部しような」


「……うん」


そっと頭の上に手を置くと、はにかみなががら小さく返事をする。


「んじゃ! 行きましょセ・ン・パ・イ♪」


俺の手を引き、こちらもルンルンで教室から出ようとする真城。


「智親、佐那のあとは頼んだ。俺は自分の身を守りつつ遊んでくるから」


「なんで後処理が毎回俺に回って来るんだよ……」


「誰が後処理ですって! あと実真! ヤったらただじゃおかないんだから!」


「ヤらねーよ!」


教室の扉を閉めるまで、佐那に念を押される俺であった。



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