第21話 健全
「先輩、もう逃げちゃダメですよ……?」
「逃げるも何も、この状況から脱出不可能なんだけど?」
学校を出てから一時間後、俺と真城の姿は真城宅にあった。
パステルカラーで統一された、なんとも女子らしい綺麗な部屋。
レースがあしらわれたデザインのベッド、その上にある俺と真城。
部屋の中にはほんわかとラベンダーの匂い。照明は薄暗く、ベッドの脇に這われているⅬEDライトはピンクに発光している。
この場面を想像するなら、誰もが俺が襲われていると想像するだろう。
真城の息は荒く、体も少し火照っている。俺も、手に汗を握っている。
これはもうエッチする流れ……と、言いたいところだが実際は違う。
真城が手に持っているのは、ゴムでも大人のおもちゃでもなく、コントローラー。それも、大人のおもちゃのではなく、ゲーム機のコントローラー。
俺の手にも、全く同じものが握られている。
ベッドの正面には、薄暗い部屋の中に光るテレビ画面。
真城が操作するキャラクターが、俺が操作するキャラクターを取り押さえていた。
期待させて申し訳ないが、俺達はただゲームをしているだけであった。
真城の体が火照っているのは、ゲームに白熱していたのと、先程まで飲んでいたチゲスープが原因。俺の手も、コントローラーを持っていたら汗を掻いてしまった。
「先輩、家でゲームもありじゃないですか? あ、先輩殺っちゃった」
「まぁ最初はビビったけど、ありだな……って殺られたし」
小首を傾げながらそう聞く真城に、俺も首を縦に振る。
どうして、真城の家に行くことになったかというのはなんとも単純な話。
真城について行ったら、到着したのが真城の家だった。
俺も、そんな展開予想もしていなかったので、家に入るのを当り前のように拒否。しかし、真城はどうにかして俺を家に入れようと、目の前で誓約書まで書いた。
『私、真城悠紗は自宅にて園田実真に手を出さないことをこの書面にて誓います』
手書きではあったが、ガチすぎて引いたぞ? そこまでして家でしたことってなんだと疑問に思ったが、今こうやってただゲームをしているだけ。
俺も、頭の中が?だらけだ。
だって絶対襲われると思うだろ! いくら誓約書を書いたところで『先輩、こんな紙切れなんか破ればなしになるんですよ?』とか言ってビリビリに引き裂かれて、そのままベッドに押し倒される。
そうゆう展開かとてっきり思っていた。
そんな事されたら、逆に押し倒して襲おうとも考えていた。いやヤらないけどね? メスガキを少し分からせるくらいは許されるはずだ。
「邪魔がいなくて、先輩を独り占めできるなんてさいこーです~」
コントローラーをポイと投げ、ベッドに身を投げる真城。
「佐那と智親が邪魔ねー。仲良くできると思うんだけどなー俺は」
「智親先輩はいいんですよ。問題は佐那先輩です」
「何がそんな合わないんだろうな。俺を守りたい佐那と、俺と遊びたい真城。なんか条約を結べば円満になれると思うけど」
「佐那先輩みたいな分からず屋に何言っても無駄ですよ! だって佐那先輩は実真先輩を……」
「俺がどうかしたか?」
言いかける真城に、俺は聞く。
「いえ、流石にこれを言ったらブチ切れられそうなのでやめておきます」
何が悟ったように、訂正する真城。
どうせ仲がいい友達を取られなくない、てか染められたくないとでも言いたいのだろう。
あいつも、俺が染まらないくらい頑固な事を知っているはずなのに、真城がそんな手強い人物だと思ってるのか。
これからの生活のためにも、なんとか2人の仲を良くさせなければ。俺と智親にも影響が出るから大至急。
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