第二章 死なない男
第7話 理人SIDE 異世界に行きたくない
「異世界なんて行きたくありません!」
「なぜですか? 素晴らしいジョブに、素敵なスキル、それらをお渡しします!頑張りしだいでは幾らでも活躍できるチャンスなのですよ!」
俺は勇者召喚に巻き込まれた高校生、理人だ。
いや。巻き込まれたというより、クラス全員が召喚された。
皆は、ジョブやスキルを貰い、喜んで異世界に行く穴に飛び込んだ…だが、俺は行きたくない。
だから、列の最後に並び、交渉する事にした。
ちなみに、俺が行かないとこの術式は完成しないので先に飛び込んだ同級生も戻ることになる。
剣と魔法の世界。
喜んでいたけど…大丈夫なのか?
相手も使うんだぜ…よく考えろよ、平和な時代で過ごしている俺らが侍が居た過去に行ったら、怖くて仕方ないよな、俺だったら怖い。
その状態にプラスして更に怖い魔法がある。
そして、森に行けば普通に魔物が居る。
熊や猪でも物騒なのに、それを超える魔物だよ?
そんな危ない場所に行きたいのか?
ジョブやスキルあげるから…
危ない場所に行く代償に貰ってもね。
それを使って戦わないといけない世界なんでしょう?
平和な世界でぬくぬく生きたいよ、俺はね。
大体、漫画やライトノベルで主人公は楽しく暮らしているけど?
エアコンもTVも無いんだよ! そんな世界で暮らして楽しいのか?
コンビニも無いだろうから夜は買い物はできないだろうし、きっとアイスやお菓子もこの世界より絶対に美味しい物はない。
コンビニスイーツなんて夢また夢。
俺はありったけの『拒否』の思いをぶつけた。
「ですが…」
今、女神様一瞬目をそらしたな。
やはり、俺が言った事は図星なんだろうな。
「答えられないという事は、間違って無い…そういう事ですよね?」
「ですが、貴方達が行かないと、大変な事になるんですよ!沢山の犠牲者が出ても貴方は良い…そう言うのですか?」
「それじゃ、仕方ないので行きますが…あなたの能力全部を俺に下さい!」
まぁ女神の能力を使い放題なら、悪くはないかも知れない。
「くっ! それは出来ません…世界の均衡が壊れてしまいます」
やはり出た『均衡』
つまり、魔族と人間、一方的な勝利は出来ないか望まない。
そういう可能性が高い。
ジョブやスキルも万能じゃなく、勝てない可能性も低くはない。
そう考えた方が良いだろう。
余計に行きたくないな。
「行きたくないのですが、そうだ一旦、皆をこちらに戻して、俺を外してから送り込んでみたらどうでしょうか?」
「それもできないわ…向こうの世界とこちらを結ぶのは大変なのよ、悪いわね」
これで俺が行かない…そういう選択は取りにくくなったな。
「ならば不老不死をください」
これなら、死なないよな…
「無理ね、本物の不老不死はないわ!私でも寿命はあるのよ! 大体25億年くらいだけど?それにこの神の世界だから安全だけど、下界に行けば私でも殺される事もあるわ、アンデットにする事は女神の私には無理なのよ、そうだエルフになる?800年位は生きられるわ」
他種族にはして貰えるのか。
「だけど、それは寿命が延びただけで殺される可能性はありますよね」
「そうね…」
やはり、行きたくないな。
だけど、クラスの奴で『夢は異世界転移』です。
そういう奴が5人以上は居るから、全員が戻されたら、そいつ等に一生恨まれそうだ。
こうなったら、快適な生活は無理でも、命の保証だけはせめて欲しい。
「命の保証をして貰える、そんな方法は無いですか?」
「無茶言わないで! 女神にだって…あれ、あったわ、これどうかな?」
種族:不死人(寿命100歳 100歳になるまで死なない)
ジョブ:観測者 ステータス上微(※剣士、魔術師SET)
スキル:寿命まで絶対に死なない
※不死人は人工的に作った種族なので本来は存在しない
1世界に1人限定
運命改変に係わる為、翻訳、収納以外のスキルはつけられない。
「これ、なんですか?」
「大昔の物なので良く解らないけど、昔は今みたいに勇者召喚した後関わらないという決まりが無くて、神の側でもデーターを取っていた時期があるみたいね…その時の名残の種族とジョブとスキルみたいよ、寿命の100歳までは何があっても死なない代わりに、ジョブやスキルが付きにくいみたい。最低限の魔術師、剣士をジョブに追加できる他、翻訳、収納魔法しかつけられないわ…魔術師、剣士をつけられるから初級の魔法は覚えられるけど」
「結構、凄いのかも知れないですね」
「嘘は良くないから、言うわね!他の同級生のジョブやスキルなら魔法でも剣術でも楽々上級は覚えられる! 頑張れば、そうね冒険者ならA級S級になれるし、英雄だって手が届くわ、魔術師や剣士は向こうでは普通のジョブだし、初級なら沢山いる、実力で言うなら、まず活躍は難しいわ、絶対ではないけどね、お勧めしないわ」
【100年死なない保証】これは大きい。
これでいい筈だ。
「死にたくない、それが優先なのでこれでお願いいたします」
「そう解ったわ…はいこれで良し…それでは、お行きなさい」
こうして俺は嫌々だが、異世界に旅立つ事になった。
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