第14話 理人くんが居れば私は人間で居られる。
シャァァァーーー
理人くん…死なない男の子か…
しかし、私凄いな、体中血だらけ。
勇者時代に何回か返り血を浴びた事はあるけど、此処迄血だらけになった事は無いなぁ。
これ『人間の血』だし…
ハァハァ~
血を洗い落とす時に匂いを嗅ぐせいか、ほんのりとまた感じてきたじゃない…
しかも、この血…凄く極上の物なのかも知れない。
呪いの元がバンパイアクィーンのせいか、味が解かるのかも知れない。
『極上のワイン』『これは最高』そんなイメージが頭に沸く。
バンパイアクィーンのカーミラにとっても理人くんの血は極上品みたいだ。
それと同時に恥ずかしさも込み上げて来る。
バンパイアは性交をしない。
勿論、私は呪われているだけで、人間の女だけど…
あの衝動は人間でいう、性欲に近い行為だったみたい…
シャァァァーーー
裸になって馬乗りになってザクザク刺して、切り裂いて内臓を触り、首に噛り付いて血を飲む。
かなり過激だけど…犯したようなものじゃない?
ううっ…人間としての初めてを経験する前にバンパイアとしての初めてを経験…
しかも、あれが性交みたいな物なら、私はまるで獣みたいに犯していた事になるわ。
ハァ~
私はかなり、そう言った欲が強かったみたいだわ。
そう考えると、物凄く恥ずかしくなってきた。
あの行為を人間に置き換えたら…
『男性を押し倒して跨り、ひたすらSEXに没頭して我を忘れて貪っていた女』
そういう事じゃ無い?
シャァァァーーー
理人くんと謝って、クリーニング料金を払って他の部屋を借りたけど…
これはもう、女としても覚悟するべきよね!
私は欲望の限りを理人くんにした。
うん、今度は私が理人くんの欲望を受け止めるべきだ。
だけど、これで大丈夫なのかな?
呪いに掛かってから、髪は青銀…他にはいない髪の色だわ。
目は少し赤みがかっていて、普通に見たら怖いわね。
肌なんて陶磁器みたいに白いし。
う~ん、どう考えても普通の女の子じゃない。
理人くんは綾なんちゃら、ユなんちゃらって言っていたけど…向こうの世界では、こう言う容姿が美人なのかな?
まぁ、理人くん曰く、エルフより美人なんだから、大丈夫よね!
うんうん、スタイルは抜群なんだから、他が問題ないなら…大丈夫よ!
絶対。
私は勇気を振り絞り、バスルームを後にした。
◆◆◆
「理人くん…お待たせ…それじゃ…しようか?」
「それはまだ早いから良いや」
え~と…まだ早い?
私、奴隷だから、そういう事して良い相手なんだけど?
逆に家事も出来ないし、戦闘力もこの呪いで駄目だから、それ以外、私に価値があるの?
「え~とまだ早いってどういう事かな? 私奴隷だから元々自由にそう言う事して良い存在だし…そのね?!私は理人くんを欲望のはけ口にしているのに…」
あの呪いがあるから、そういう事が出来ないだけで、命令されたら付き合わなくちゃいけない…そういう存在だよ…私。
この体は奴隷紋が彫れないけど、彫られたらどんな命令も逆らえない、それが奴隷だもん。
「確かに、この世界の考えならそうなんだろうけど、俺はあのお金でレイラを買ったとは思ってないから」
え~と…どういう事?
「それ、どういう意味?」
「レイラを買ったんじゃなくレイラとの時間を買った、そう思っているんだ」
「それってどう違うの?」
「俺はレイラが俺の傍に居てくれる、その時間と権利を買ったつもりだから、嫌な事はしないで良いよ、俺がしたいのは恋愛だから、仕方なくじゃなく…しても良いじゃなく、俺を好きになって『したい』そう思った時にしよう」
「だけど、私は多分、これからも理人くんの血を貰うし、痛い事も沢山するんだから、理人くんもしないと奴隷うんぬん兎も角フェアじゃない…と思う」
私は完全に理人くんを欲望の捌け口にしているから…フェァじゃ無い。
「それは食べ物に困っている人に『食べ物をやるから俺の物になれ』そう言っているみたいだから嫌だ…それにレイラみたいな美人が俺の傍に何時もいてくれる、うん、それだけで充分だよ」
「そう…まぁ理人くんがそれで良いなら良いや」
大体、肉を食い千切って血を飲んで、体を刺しまくって、腹を裂く。
そんな人間と付き合う人間なんて居る訳じゃないない。
まして好きになる人間なんて絶対に居ないわよ。
「うん、それで充分」
「本当に馬鹿なんだから」
「いま、何かいった?」
「なんでもないわ」
私にとっての理想、死なない男は理人くんしかいない。
彼が居れば、私は人間で居られる。
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