第19話 鎧の謎


「ごめんね、理人くん、ん、ぐぐぐ・・・じゅるじゅる、じゅるじゅる、ぺろぺろ、ぺろぺろ、うん、ごくりっぷはぁ」


私は、悪魔の騎士が守っている鎧がある、沼地に向かう途中で、つい理人くんを刺してしまった。


やはり、私は駄目だ。


朝夕、理人くんを刺したり血を飲ませて貰って衝動を抑えてもらって居るのに…武器を持たせて貰ったら…これなんだから。


だけど…多分…いや絶対に私は理人くん以外の人間を刺したり、血を吸ったりする事はもう無い…そう言える様な気がする。


この呪いの一見残酷な行為。


これが、もしかしたらバンパイアクィーンの愛し方なのかも知れない。


相手を殺してしまうかもしれない残酷な行為だけど…


今の私は理人くん以外に『これをしようと思わない』


愛おしい存在だから『する』のかもしれない。


「謝らなくても良いけど、人来ないかな? 流石に少し恥ずかしい」


護身用ナイフを受け取り、私がうっかり刺してしまった場所が太腿内側…木にもたれ掛かっている理人くんのその場所の血を舐めとっているのは、うん、確かに角度によっては凄く卑猥に見えるかも知れない。


「此処は街道から外れた場所だから大丈夫…うん、じゅるじゅる、ぺろぺろ…ゴクッ…本当にゴメンんね」


「謝らなくて良いよ」


そう言いながら顔を少し赤くする理人くんが可愛く愛おしく思える。


◆◆◆


「此処が、その沼地ですか?」


「うん、ほら、あそこで弦が絡まっている場所があるでしょう? あそこにあるよ」


「あそこに…」


「それじゃ行ってみようか?」


「うん…」


しかし、この沼はいつ来ても気持ち悪いわね。


「ほら、これよ!これ!」


禍々しいだけど神々しい。


この鎧のイメージ。


そんな何とも言えない鎧を着た骸骨があり、横に漆黒のこちらは朽ち果てた鎧を纏った骸骨がある。


どう見ても、こっちが悪魔の騎士だわ。


「ゴクリ」


理人くんが喉を鳴らした。


「それで理人くんどうする? 『死なない体』かも知れないけど、その鎧には『即死の呪い』が掛っているわ…その骸骨は勇者だったらしいから勇者すら即死させる呪い…絶対に安全とは言えないけど、どうする?」


理人くんは少し考えている様だった。


「着てみます」


理人くんは勇者だった骸骨から鎧を脱がし纏った。


「どう、大丈夫…?」


「大丈夫みたいです! 特に問題は無いみたいですが、何か変わった気はしないんですが!」


「そうなの? 力が漲るとか、そう言うのは無いの?」


「特に何も感じません」


「そうだ、その鎧脱げる?」


「脱げますよ、ほら」


どう言う事だろう?


「それじゃ、ちょっと試してみようか?ハァァァァァッ」


私は鎧を殴ってみた。


これでも勇者だから鉄の鎧位ならひしゃげる。


だが、この鎧はビクともしない。


ただ、頑丈なだけの鎧を『最強の鎧』なんて言うのかな?


「どう、何か解った」


「あはははっ頑丈な事だけかな…もしかしたら眉唾だったのかも」


「そう、だけど軽くて使いやすそうなのは確かだよ」


「それなら、取り敢えず持っていこうか?」


「そうだね」


この鎧、何か秘密があるのかな…



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