第18話 悪魔の騎士が守る鎧


さて問題は理人くんだ。


「どうかな?」


「う~ん太刀筋は綺麗だけど…駄目だよ!」


『死なない能力』を手に入れた代償が多分、これなんだ。


私も理人くんも『鑑定』をすると不味い情報が見られてしまうから止めた方が良い。


この世界の人間は冒険者になろうと言う子は5歳位から体を鍛え始めて14歳位で冒険者デビューをする。


何を言いたいのかと言えば…剣士や魔術師のジョブの子は9年間鍛え上げて、冒険者になる。


異世界からの転移者は凄いジョブやスキルを持っているから凄いのであって、それが無ければ、こちらの人間と変わらない。


だから、理人くんは『鍛える前』の状態だから、この世界の子供と変わらない。


「一応、剣道を習っていたんだけど…」


「人間やゴブリンならどうにか…オークじゃ恐らく斬れないよ、薄皮1枚斬って、恐らくこん棒で撲殺されちゃうかな」


「そうか…戦うのは難しいか、残念だ」


「だけど、そうでも無いんだよね?」


「なにか方法があるの?」


「凄く変な話だけど、理人くんは最強でもあるんだよ?」


「最強?」


「そうだね、例えば、魔王城まで行って、魔王の間(ま)に理人くんを放り込むと…」


「放り込むと?」


「理人くんは死なないから、魔王は戦い続けないとならない…ダメージ0なら兎も角、1でも与える事が出来れば、何時かは勝てる! 魔王は逃げないからね…まぁ何年後になるかは解らないけどね」


逃げない相手限定なら『死なない事は』負けない事だ。


心が折れない限り絶対に負けない。


「確かに…そうだけど…魔王以外には意味が無いよね」


「うん! 多分途中で飽きて撤退するか、逃げるからね! それに理人くんを連れて魔王城まで行くのは大変だから、余り意味は無いかな?」


「確かに…そうだ、そう言えばレイラは魔王カーミラと戦ったんだよね!」


「うん! 戦って勝ったよ! あはは、呪われちゃったけど…」


「魔王って相当強いんだよね」


「強いよ! だけど…恐らく今の魔王は私なんか1撃で殺せる位強いと思う…」


「元勇者のレイラが全く歯が立たない…そう言う事?」


「うん、魔王の強さに呼応するように、勇者側も召喚呪文で呼ばれる戦力が違うのよ! 私の時は単独で私1人だから魔王としては最弱クラス。次のランクの魔王なら勇者+三職がこの世界の人間から呼ばれるの」


「ちょっと待って!異世界から多数の人数が呼ばれるのって大変なんじゃ…」


「理人くんを含み30人近い召喚…此処暫くで、恐らく最強クラスの魔王、そして四天王を含む強力な魔族も現れると思う」


「大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃないと思う! 恐らく万人単位の死者は出るよ! それで理人くんは、その戦いに介入するの?」


今の私と理人くんじゃ…恐らく戦力にはならないな。


「レイラが戦えないなら、介入は難しいよ、顔見知りが危ない目に遭うなら助けたいとは思うけど『命がけ』でとまでは思わないからね」


「とは言え、このままじゃ理人くん、相当弱いから、暫くは私と一緒に狩をしながら、強い武器や防具を手に入れたら良いかも知れない」


「強い武器や防具は手に入れるのが難しかったり高いんじゃない?」


「普通はそうだけど、理人くんは違うよ!『絶対に死なない』なら強いけど即死系の呪いが掛った防具や武器を手に入れれば良いかも知れない」


「そういうって事は、何か心当たりはあるの?」


確かにある。


『悪魔の騎士が守っていた最強の鎧』


伝説によれば、聖剣を持った最強勇者の攻撃でも傷がつかず、時の魔王ですら傷一つつける事が出来なかった。


絶対不破の最強の鎧。


但し…呪いに掛かっていて着た者は即死する。


「こんなのが実はあるの、魔王カーミラと戦う為に手に入れようと思ったんだけど、どうして誰も手にしないか理由が解ってやめたんだよ、幾ら最強でも即死系の呪いが掛っていたら…まぁ無理だね」


「確かに…」


「だけど、理人くんなら関係なく使えるから拾いに行かない?」


「悪魔の騎士は物凄く強いんじゃない?」


「もうかなり前の勇者に倒されているよ! 尤も、その勇者が鎧を着て宝箱の横で死んでいるけど?」



「それって、その勇者の死体からはぎ取って身につけろって事?」


「うん! 無理にとは言わないけど…此処から割と近いよ」


「それじゃ、身につけるかどうか解らないけど、取り敢えず見に行こうか?」


「うん」


こうして私達は、悪魔の騎士が守っていた鎧を見に行く事にした。

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