第17話 冒険者ギルドへ
「おはよう理人くん…ハァハァ、いつもゴメンね…」
ブスッ
「うっ…ぐッ」
「ゴメンね…ん、ぐぐぐ…じゅるじゅる、じゅるじゅる…ぺろぺろ、ぺろぺろ」
「うん、大丈夫?嫌じゃ無いの?」
「ううん、はむっ、ちろちろ、そんな事ないよ? これ凄く興奮するし、寧ろ、あむ、凄く良い…れろれろちゅぱっ」
キスしながら、血を貰った時に理人くんが喜んでくれたし、いつも以上に興奮したから、考えたんだよね。
刺した時に『その血を舐めたり吸ったりしたらどうかな?』って。
結果は、うん…最高…
やはりカーミラの呪いのせいか、傷口に口をつけるのは凄く興奮するし、それに理人くんも喜んでくれているから、うんWINWINだよね。
理人くんの顔が痛そうな顔から嬉しそうな顔に変わっていくのを見ると私も嬉しくなる。
「うっ…ハァハァ」
一方的じゃなく、理人くんが少しは喜んでくれる。
まだまだ足りないけど、少しは改善されたと思う。
◆◆◆
「多分、大丈夫な気がする…うん!平気だよ?」
「それなら良かった…それじゃちょっと外出してみる?」
「うん!」
理人くんのおかげで、衝動はかなり抑えられる様になった。
刺したい、切り裂きたいという衝動は朝夕1回でどうにか耐えられる様になって、血もその時に貰えば、他の時間は『どうしても欲しい』という衝動は無くなったわ。
「それじゃ行こう?」
「何処に行くの?」
「冒険者ギルドに行ってみようと思うんだ!奴隷商で登録関係は終わっているけど、折角だから色々と申請もしてみようと思う」
「そうだね、流石にそろそろ稼がないと不味いよね?」
「城から出る時結構な支度金は貰えたけど、油断したら無くなっちゃうから、早目に現金収入の確保はしときたいんだ」
「だったら、私に任せて! これでも元勇者だからね!」
という事で、散歩を兼ねて冒険者ギルドに向かった。
「それは良いけど、あっちの方は大丈夫?」
「朝、理人くんを刺して、血を吸ったから…一応大丈夫みたい! ウズウズはするけど?」
「本当に耐えられなくなったら言ってね、口を切れば良いし、人気のない所で四肢なら刺しても大丈夫だから」
「うん! だけど、前と違って、四六時中、誰かを刺したいとは思わないし…理人くんは嫌かも知れないけど、刺すのも血を吸うのも理人くんが良いって思っちゃているから、多分大丈夫だと思う」
「そう、それなら良かった」
完全に自覚したよ。
多分、これがバンパイアの恋なのかも知れない。
傷つけるのも血を味わいたいのも、理人くんだけだ。
これだけ周りに人間が居るのに私の衝動は理人くんにロックオンしている。
◆◆◆
「あの、此処は冒険者ギルドですよ?イチャつくのは他でして貰えますか?」
「「すいません」」
受付のお姉さんに怒られた。
ギルドの入り口で血が欲しくなってキスしたんだから仕方が無いな。
「それで、今日はどういった御用でしょうか?」
「一応、奴隷商で登録はしたのですが、正式にパーティを組もうと思いまして、その手続きです」
「そうですか? それでは冒険者証を…あらっ、そちらの女性は理人様の奴隷ですね…犯罪奴隷なのでもうパーティ登録済みです」
「それはどういう事ですか?」
「犯罪奴隷がした事は所有者の責任になります。その為、冒険者の場合は自動的にパーティを組んだ状態になります…常識、あっすいません、理人様は異世界人でしたね…まぁこの世界では常識です。二人ともまだ実績が無いからFランクスタートですね…手続きはもうほぼ終わっていますが、もし何かするなら、パーティ名の登録と奴隷のレイラ様の身分証明の発行位ですね? 身分証明は制作するとしましてパーティ名はどうします?」
勇者の実績は抹消されている。
まぁ奴隷落ちだから仕方ないか…寧ろ、全くの別人扱いの方が都合は良いかも知れない。
理人くん達が来たと言う事は私の勇者のジョブは無くなっている筈だから…関係者以外、私が勇者だった事は解らないから都合も良いかも。
「レイラ、パーティ名どうしようか?」
「え~とぼおーっとしていた、理人くんが好きに決めて良いよ」
「レイラが決めてよ」
「ハァ~もういい加減イチャつくの止めて貰えますか? あんた達みたいなバカップルは『エターナルラバー』(永遠の愛)とでも名乗れば良いんじゃないですか?」
「永遠愛、エターナルラバーだって、良いかも知れないな…レイラはどう思う?」
「うん、凄く良いね! そうしようか?」
「それじゃ、それで」
「解りました…はいこれで登録は済みました! あと、こちらがレイラ様の冒険者証です、奴隷ですので口座は単独で作れず、理人様と共有となりますのでご注意下さい…解らない事はありますか? もし、王城で説明が全くないならご説明を…」
「私が知っているから大丈夫です! それじゃ、理人くん行こうか?」
「レイラが知っているなら大丈夫だね…そうだね」
「それなら、これで手続きは以上です、お疲れ様でした」
理人くんも、私も訳ありだから、鑑定や訓練場は使わない方が良いよね。
◆◆◆
今、私達は街を出て、近くの森に来ている。
酒場や食堂で話すより安全だし、此処なら体を動かす事が出来る。
「こんな所に来てどうしたの?」
「久しぶりに体を動かしてみようと思って! 理人くん達が此処に来たと言う事は、私は多分、勇者じゃ無くなった筈だから、今の私がどの位動けるかなと思ってね」
「体とか平気?」
「うん! 理人くんが衝動を受け止めてくれたから、半日なら大丈夫な気がする…今迄の私だったら、魔物を狩っている最中、人間を刺す事を考えたり、人間の血が欲しくなり、狩りそっちのけで仲間を襲う可能性すらあったけど、うん、間違いなく大丈夫だよ!」
以前の私なら考えられない事だ。
流石に犯罪奴隷を連れて狩りに出る人は居なかったけど。
恐らくそう言う場に居たら興奮して人間を攻撃したかも知れない。
だけど、今はその衝動が無い。
恐らく夜まで、可笑しくならない気がする。
もし、少し位可笑しくなっても理人くんからキス越しに血を貰えば充分。
「そう、それなら取り敢えず安心だね」
「うん!それで少し体を動かして良い?」
「勿論…」
「それじゃ!」
思いっきりジャンプしてみたけど、多分5メートルも飛べていない。
多分、昔の1/3位の力しか出ていないな。
きっと勇者のジョブが他のジョブに変わったからかな。
「凄いね」
「あはははっ、全然すごくない!多分以前の1/3位の力しか出ないや、だけどこの体の調子ならオーガ位は狩れるから、冒険者なら通用すると思う、だけど、その反面この程度じゃ魔族には通じないと思う」
「まぁ、魔族と戦う気はないから安心して…2人で生活が出来る位の収入のあてには成るから充分だね」
「そう言ってくれると助かるわ」
新しい魔王は異世界人がどうにかするでしょうし、それに関わらないなら、うん、理人くん1人位充分守れる。
これ位の力で充分だわね。
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