第16話 ファーストキス
「おはよう理人くん…ハァハァ、いつもゴメンね…」
ブスッ
今日は余り衝動にかられていない…
「うぐッ…ハァハァ、今日は太腿か…良かった」
本当は良くないよ…
太腿に刃渡り20cmのナイフを突き刺しているんだもん。
だけど、これでも私の刺したいという衝動では軽い方だ。
すぐに傷が塞がり、血が止まる。
そして、理人くんは何事も無い様にシーツをかたずける。
「あの…本当に大丈夫なの?」
「切り裂かれるのは、まだまだ痛いけど、刺される分は、少し慣れた…最近ではお腹じゃないとラッキーだと思える…」
「本当にゴメンなさい!」
「良いよ、良いよ、最初から解ってて買ったんだから気にしないで良いかよ! 条件を知ったうえで、それでも傍に居て欲しい、そう望んだのは俺だよ」
「確かにそうだけど…一度聞いて見たかったんだけど…そんなに私が…その好みだったの?」
確かに、相手が好きなら、ある程度の痛みは我慢できると思う。
だけど、毎日続いたら、流石に我慢できないんじゃないかな?
もし、理人くんが普通の人なら…死ぬ様な痛みを味わうんだから…
痛覚は少し軽減されているみたいだけど…痛いみたいだし。
「そうだね、この世界の言い方に治すなら、まるで自分の好きな本のヒロインが目の前に現れた! 夢の世界から来た理想の彼女…そんな感じかな! それに過ごしてみて思ったけど、一緒に居て凄く楽しい…まぁ痛いのは嫌だけど、それさえ無ければ、最高の…その彼女だと思っているよ」
え~と、思った以上に思われていてどうして良いか解らない。
もう少し…あ~もう!
「それなのに、その、この状況で手を出さないわけ!」
私、下着姿で跨って太腿にナイフを刺していたんだから…
傷が無くなったら…結構、うん過激な恰好をしていると思うんだけどなぁ~
気分も高揚しているからハァハァしているし…
「だから、それは…」
「解っているよ…本当に好きになってくれたら…そう言う事よね」
本当に鈍感だわ。
胃袋掴まれて、欲望も掴まれて、この状態で本当に愛して貰えてない?
本当にそう思っているのかしら?
まぁ、思って居そうだけど…
「ああっ…」
「多分、私、理人くんが思っている以上に理人くんの事が うんぐっ?! ハァハァ え~と」
理人くんがいきなりキスしてきた。
そう言う気になったと言う事かな?
「好きだって言ってくれたから、我慢できずにキスしちゃった…あのさぁ、本当に嫌じゃない?」
「うん、だから…」
「俺を刺したお礼ならキスで充分だよ…寧ろ、得した気分」
いや、絶対に釣り合って無いと思うんだけどな…
「それで、そこから先はしないで良いの?」
「それは…まだ良いよ…その代り、ちょっとしたい事があるんだけど…」
「良いよ、何でも言って」
キスかぁ…考えてみたら、キスなんて初めてしたな…あははっ、これファーストキスだ。
◆◆◆
「ハァハァ、ん…じゅる…ちゅ…ん…じゅる…ハァハァ、これ凄く気持ち良い、美味しい」
「じゅる…ハァハァ、なんだかゴメン!」
頭がぼーっとしてきた。
これ、凄い…
「ん…じゅる…ちゅ…ん…じゅる、うん、ごくっ、ゴクリっうん、ぷはぁ、ハァハァ…凄く美味しい…止まらない、ハァハァ」
別にエッチをし始めた訳じゃない…血の飲み方を変えただけ…
理人くんからの提案だったんだけど、血を指じゃ無くて『口移し』出来ないかって事だった。
もし、自分を好きになってくれたなら、提案しようと考えていたみたい。
理人くんがナイフや歯で舌や頬っぺたの内側を傷つけて出血させて、それを私が飲む。
これなら、外で私が『血が欲しくなっても』対応できるし、周りからはカップルがイチャついている様にしか見えない。
「うん…くっちゅくっちゅくっちゅ」
「じゅる…ちゅ…ん…じゅる、うん、ごくっ、ゴクリっうん、ぷはぁ、ハァハァ…ごくりっううんうん…ハァハァ…凄く美味しかった」
血がもう止まっちゃったみたいだ。
「ゴメンね嫌じゃ無かった?」
「ううん、嫌じゃないよ…血を飲みながらのキス…凄く気持ち良かったし、寧ろ嬉しかった…それに恥ずかしいけど興奮もしちゃった…そのありがとう…」
多分、この吸い取ったり舐めとる感覚がバンパイアに近いのか、興奮が凄くて、何回も恥ずかしいけどいきかけちゃった。
それにいつも指を切る時の理人くんの思いつめた顔を見ないで済むのも少し嬉しい。
何より、舌や頬っぺたを切った理人くんは最初は痛そうな顔をしているけど、これを続けていると嬉しそうな顔に変わるって来るのが嬉しい。
いつも貰ってばかりだけど、少しは『愛』を返せた気がするし…凄く気持ちよい、これ最高!
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