第20話 VS オーガ
「これは確かに最強なのかも知れないけど、微妙だね」
『絶対不破の最強の鎧』それは間違いなさそうだけど、この鎧。
それ以外意味が無さそうなんだよね。
簡単に言えば、フライパンみたいな物で、あれってフライパンは熱で壊れないけど、肉は焼けるじゃない?
正にそれと同じ。
私がどんな攻撃を仕掛けても壊れない、いや傷一つ付かない。
だけど、中の人間は違う。
「確かにそうだね…あはははっ」
例えば、この鎧を着た理人くんに私が剣で攻撃すると、鎧は傷つかず理人くんは骨折したり痣が出来る。
炎の魔法では鎧はビクともしないが、理人くんは火傷する。
氷系も同じ。
確かに『最強の鎧』だわ。
だけど、この鎧は…理人くんとは物凄く相性が良いみたいだ。
この鎧自身、意思があるのか呪いのせいか、理人くんから一定の距離に何時もある。
更に言うなら理人くんが着たいと思うと瞬時に装着できる。
それと、本来は全身鎧で兜までついていたみたいだ。
理人くんが望むと、まるで虫の顔みたいな不気味な兜までついた全身鎧になる。
神々しいというより、やはり禍々しいそう私には思えたけど…
理人くんは『特撮ヒーローみたい』そう喜んでいた。
そして、気がついてしまった。
ますます、これでこの鎧も理人くんも鑑定は不味いわ。
理人くんは死なない。
そして、この鎧は絶対に壊れない。
理人くんの弱点は、切り刻まれる事だ。
死なないけど再生や体がくっつくまで時間が掛かる。
だが、この兜つきの全身鎧を着ていれば、理人くんの体のパーツはこの鎧の中。
復活までの時間が短く済むわ。
だから、この鎧を着た理人くんをどうにかしたいなら『閉じ込める』『永続的に死ぬ状況を作る』その二つしかない。
「理人くん…確かに微妙だけど、この鎧、理人くんのみ、凄い鎧になるわよ…多分」
「はははっ、まさか?」
「いや、本当だから…取り敢えず実践してみない」
「レイラがいうなら、やってみようかな?」
理人くんは驚く事になるわ。
◆◆◆
理人くんと一緒にそのまま狩りに出た。
ゴブリンじゃ駄目。
最低でもオーク、出来たらオーガが好ましい。
まぁ、この辺りをウロウロしていれば、そのうち出会うでしょう。
「あの、狩りって何を狩るつもり?」
「そうね、オークかオーガが良いと思うんだけど?」
「レイラが狩るの?」
「いや、狩るのは理人くん」
「ゴブリンなら兎も角、オークやオーガなんて無理だよ…この前、レイラもそう言っていたじゃない?」
「鎧を手に入れたから大丈夫だと思う!思い切ってやってみない?もし危ない目に遭ったら私が助けるから」
「そう言うのならやってみようかな?」
暫く適当に歩き回わっているとオーガに出くわした。
「居たよ!」
「あれが、オーガ…無理、俺には到底無理…」
顔は青いけど、まぁ大丈夫だよ。
「大丈夫だから! てぃ!」
私はオーガに石をぶつけた。
「ちょっと! レイラ…」
オーガは怒りの表情をしながらこちらに向かってきた。
「大丈夫! もし危ない事になったら助けに入るから…頑張って」
「解った!」
オーガ対理人くんの真向勝負が始まった。
怒りに任せてオーガは理人くんを殴るが…
バキッビシッ
やっぱり…オーガの拳が砕けた。
「ぐわぁぁぁぁーー」
今にも泣きそうな顔でオーガが拳をおさえた。
そりゃそうだ…あんな固い物を殴ったんだからそうなるよね。
理人くんも痛そうだけど、すぐに回復するから問題ない。
「理人くん、何でも良いから手を出して、ひたすら殴れば良いから」
「ううっ…解った」
バキッバキッドゴッ
「うがぁぁぁぁぁぁーーーーっ」
バキバキドガッ
「理人くん、膝を蹴って…そして膝をついたら頭部、可能なら後頭部を連続で殴るか蹴るかして!」
「ハァハァうぐっ…解った」
見ていてオーガが可愛そうになる程、えげつないけど、多分これで良い筈だ。
『死なない理人くん』が『壊れない頑丈な鎧』を手に入れたが為の戦い方…それがこれだ。
防御なんて必要ない。
相手が攻撃すれば、勝手に相手がダメージを食らっていく。
そして、幾ら理人くんが非力でも、あんな固い籠手で殴られたら…絶対に相手もダメージを負う。
つまり、相手は攻撃すれば自分が傷つく。
理人くんが攻撃すれば、勿論傷つく。
やっぱりそうだ…
この戦い方をするなら理人くんに負けは無い。
『相手は負けるか、逃げ出すしかない』
理人くんの大きな弱点。
バラバラにされる事が無い。
今の理人くんを倒すのは難しい。
弱点はあるけど…それさえ知られなければ、ほぼ無敵だ。
「あっ…」
やはりオーガは逃げる事を選んだんだ…残念。
「理人くん、オーガ相手に殴り合いが出来たじゃない? 凄くない」
「ハァハァ、確かに凄いですね」
今の理人くんは、魔王と戦うのに『利用価値』がある。
やっぱり第三者にステータスがバレる鑑定は避けた方が良いかも知れない。
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