第3話 過去 勇者は魔王を倒し呪われてしまった。
金貨1枚の安物で犯罪奴隷の私がこんな高待遇なのには理由がある。
それは、これでも【元勇者】だったからだ。
多分、勇者じゃ無ければ、私は今頃、死刑になっている。
だが、勇者保護法のなかに『勇者になった者に死刑は無い』そう記載されている為、元勇者としては一番重い、犯罪奴隷落ちになっている。
酷い?
えっ、全然、酷くないから、これは仕方が無い事だ。
私は…呪われてしまっているからね。
あれはそう、魔王と戦った時の事だ。
今とは何もかも違う。
この世の中は善と悪は釣り合いがとれているのか『私の時の魔王は弱かった』その為、異世界からの召喚も無く、勇者もこの世界から女神に選ばれ…賢者も聖女も剣聖も生まれないで、単独勇者の私1人のみが生まれ、存在した。
尤も条件が悪いのは相手も同じ。
強い魔族は存在せず、四天王も居ない状態。
それでも、魔王は魔王。
14歳から旅立って2年の月日を使い、魔王城にたどり着き、ついに私は魔王カーミラを倒した。
「勇者レイラ、残酷な殺人鬼よ! 私が一体何をしたと言うのだ…魔族としての残酷性を押さえながら、僅かな血を食し、決して命は奪わなかったのだぞ…血を吸った人間も…」
「黙れ! 魔王の言う事など聞く耳持たないわ」
私は魔王と言うのは悪の存在、そう教わってきたからこの時の私は躊躇が無かった。
この魔王は…今更後悔しても遅い。
今となって思えば、聞く耳を持つべきだったわ
「そうか…呪われろ、呪われろ勇者…私と同じ境遇になり、それでも正義を貫けるなら…認めてやろうぞ…さぁ殺すが良い」
「言われなくても…死になさい、魔王、バンパイアクィーンカーミラ」
私はカーミラを殺し、返り血を浴びて、2年にわたる私の苦しい旅は終わった。
◆◆◆
そして私は凱旋した。
凱旋パレードをし、夜になった時、私の体に異常が起きた。
『血が欲しい』
『人を刺したい』
『人を切り裂きたい』
この衝動が私の中に現れた。
私はもしかしたら、吸血鬼になってしまったのか…そう思ったが、違った。
牙は生えて無いし、十字架を触っても熱くない。
聖水もつけてみたが熱くない。
吸血鬼にはなっていないようだ。
気のせいよね?
そう思っていたけど、この衝動は次第に大きくなっていく。
大司祭様に話をし調べて貰ったが…
「吸血鬼にはなって無いようですが、呪われています」
「呪い? 私勇者ですよ! 何かの間違いでは?」
勇者には女神イシュタス様の加護がある。
だから、呪いなんかに掛かるわけがない。
そう思っていたんだけど…
「レイラ様の場合は沢山の魔物や魔族の血を浴びて戦っていました、そして魔王のカーミラはバンパイアクィーン…恐らくは最後の力で血を使い呪いを掛けたようです…」
「それで、解呪は?」
「恐らく、無理です…聖女様が居たなら、あるいは…ですが、今の時代はレイラ様が知っての通り、聖女様は存在しません」
「それでは、どうすれば」
「ご自身の精神力で頑張るしかありません」
「そうですか…」
私は解決策も無いまま、失望し教会を後にした。
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