第11話 初めての経験 快感


「そう言えば名前を名乗って無かったね、理人と言います! 宜しくね」


「うん、こちらこそ!」


奴隷商から出て久々に見た空は青く、風は心地よかった。


「それじゃ行こうか?」


「…うん」


やっぱり、駄目だわ。


凄く不味い…檻が無く、自由になった事で衝動が激しい。


『血が欲しい』『人を刺したい』『人を切り裂きたい』


「顔色悪いね…ちょっと待って! 休める所に行こうか?」


「ハァハァ…ごめんね…」


横になって気を抜かなければ大丈夫よね。


どうにか抑えないと…大変な事になる。


多分、あの時以上に被害がでる。


私は理人くんに手を引かれるまま、近くの宿屋に向かった。


「すみません、大き目の部屋で可能なら防音性の高い部屋をお願い致します」


「解りました、ただ銀貨3枚になりますが宜しいでしょうか?」


「ハァハァ~…」


「お願いします」


理人くんは私の手を引くと部屋へ連れ込んだ。


「ハァハァ、ごめんね、寝れば少しは楽になるから…」


本当に私は足手纏いだな。


ただの生活もできない…ああっ血が欲しい…駄目…


ああっ刺したい…ブスっていうあの感覚が忘れられない。


ああっ、切り裂きたい…ああああっ駄目、抑えきれない。


「急がないと、ほら服を脱いで…早く」


「馬鹿…やめなさい…それ処じゃ無いのよ…ハァハァ」


「ほら、もう我慢できないんでしょう…欲望に快楽に身を任せなよ」


そうか、私がハァハァしているから勘違いしたんだ。


恐らく、発情でもした…そう思ったの…


多分、そうだ…


「理人くん…違う、そんなんじゃないの…逃げて…不味い」


そう…これも欲なんだ。


性欲に近いのかも知れない…血が飲みたくて、肉を食い千切りたくて…刺したくて…切裂いて内臓を見たい…ハァハァ。


口から涎が垂れてきて、下半身も湿ってきている。


男性が、女性の裸を見たい、女性を抱きたい。


その感情に近い…ううん、ハァハァ、それ以上だ。


「理人くん…私はきっと…ハァハァ」


もう止まらない。


目の前の理人くんを多分、傷つける…いや、殺してしまう。


なら…せめて…


私は、今着ている服を震える手で脱ぎ捨てた。


「ハァハァ…理人くん…ゴメンね」


こんな物が償いになる訳が無い。


私が彼を殺しにかかる前に、私が差し出せる唯一の物を差し出した。


綺麗だと言ってくれた。


それが嬉しかった。


多分、私は理人くんを殺してしまう…せめて、殺してしまう前に…綺麗だって言ってくれた…裸を見せてあげる…よ。


自分から脱いだ事は無いわ。


ゴメンね…ううん、ごめんなさい。


理人くんが近づいてくる。


気持ち的には、触らしても良い。


ううん、何をされても足りない。


もし、私の意識が保てるなら、最後まで付き合っても構わない。


出来たら1日、駄目ならせめて…1時間で良い…正気を保ちたい。


だが…駄目だ。


「ハァハァ…駄目…ハァハァ」


本当は理人様って呼ばなくちゃいけないのに…理人くん。


これも衝動のせいなのかな…


「うんっ…うん、駄目…」


「自由にして良いんだよ、欲望に忠実に…レイラさんの好きにして良いよ」


笑顔だ…絶対に勘違いしているよね…ハァハァ。


だけど、興奮して下半身を押さえ、口を押さえている私は、発情している…そう見えても仕方が無い。


「駄目…ハァハァ…逃げて…」


きっと私は逃がさない…だけど…生きて貰いたい。


「もう我慢しないで良いんだよ…はい」


「なに勘違いしているのよ…ハァハァ逃げなさい! えっナイフ…なんで…ああっもう駄目」


意識が刈り取られるなか、私の口の中には、あの鉄の様な味と肉を食い千切った感覚があった。


そして、私は理人くんからナイフを奪い取る様に受け取り…突き刺した。


「ううっ、痛い..」


ブスブスッ…ああっ凄く気持ち良い


理人くんの顔が苦痛で歪んだ…だけど止まらないし、止められない。


「ハァハァ、あああっ、あんあんああああーーっハァハァ、凄く気持ち良い…気持ち良いよーーっハァハァ」


この快感には逆らえない。


駄目、どうしても止まらない。


まるで何かに支配された様に、ナイフを突き立て、引き裂いて…理人くんの首に噛り付き血を貪った。


この快感には…もう、逆らえない…



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