世界の平和は勇者に任せます!~魔力の無い荷物持ちは好きに生きさせて貰います~

ぴえ~ん

第1話 異世界へ 

「はっ?!こ、此処はどこなんだ?」


見渡す限りの白い空間。

自分の位置さえも上手く把握出来ない。

おまけに、俺は全裸だ。


「お~いぃぃ…。誰かいませんか~?」


「はい?」


「のぅぁん…ぢゃ~……」


突然背後から返事が返って来たものだから、心臓が飛び出るかと思うくらいビックリした。


「ど、どどどどどどど、どなたですか?」


「わたし?私は見た通り、神ですよ?」



幼女だ。白く長い髪の幼女がそこに立っていた。

いや、少し浮いてる?

ドヤッ!!顔で胸を張っているけども、明らかに幼女だ。



「カミ、ですか?ペーパーやヘアーのカミでは無いですよね?」


「あったり前です!!!」



いや、そんなに強く突っ込まなくても大丈夫だよ。

とりあえず、この状況を確認しなければ。


「あの~、じゃあ聞きますが・・。ここはどこで、私は何故ここに居るんでしょうかね?」


「ああ、それは簡単です。貴方は現世で死にまして、魂の状態で此処に来ている!という事ですね!」



いちいちドヤ顔するのは鬱陶しいけど、要するに天国か?


「天国ではありませんよ!強いて言うなら『魂の選別場』とでも言いましょうか?」


「せ、選別場?」


「そうですね。貴方の魂は非常に珍しい運命を持っている状態でしたので、このまま普通に輪廻させるには勿体無いと思いまして、此処に運びました!私が!」


またドヤ顔とか、どれだけ好きなんだ。



でも、そうか・・・死んだのか、俺は。

特に感慨も無いな。

普通のサラリーマン家庭に産まれ、小中高と普通に無難な人生をおくった。

大学にも一応入ったが、特に何を得るでもなくサラリと社会人になった。

中規模の商社に入り、35歳で係長。

趣味も無く、彼女も作らず、友達も少ない。

無味無臭無感動な人生だった。



「では、貴方には二つの選択肢があります!」


ぼんやりと自分の過去の人生について考えていたら、ドヤ顔神が聞いてきた。


「二つ、ですか?」


「一つは、このまま輪廻の輪に戻って地球の生命の輪の中に戻る。もう一つは、異世界へ行き違う人間として新しい人生を歩む!」



ひょっとして、これは俗にいう『異世界転生』なのか?

ならばこれだけは聞いておかなければ……。


「その異世界に、ま、魔法はありますか?」


「ありま~す!ドヤ~!」


「では、異世界でお願いします」



確かに私は無感動で生きてきた人間ですが、やはり魔法は永遠のミラクル~。


「では~、私からの加護を一つ授けますね~!ドヤ~!」



ピカッと自分の体が光り、何だか不思議な力に包まれた感触が・・。


「では貴方の『職業』は何にしますか~?」



えっ?職業?働くって事かな?


「いや、特に……希望は無いですが‥‥、いや、どうだろ?何か…」


ホントに何も頭に浮かばないぞ?

せっかく神様が選んでも良いって言ってくれてるんだから……。

えっと、何が良いかな……。



「はい~、では貴方の職業は『無』という事で~!ドヤ~!」


「はっ??」


「でわ~、新しい人生を満喫してくださいね~!ドヤ~!」





幼女ドヤ顔神様の顔を見たのは、その記憶が最後になった。


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