第19話 おもしろ?鮮魚店

「ところでアメリアさん、伯爵の娘さんの好みとかって分かりますか?」


俺たちは手を繋いで町の中心部辺りをぶらぶら歩いていた。

空いてる方の手には、さっき買った貝っぽいモノの串焼きが握られてはいるが。


「聞いた話しでは、身が白い魚を食べたらしいわね。少し酸味が効いていたという話よ……あとは、貝の入ったスープがご所望みたいね」

「そうですか…」


(白身魚に酸味……マリネっぽい感じかな?貝のスープか…その辺は材料を多めに持って行って、料理人の方々に頑張って貰うしかないな)

頭の中で考えうるメニューを思い浮かべる。


「身が白い、ってだけでは何の魚かは分からないし、店の人に聞いてみるしかないかもね?貝の方は、何種類か買って帰れば何とかなるんじゃないかしら?」


アメリアも俺と同じ考えだったようで、一先ひとまずは港目指して歩いてみよう!という事になった。



ハサミが6つも付いているカニっぽいモノや、アメリアが「食べてみたい!」と言った七色に輝く大きな貝を買ったり……。

港へ着く頃には結構な量の食材を購入していた。

もちろん全て亜空間収納に入れてあるので、重くないし鮮度は抜群だ!


「大きな船がありますね。この辺が港っぽいですね?」

「潮の香りが素敵ね…」

「あそこの大きなお店で聞いてみますか?」


『さかなや』と看板に書いたそのままの店が、デーン!!と建っている。

二人で店に近付き、店員らしき女性に話しかける。


「あの、ちょっとお聞きしたいんですが…?」

「はいっ?」


急に声を掛けられビックリしたみたいだ。

申し訳なかったな。


「後ろから急に声を掛けてしまい、すいません。ここの方ですか?」

「は、はい。何かご入用ですか?」

「ええ、魚を買いに来たんですがよく分からなくて……。白い身の魚で、食べて美味しいモノって…教えて欲しいんですが?」

「ああ、それなら…「なんだと!生で食べるだと?」」


女性が話し始めた途端、奥から大柄の男性が出てきた。


「てめえ、今、食べると言ったか?」

「ええ、言いましたね?」

「生で食べるなら、この港で水揚げされてから半日が限界だ。うちに並んでる魚でも、今日の夜までが限界だろう。この町で商売やっているならいざ知らず、そんな長い時間食える魚なんざ無いな!何処まで持って行くのか知らねえが諦めな!」

「お、お父さん…」


女性が『お父さん』と言った大柄の男性はそう言い、一呼吸おいてまた話しだした。


「ベッピンなお姉ちゃん連れて、ここへは観光か何かで来たんだろう?生で食った方が美味いってのはその通りだが、ここでは料理を出してねえ。だから、生のモンが食いたいんだったら良い店教えてやるから、そこへ行きな!」

「ご忠告ありがとうございます。ですが、私たちは魚を買うために来ていますので……」

「だから……」

「お父さんっ!!!」


娘であろう女性の一喝で男性は黙ってしまった。


「お客さんに対してそういう言い方するのはやめてって、何度も言ったよね?後で帰ってきたら、お母さんに言っとくからね!!」

「いや、おま……それは…」

「まあまあ、お父さんも悪気があったわけじゃないだろうから……」

「てめえにお父さんと呼ばれる筋合いはねえー!」

「お父さんー!!!」

「……はい、すいません…」


そろそろ話し進めても良いかな?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る