第20話 まいどあり!

さかなや父娘おやこの漫才が落ち着いたので、話しを進める。


「で、さっきの話しですが…白身で生が美味しい魚を教えて下さい」

「それなら、こっちのコレか……その大きなモノがお薦めですね!」


俺のちょうど足元にある水が入った大き目の桶には、30cm程度の青っぽい魚が10匹ほど泳いでいる。もう一つのお薦めは右手の台の上に置いてあるが、これは人の身長くらいあるかなり大きめの魚だった。


「じゃあ、それらを頂きます。アメリアさん、支払いを……」

「いやいやいや、ちょっと待て…!!」


父親はかなり焦っている。


「あ、お金はちゃんとお支払いしますので大丈夫ですよ?」

「エンド、先に見せてあげた方が良いんじゃない?」


さすがに娘さんの方も少し困惑しているみたいだったので、アメリアの言い分ももっともだと思い、お薦めされた魚を亜空間収納に収めた。

手をかざして突然消えた魚たちに、父娘は目を丸くしてびっくりしている。


「先に言えば良かったですね。亜空間収納を持ってますので、そこに入れてある間は鮮度も大丈夫ですよ?」

魔法鞄マジックバッグ……とは違うんですか?」

「魔道具では無いですね。そういう『スキル』ですので…」

「そんなのは初めて見たぜ!!」

「凄いスキルですね……」


父親が驚いてる横で、アメリアはうんうんと頷いている。


「まあ私が知らないくらいのスキルだからね。冒険者や錬金術師でもない人が知ってる訳ないわよね!」

「なんでアメリアさんが威張ってるんです?」


とりあえず目当ての物は手に入れたが、折角だから!とこの近くで美味しい魚料理の食べられる店を教えて貰った。


「俺の名前はボルグ。こいつは娘のナターシャだ」

「私は冒険者のエンドです。こちらはマルク支部のギルドマスターのアメリアさん…。私たちは素人なので色々教えて貰って助かりました」

「いいってことよ!ああ、道の向こう側、ほらあそこに赤い屋根の建物が見えるだろ?あれが『猫の鈴亭』っていう店だ。宿もやってるから、良かったら泊まっていくといい!ボルグに聞いて来た!って言やあ悪い様にはされねえよ!」

「ええ、ご丁寧にありがとうございます。ぜひ行ってみます」


ナターシャさんが気を利かしてお店の名前と、簡単な地図を紙に書いて渡してくれた。


「あの…アメリアさんはギルドマスターなんですね?じゃあ、エンドさんはマルクのギルドの冒険者ってことですか?」

「ええ、そうね。まだ冒険者になってから1週間も経って無いけどね?」


ナターシャさんは口に手を当てて「えっ!」という顔をしている。


「なんだぁ?まだペーペーじゃあねえか。…ああそうか、だからギルドマスターと一緒に来てるってわけか?」

「うーん、そういう訳じゃないんだけどね。彼のスキルがさっき見て貰った感じなんだけど、ちょっと特殊なのよね……そういう事情もあってあまり大ぴらにも出来ないのよ。で、要らないトラブルを避ける為に同行してるのよ…」

「なるほどな~」

「だから出来れば今日の事は、あまり他の人には話さないでくれると助かるわ。ちゃんとした形で情報を出す必要性はあるんだけど、悪用されるのは困るから」


アメリアの言葉に「ああ分かってるさ」とボルグは無骨に頷いた。


「うちとしても要らぬ争いを店に持ち込まれても困るからな。それに、はうちの良いお客さんになってくれそうだからな!大事にするぜ!」

「ええ、依頼があった時には必ず来ます!」

「おお、まいどありー!!」


俺はボルグとガッチリと握手を交わした。


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