第4話 ふたたび幼女神
「ただいま帰りました‥‥」
それから家に着いた俺は、家族にそれだけ言って自室に戻った。
その後も特に誰も部屋に来る気配がなかったのは、帰りの馬車の中で黙り込んでいた俺を見ていたタウロス兄さんが色々と気を使ってくれたんだと思う。
(職業が『無し』じゃなくて『無』っていうのは、どういう事なんだ?表記的には魔力もその辺は同じなんだよな~……。う~ん、分からんな‥‥‥)
ベッドに横になって自分のステータスを見ながら、色々と考える。
職業に関しては特に悲観はしてないし、生きていくだけなら‥‥まあ、何とでもなるだろう。
タウロス兄さんにだけは、馬車の中で一度俺のステータスを見せたが【加護】の部分は見えなかったみたいで、特に魔力の部分を見て酷く(俺より)ショックを受けているようだった。
「呼ばれて飛び出て、ドヤァ~!!」
夜になってベッドで俺が横になってると、どこからか聞いたことがある様な声が聞こえていた。
「あ、そういうの間に合ってます」
「まだ何も言ってない~!!」
「7年も顔を出さないで、今更ですか?」
「私も神として結構忙しいんですけど?なんか扱い、酷くない?」
そこには声の主である、俺を転生させた元凶の『幼女神』がいる‥‥‥はずであった。
「あれ?幼女、じゃない?」
体を起こして振り返ると、そこには20歳前後の大人の女性が立っていた。
「どうですか?本当の私の姿は?美しすぎて、声も出ませんか?ドヤァ~!」
何だろう……やはり何だかムカつく。
「で、今頃になって俺の前に現れたってことは、何か理由があるんでしょ?」
「おお、なかなか鋭いですね!流石は私が目を付けた魂だけありますね~!ドヤァ!」
「いちいちドヤらないと話せないのか、この神様は?」
「いえ、話せますよ?」
「‥‥‥‥はぁ」
「どうしましたか?疲れてるんですか?寝不足はいけませんよ?」
「アンタの所為だよ!!!」
と、慌てて自分の手で自分の口を塞ぐ。
もう夜も遅いのだ。
騒いでいると、さすがに家族に迷惑が掛かる。
「その理由とやらを聞きましょうか」
「はい、ではまず‥‥‥この『変化の腕輪』を渡します」
そう言って自分の腕に着けてあった腕輪を外し、俺に手渡してきた。
「これは?」
「それは『変化の腕輪』と言って、身に着けた者の見た目や声などをある程度変えることが出来ます」
「へえ…?」
何気なく違和感を感じて前を見ると、先ほどのナイスバディの女性は見た事のある『幼女』になっていた。
「おい!?」
「なんでしょう?」
「いや、なんでしょう?じゃねえ。何が『本当の私の姿』だ!てめえ、その腕輪で変化してただけじゃねえか!!」
「でも少しは嬉しかったでしょう?」
「た、確かに‥‥‥じゃなくて!」
「私に対する口調が段々辛辣に……ああ、これが仲良くなっていくという事なのですね?」
「違うけどな」
「いいんですよ。人間とは、好きになった相手に照れ隠しで意地悪をすると聞きます。私は寛大な神ですから、貴方のそれは親愛の情として受け取りますよ?」
「すげえポジティブシンキング‥‥‥」
しかし変化の腕輪か。
色々と使い道はありそうだが、それもこれからの課題だな。
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