第12話 取り引き
「石板の測定には間違いが無いわね…。そうなると…でも…」
またギルドマスターは腕組みをして思案している。
「あの…もう帰っても良いでしょうか?」
「もう少しだけ、ね?………職業はポーター、で間違いないのよね?戦闘技術があるようには見え無いんだけど、どうやって冒険者なんてやるつもりなのかしら?」
「あ、それはですね…」
言いかけながら、俺は亜空間収納から昼に食べようと思っていたサンドイッチを取り出してテーブルの上に置いた。
「という感じで亜空間収納が使えるので、それでやっていこうかな~って……えっ…?」
何処からか出したサンドイッチを見つめ、ギルドマスターはアングリと口を開けたままの状態で固まってしまった。
「え?今、どこから出したの?収納の魔道具を持っているの?」
「いえ、こうやって…亜空間収納から取り出していますが?」
もう一つ同じように、今度は飲み物を出してテーブルの上に置いた。
ギルドマスターは恐る恐るといった感じでテーブルの上に置いた、それらを手に取る。
「幻覚、じゃあなさそうね……という事は、本当に魔法の類よね。魔力の無い貴方がどうやってその魔法を使っているのかしら?」
「正直自分でも分かりません。『やってみたら出来た!』くらいの感覚でしかないので」
「『
(鋭いな。さすがギルドマスターをやってるだけあるな)
俺は内心の驚きを悟られない様にして、曖昧に相槌を打っておいた。
「どうなんですかね?あはは…」
「エンド、と呼ばせて貰うわね?私の事もアメリアと呼んでいただいて結構よ。それでエンド、単刀直入に聞くけど……貴方、ホントに只のポーター?」
「え…っと、そう…言われましても…」
「いい?職業としてのポーターや配達職などの職種は特に珍しくも無いのよ。でも決まってそういう職種は、他の職業に比べて魔力を多めに持っている。さすがに賢者や聖女みたいな上級職には負けるけどね。しかし貴方は魔力を持ってないばかりか、亜空間収納まで使えると言うんでしょ?そんなの人族以外でも聞いたこと無いわよ」
アメリアは大げさに肩を
「は、はぁ…?でも収納くらいは持って無いと、そういう職業は出来ないんじゃないですか?」
「そこからなのね?まあいいわ‥‥‥それで?この情報を知っている人はどれ位居るのかしら?」
「いや、アメリアさん…だけですかね?シンディさんは魔力無しだとは知ってると思いますが、亜空間収納は教えてませんから」
「へぇ、それは良かったわ。ならまだ情報を操作しやすいわね?」
(別に知られて困る様なもんなのかね?魔力無しだって分からなければ大丈夫だと思うんだけどな~)
「ねえエンド…?私と取り引きをしない?」
「取り引き、ですか?」
「ええ、貴方の素性は気になるけど詮索はしないし、もしそれで何か不都合があれば私に言いなさい。力になると約束するわ!」
「私に魔力が無い事はギルド内で広まる事は無い、という事ですか?」
「現状、私とシンディしかその事実を知らないのであれば、何ら問題は無い筈よ。ただ、ギルドカードを提示した時に魔力の数値が見える可能性があるから、その辺は自分で注意してもらう必要はあるけどね」
「なるほど…、それで取り引きの内容は?」
脚を組み替えたアメリアの口角が上がる。
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