第13話 取り引き②

「取り引きと言ってもそれほど難しい事じゃないわ。荷物をね運んで貰いたいのよ!」

「アメリアさんが個人的に、という事ですか?」

「個人的にというよりは、私からギルドを通して依頼したいって感じかしら?まだエンドのランクでは指名依頼は出せないし、受けられない。ただ内容が内容だけに、どちらにしても貴方に頼まざるを得ないのよ」

「…どういう事でしょうか?」

「亜空間収納、と言うからにはその中に入れたは停まる。と考えても良いのよね?」

「おそらくは…。さっき出した飲み物は冷えているでしょう?」

「良いわね……最高よ!」


アメリアは、未だテーブルに置かれた飲み物を一口飲み笑顔でそう言った。

おそらく、とは言ったものの亜空間収納内の時間が停止している事は既に確認済みだ。


「ちなみに収納量ってどれくらいあるのかしら?」

「さあ?」

「えっ?大体でいいわよ?」

「そうですね…、湖の水は全部入った事はあるんですが、その時もまだ余裕はありましたから‥‥‥。はどれくらいか?と言われると……、すいません分からないですね」

「あ、そ、そう…。湖の、ね。た、って事で良いのよね?そうよね?」

「はい、容量はあるので普通の依頼なら大丈夫だと思いますよ」

「そ、そうね…まあまあ、入るわね・・・あは、はは……」


(もっと容量が多い方が良かったのかな?今度機会があったら調べてみるか)


「あの、それでそのお仕事とは?」

「あ、ああそうね!ごめんなさい、ちょっと放心してしまったわ」


アメリアは一度立ち上がると、自分の仕事机から一枚の紙を持ってきた。


「これを見てくれるかしら」

「開催…?パーティーの案内状ですか?」

「ええ。マルクを治める領主、フルートゥ・パフェ伯爵の娘、ホワイトゥピーチ・パフェ嬢の誕生日パーティーのね。一応、私もギルドマスターという立場上送られてきたの」


渡された紙に目を通す。

(へえ、結構な規模で開催するんだ)

日時も書いてあるが、今日から数えて5日後だ。


「伯爵自身は人格者でとても優秀な、この領地にはなくてはならない人よ。でも娘の方は何というか、我がままなのよね。一人娘だし、伯爵もことほか可愛がっているのだけどまあ、そうなると大体は周りの者が大変な思いをする事になるのよ。その辺は察して頂けると有難いわ」


良くある話だ。

社長や専務の縁故で会社に入って来た新人みたいなものか。

ギルドマスターとはいえ中間管理職みたいな苦労があるのか?


「で、その伯爵様からギルドへ『依頼』があってね」


『娘の誕生日パーティーに娘の好きな海鮮料理を出してやりたい。ついては何とかその日の晩餐に間に合うように新鮮なモノの調達をお願い出来ないであろうか?依頼料は多少高くなっても何とかするので、ギルドマスターの力で宜しく頼む!』


(うわ~、すでにそれもう脅迫だよね)


「へぇ、伯爵の娘さんは海鮮が好きなんですね」

「ハークワイデン連合王国へ視察名目の旅行へ行った時に食べた海鮮の味が忘れられないんだそうよ。ここから一番近い港町はエドラゴンだけど、馬車で3日は掛かる。早馬ならもう少し早いけど、荷物がほとんど積めない」

「ああ、なるほど。それで私がエドラゴンへ行って……という事ですか?」

「頭ハゲるくらい考えたんだけど、良い案が浮かばなくて…。お願い!!」


アメリアが俺に手を合わせている。


「良いですよ。それくらいなら」

(出来るのに断る理由もないしな。まあ魚運ぶだけだしな)


どちらにしても一度帰ってニコラウスに相談しよう。



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