第6話 ふたたび幼女神③

「付与魔法や錬金術なんかはどうなるんだ?」

「スキルに属性自体は無いですけど、スキルとして、つまりはそういうするものに関しても、恐らくは扱えないですね。テイマーでも同じ様な理屈になりますので、使役出来ませんね多分…」

「なんだ、神でも分からない事があるんだな?」

「いやいや、職業が『無』なんて人間は、この世界どこ探しても居ませんからね~!あ、痛っ、痛い…頭潰れちゃうから~!!」

「誰の所為だと思ってるんだ?!」


概ねは把握出来たが、どちらにしても実戦でどれだけ使えるかは使ってみないと分からないか…。それは仕方ないな。


「大体の事は了解した。で?こんな能力を俺に与えた理由があるんだろ?本題は何だ?」

「えっ?」

「えっ?」


二人してバカの様に顔を見合わせている。


「ありませんよ、そんなものは」

「ないの?魔王と闘えとか、天の厄災から世界を守れ!とか?」

「ないですね」


あっさりと否定された。

本当にそんなものは存在しないようだ。


「そもそも魔族と人間は仲が悪い訳でもありませんし、厄災と呼ばれるような魔獣は勇者とかがランクの高い冒険者と団結して倒したりしますからね~。貴方がその能力をどう使うかは知りませんが、貴方自身が戦う必要性はこれっぽっちもありませんよ?」

「そうなんだ‥‥‥」

「はい。だから貴方は自分の好きな様に生きてくだされば結構ですよ!あ、類稀たぐいまれな空間収納の能力を活かして、ギルドに登録して荷物持ちとかどうですか?重宝されると思いますよ?」

「に、荷物持ち?ってか、職業勇者って存在するのね‥‥‥」

「ええ、聖女も賢者も職業で存在しますよ!」


にこやかに幼女神は話しているが、まあこれが異世界リアル?なのだろう。

生きていける糧が見つかっただけマシか?


「‥‥‥そろそろ時間のようです。ではまた7年後くらいに…」

「いや、蝉の幼虫かよ!!」


職業がどれくらい存在するか分からないが、学校や図書館くらいはあるだろうから自分で調べるしかないか。


「貴方とお話しするのは結構楽しかったですよ」

「そりゃどうも」

「最後に‥‥‥」


幼女神が不意に俺の右手を取り、自分も近づいてくる。

そして俺の頬にキスをした。


「貴方の行く末に幸あらんことを」

「ああ、ありがとうよ」


そして、幼女神はすうっと消えていった。





翌朝、俺は家族の前でステータスを見せた。

みんなかなり驚いていたけど、特にこれといって混乱も無かった。


「あ、でも魔法が使えないという事ではないんだ。見てて!」


と言い、皆の前で浮遊魔法で飛んで見せた。

父親が「天才だ!」と叫んで抱き着かれたり、職業剣聖であるサンドラ姉さんが「私が最強の剣術を教えてあげる!空から攻撃できるなんて凄いことになるわ!」と興奮していたり‥‥‥。

浮遊魔法だけでもこれだから、亜空間収納は見せないでおこう。

いずれ伝える必要があるかもしれないが、今はまだいいや。



前世で『無』に支配されて生きていた俺は、この世界で本当の『無』を手に入れた。

生き方は…『無』限だ。



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