第22話 報酬
「何だか多くないですか…?金貨150枚?たった一回の依頼ですよね?」
ニコラウスに教えて貰っている市場価値では、確か貴族じゃない市民の一カ月の平均生活費は金貨2枚で十分のはずだ。
騎士になると月に金貨8~10枚くらい貰えると言うから、150枚が如何に多いか分かる。
「多くないわよ?冒険者はいつも命がけなんだから、それ位は貰わないと割に合わないでしょ?」
「命は掛かってないですが…?」
「それは貴方だからでしょ?!そもそも、空を飛べるだとか転移魔法まで使えるとか知らなかったんだし……。でも、これで冒険者エンドの名前は貴族の間で知られてしまったと思っておいてね?」
「まあ、それは仕方ないですよ…」
それは隠しようも無い事実だが、俺的には問題無い。
エンド、という人間は本来この世界に存在しないのだから。
本当にヤバくなったらエンドという人間はこの世界からいなくなる、それだけだ。
「何も命がけっていうのは冒険だけじゃないからね?ある意味、人間の方が面倒くさいし厄介なモノよ。今回は、それの先払いってのも兼ねているわね」
「それなら、まあ、断るのもなんだし…有難く頂きます」
「ええ…ギルドランクについては、さっき言った厄介なモノに対抗する手段にもなるはずだから、ちょっとでも早く上がって欲しいのよ。ギルドとして…」
「そうですね、目で見えた方が抑止力にはなり易いですよね…確かに」
「そういう事よ……本当はゴールドランクまで上げられたら良いんだけど、ゴールドに上がるには討伐依頼を必ず
冒険者のゴールドランクは、国に所属する騎士団の副団長ほどの実力がある者が多いと言う。
指名依頼もゴールドランクなら自分でやるか、やらないか選べる権利もあるらしいから、やはりガーネットランク以下とは一線を画すのであろう。
「そこはどちらにしろ、自分で気を付けないといけないので仕方ないですよ」
俺は大げさに肩を窄めてみせる。
「そ、それでね……あの、今回は私の我がままみたいな依頼に付き合わせてしまったし、貴方の名前を大きく広めてしまったお詫び、というか……」
アメリアが指をもじもじしながら続ける。
「私からも何か報酬をあげたいかな~、なんて思ってるんだけど……エ、エンドは何かお望みはあるかしら…?」
「アメリアさんから……ですか?」
コクコク、とアメリアは首を縦に振っている。
「じゃあ、アメリアさんの時間を一日下さい!私はこの世界に生まれてから、あまり世間を知らずに育ってきました。特に冒険者になってからは初めての事だらけで、すごく充実した日々を送っています。なので、もし良ければアメリアさんから初めての体験を色々とご教授して貰いたいのですが…これが報酬では駄目ですか?」
「わ、私が……貴方の、初…めてをかしら?」
「ええ、アメリアさんなら信頼出来ますし、色々と経験も豊富そうですから!」
「!!? そ、そうね……ちょ、ちょっと気持ちのせい……時間の調整が必要だから、また日にちは改めて決めても良いかしら?」
「もちろんです!」
(よし、これで職業とか他の国の情報なんかを聞く事が出来るな。できれば勇者の話しも聞きたいし、ギフトとかも聞けたら……)
そんなエンドの気持ちを知る由もなく、アメリアはショート寸前の頭の中で、自分の仕事の予定なんかをアレコレと考え始めるのであった。
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