第15話 お土産

「お、あれだな?」


適当な速度で飛ぶこと約3時間。

前方に水平線が見えてくる。

その手前にキレイな石造りの家が立ち並ぶ町が見えた。


「いきなり町の中で座標指定マーキングはしない方が良いよな」

という事で、町の見える近くの森の中で地上に降り、座標指定マーキングした。


「時間的にはゆっくり散策したいところではあるんだけど…まあ当初の目的は果たしたし、大人しく帰るかな。と、そうだせっかくだし……」





シュ…ン!!


3時間ぶりにマルクへ戻って来た俺はギルドへ行った。


「シンディさんこんにちわ」

「あ、エンドさんこんにちわ。どうされましたか?」

「すいません、ギルドマスターにお会いしたいんですが」

「はいマスターですね、少々お待ちください」


ペコリと小さくお辞儀をしてから、シンディさんは奥の階段を上がって行った。

程なくしてアメリアと共に降りてきた。


「エ、エンド?どうしたのかしら?何か問題でも発生した?」

「そんなに慌てないで下さい。ここでは目立ちますので……」

「そうね、じゃあさっきの部屋へ行きましょう」


再びギルドマスターの執務室へ入る。

3時間前に座っていたソファに座る。


「あの、どうして隣りに座っているんですか?」

「まあまあ、そこは気にしなくても良いじゃない。それで、何か問題があったんじゃなければ、どうしてギルドにまた戻ってきたのかしら?」

「これを…」


テーブルの上に小さな貝で作ったブレスレットを置いた。


「これはエドラゴンへ行った証拠のお土産です。アメリアさんに似合うかなと思って買ってきました」

「これを、私に?」

「はい。それと、町の近くに座標指定マーキングしましたので、いつでもエドラゴンへ行く事が出来る様になりました」

「本当に?」


アメリアはテーブルの上にあったブレスレットを手に取り、嬉しそうに微笑んでいる。


「ここへ戻って来たのはもう一つ理由がありまして…。実は、私は冒険者として活動出来る日が6日の内、1~2日しかありません。理由はちょっと言えないのですが……すいません」


この世界の一年は360日。

1週間は6日で5週で1カ月。

12の月で一年が周っている計算だ。


「そうなのね。構わないわ…それこそ冒険者の自由だもの。何処に住んでいる……いえ、それも詮索しないと言ったわよね。ごめんなさい」

「いえ、ご配慮ありがとうございます」


それだけ言って腰を上げようとしたところで…

「あ、忘れてました!伯爵の晩餐の件ですが、前日に町へ買いに行けば間に合うと思いますので、私と一緒にエドラゴンへ行きませんか?」

「わ、私も一緒に?」

「ええ、その方が買う物も分かり易くてスムーズですし、二人で選んだ方が楽しいと思いまして…」

「あ、貴方が良ければそれでも…い、良いわね」

「じゃあ4日後にまた、ギルドに来ますね」


出ようとして気付く。

「もう一つ忘れてました。これ、持っていて下さい」


短いチェーンが付いた四角い水晶の様な鉱石。


「これ…は?」

「これは私が作った『魔力で光る石』です。アメリアさんの魔力を流して貰えれば、緑色に光るはずです」

「こう、ね…」


確かにその石はアメリアが魔力を流すと淡く緑色に光った。


「私も同じ物を持っています。もう一度、それに魔力を流して貰えますか?」


するとアメリアが持っている物と同じ様に、俺が持っている石も淡い緑色に光った。


「個人の魔力波長に合わせて光る色が違うので、私にも誰が魔力を流したかが分かる仕組みになっているんです。何か用事がある場合は、これで合図を送って下さい。すぐに対応出来るかは分かりませんが、可能ならば此処に来ますので」


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