12話 真の始まり
フライトが来て1年、つまり俺は6歳になったと言うことだ。
最近自分にも武器という物が欲しいと思うようになってきた。
理由は簡単。
魔術師は近距離での戦いが弱いという弱点があるからだ。
魔術ほど極めたいとは思わないが、必要最低限使えて損はないだろう。
このことを相談したら、フライトが一緒に買い物に行こうと言ってきた。
断る理由もないので、共に行くことにする。
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武器屋に着いた
「それで、テクトは何を買いたいんじゃ?」
「まだ近距離戦向けの武器ってこと以外は決めてないんですよね」
「そうか...なら、これはどうだろう?」
見せてきたのは
「これって絶対使うの難しいじゃないですか」
「それが慣れたら自分の体の一部のような動きができるんじゃよ。そこで見てくれ」
そうして見せてきたのは華麗な三節棍さばき。
でも店の中では謹んで欲しいな...
だがこんなドヤ顔をされると、褒めるしかないじゃん...
「すごいです!昔使ってたんですか?」
「あぁ、……騎士団で働いてた時に少しな...」
フライトは良い顔をしなかった。
まずいことでも聞いただろうか?
「僕あっちの方見てきます!」
「あぁ...」
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武器が多すぎるせいか、全然決まらない。
興味をそそられたのは、手甲鉤やウォーサイズ、フランベルジェと言ったものだが、実際使うとなったら、別だろう。
使いやすそうな普通の剣か、持ち運びやすい短剣のどちらかになりそうだ。
まぁ今すぐの必要なのではない、家に帰って色々調べ買えばいいだろう。
今日はウィンドウショッピングになりそうだ。
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「おじいちゃん終わりました!今日は買いませんけど、剣を買うことになりそうです」
「剣か...それは良い。なにかあったらワシが教えてやるぞ!」
その後は少し甘いものが食べたいってなったので、喫茶店に行った。
ちょうど食べ終わり帰っている最中。
「お母さんと師匠って、小さな頃から共に過ごしてきたんですよね?」
「あぁ、小さい頃は可愛かったんだがな、今ではもう大人になってしまった。仲が良く姉妹みたいな感じでな、ママと一緒に育てたんだが、二人とも問題児で手がかかる子じゃったわ」
ママ?
俺のおばあちゃんに当たる方だろうか?
フライトが来て一年経ったが、一度も話に出てきたことがなかったので興味がわいた。
喧嘩でもしているのだろうか?
「おばあちゃんって今どこにいるのですか?」
「…………言って無かったのう……おばあちゃんはもういないのだ...ニナは殺された」
自分の失言に気付いたが、もう遅い...
自分の祖母が亡くなっているなんて考えたことも無かった...
「テクトよ...少し老いぼれの話を聞いてくれないか?」
「……もちろんです...」
その後フライトは止まることなく、淡々と話していった。
話しているときの口調は普段とは違く真剣さを感じた。
俺も黙って聞いておく。
「ワシが生まれた家は、人国内でも有数の権力を持った家庭だった。
ワシは生まれた時から、魔術と体術の才能があったのじゃ。
才能があるからと言って鍛錬を欠かしたことはなかった。
そんな中ワシは齢30にして騎士団の団長になるのと共に、家の方針により、結婚相手が決まった。
それが、妻サナとの出会いじゃ。
ワシは跡継ぎが生まれればそれでいいと思っておってな、最初は話かけてくる度に鬱陶しくて仕方なかった。
浮気も何度したか分からない。
サナはそんなワシのことを愛してくれた。
そんな知らないとばかりにワシは天狗になって、知らずに好き勝手しておった。
今考えたら最低な人間だった。
その認識が変わったのはサリーが生また頃だ。
ただ血がつながってるだけの女のはずだが、不思議と可愛く見えるのじゃよ。
さっきも言ったが、リサとは小さな頃から仲が良くな、二人が可愛くて仕方なかった。
サリーという存在に俺は厳しく接したが、親心と言うのか、愛情と言うのかは分からないが、間違いなく俺に人間味をもたらしてくれた。
子供が可愛く見えるにつれ、これも不思議とサナに対し好意が芽生えてきた。
遅いと思われてもしょうがないがな...
だが、この時にサナのことが好きになったのは間違いない。
サリーが生まれて3年後、息子が生まれた。
強い男になって欲しかったので、ストロンと名付けた。
ワシは跡継ぎが生まれてうれしく思ったが、その頃ぐらいにサリーの魔術の才能が異常であることのが分かり、サリーが継ぐ可能性もあると思うようになった。
ワシに似たのだと思う。
娘、息子ができワシの人生には今まで感じたことない幸福でいっぱいだった。
その後の7年間はな。
今から約15年前だろう、サリーが10歳の頃だったはずだ。
その頃ワシは騎士団所属
よって、ワシだけ王宮に住むことも少なくはなかった。
今リリシア殿が住んでいる城じゃ。
事件が起こった日もワシは王宮にいた。
王不在であるはずの天国が、天使軍を率いて奇襲をしてきたのだ。
その時は大雪の夜だったはずだ。
急なことに、騎士団の対応も遅れた。
よって天使軍達は女、子供関係なく一方的な虐殺を行った。
王都は混乱の嵐だった。
家族が心配だったがその時のワシは家族と王を
その晩は急なことで対応が遅れたが、2日目以降はワシら人間も対抗していき、寝る暇もない混戦状態が続いた。
戦いは4日ほど続いたのちに天使軍は数百人の天使を残し、撤退をした。
ワシはこの4日間王の護衛を務めきった。
戦いが終わり次第、ワシは信頼している同僚に王を頼み、急いで自分の家に戻った。
家族が無事なのか心配で仕方なかったのだ。
4日の戦いに耐えれるわけもなく、街は崩壊しきっていた。
どこを見ても人間と天使の死体で溢れている。
家の前に着いた。
最初に見えたのは何百、何千いるだろう天使の死体の山の上に立つ、傷だらで全身が血で染まるサリーとリサの姿...
二人はワシの姿を見次第
『ごめんなさい』
と泣き喚いた。
普段強気で、泣く姿など見せたことなどなかった二人がだ。
そのままサリーが続いてこう泣き叫んだ。
『母さんとストロンを守れませんでした』
10歳であろう年齢の人間が母親と弟を守れずに悔しがり、泣いている姿を見て、ワシも涙が出てきた。
落ち着いたのちにサリー達と共に王宮に戻ると、ムラマサ様が殺されていた...
ワシが10年間過ごし、信頼を置いていた同僚は天国の回し者だったのだ。
その後ワシは同僚も天使の残兵も一人を除き仕留めた。
その一人残した天使に拷問し、王都襲来の理由聞くと。
『三神の魔眼を探していた』などと意味の分からないことしか言わなかった。
その後こいつも殺した。
以上がワシの話じゃ」
話が終わるのとともに、ちょうど家に着く。
そんな事件があったことを知らなかった俺は、不甲斐ない気持ちでいっぱいになった。
「まだ少し話したいことがあるのじゃが、ワシの部屋に来てくれぬか?」
もちろん聞く
---フライトの部屋---
「さっきの話の続きじゃ。その後、ムラマサ様の息子であった、今の人王ガイア様が王を継いだのだが。あの方が優秀で強いことから、今のこのテストキアがあるということじゃ」
なるほどな。
ながい歴史があったというわけだ。
「長くなったが最後にテクト、お前に言わなければならないことがある」
前置きをしてきた
「間違いなくこの数年の間に世界中を巻き込む戦争が起こる。いや、起こるのではないな、5000年間停戦状態だった”魔天聖戦”が始まるのだ」
魔天聖戦は俺も知っている。
6000年前に始まり世界中を巻き込んだ戦争のことだ。
魔王ルシファーと天王ミカエルの戦いから大きくなった戦争が、1000年続き、両者の相打ちで停戦になったとか。
だがどっちも死んだからもの始まらないだろうと思っていたのだが。
「なんでいきなり始まるんですか?」
「ワシは妻と息子を失ってから、10年ほど世界を周り、歴史について調べた。
なぜあいつらがこの国を襲ったかが知りたかったからだ。
理由は簡単だった。
ミカエルを生き返らせるためだ。
人間の寿命は短い。
だからこそ広まってないのだろう、奴ら悪魔、天使、魔族は”生還”と言う魔術がある。
原理は詳しく知らないが、自身の配下が何千年もかけ、死んだはずの肉体をもう一度作り出し、その完成した肉体に魂が宿ることによって生還を遂げるらしい。
普通死んだ魂は成仏するか、幽霊として残るのだが、その両方をしない魂は普段、”裏世界”と言った場所にいるらしい。
強い魂でないと存在することすら許されない場所だ。
こっちの世界を現実世界とでも言おうか。
魂が裏世界にいっぱいになり、現実世界と裏世界の障壁が耐えられなくなり崩壊する。すると今まで裏世界にいた魂が現実世界に戻ってくるというわけだ」
地震の様なものだろうか?
「その裏世界と現実世界の障壁が崩壊するのが、ここ数年以内に起こる」
フライトが言いたいことが分かってしまった。
「つまり、軽く見積もってここ7000年程の歴戦の強者が復活を遂げ、近き未来に混沌の時代が始まる。その時対応ができないなどは、あってはならぬ事だ。あんな思いは二度としたくない」
フライトが大きく息を吸った。
「テクト、ワシと共に戦ってくれ」
いきなりそんな大きなことを言われても返答に困る...
「ワシは王も妻も息子も国民も守れなかった...自分でもクソみたいな人生だと思う。今この国には強い人間が多くいる。だから今始めたらまだ抵抗できるのだ、まだ間に合うのだ!ワシらの第で聖戦を終わらせたい」
「このことを知っている人は?」
「いやテクトが一人目だ。この家に来た時ワシはもう諦めていたのだが、この1年お前をみて、ワシの直感でまだ諦めるなと感じてな...だから頼む」
ここまで言われて断る奴は男じゃないだろう。
それにフライトを見てると死ぬ前の後悔しかしなかった俺を思い出す。
「もちろんです!」
「ありがとう.......」
何年も独りで抱え込んでいたのだろう...
あまり泣き顔は見てほしくないだろう。
よって部屋を出る。
数分してまた入った。
すると、フライトが棚から剣を取り出す。
「テクト、この剣を受け取ってくれぬか?」
「この剣はどのようなものでしょうか?」
「結婚祝いでサナがくれたものだ。その頃は要らぬと思い、部屋の隅に置いてあったものなのだがな...今ではワシの宝じゃ。ワシは剣を使わないのでな、テクトが使ってやって欲しい」
「当然です!」
鞘が付いたまま受け取る。
見た目は皆が想像する剣そのものだ。
重っ...
まだまだ体を鍛えないといけないな
それと大事にしないと。
俺はこの剣に聖戦の終結を誓った。
第1章完
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