魔力総量は無限大!~終わりなき聖戦を終わらせるのは俺だ~

コヤッキー

プロローグ

00話 終わりそして始まり (面白くなるのは二章から!)

 いつからだろう、自分の人生がこんなも楽しくないと感じ始めたのは。

 

 今思うと、俺は生まれた時から操り人形だった。


 俺が生まれた家は大企業の家系で小さな頃から両親は俺に厳しかった。

 15まではまだ自由があったんだけどね......

 子供の頃には、小学校・中学校・高校・大学・習い事・仕事先、といったすべてのことは両親が決めていて俺はただただ与えられたカリキュラム受けるだけの生活。

 幼い頃はそれに疑問などは抱かなく母、父が言ったからと割り切っていたし、その頃は自分の行動で二人が喜んでくれ、その姿を見るのが好きだったから頑張れたんだと思う。


 この生活に疑問を持ち始めたのは15の時である、兄が失踪したのだ。

 兄は優秀だったのだ、優秀だからこそ周りかの期待がどんどん大きくなり耐えられなく家から逃げたのだろう。

 今考えると兄の気持ちは痛いほど分かるよ...


 兄の失踪をきっかけに兄に重圧していたものがすべて俺にかかってきた。

 それまでまだ優しかった両親は消え、兄の代用品としか俺を見てくれなかった。

 そして俺の自由は完全に消えていった。

 けれども俺は兄のように優秀ではない。

 周りは俺を兄と比べて失望の目を向けてくる、肉体的、精神的にもきつく毎日涙した。

 死のうと思ったことは多々あったが、それでも俺が死ななかったのは、俺が今死んだら兄が逃げた時の俺のような人間が生まれてしまう。

 こんな思いをするのは俺だけでいいと綺麗事を思っていたからだ。


 (本当は色々理由つけてるだけで、死にたくないだけなのかもしれない。

  こんなクソみたいな人生でも生きたいんだよ...)



 それから10年。俺はもう25歳、順調にエリート街道を進んでいった。

 だが変わらず俺の人生は全然楽しくない。

 楽しい生き方をしたい、自由に生きたいといつも考えていた。


 (考えてもどうせ叶うことはない。今はパーティーに集中だな)


 今俺は父と関係が深い社長さん開催の社交パーティーにいる。

 俺は父の付き添いだ。

 俺はやることがないのでほんとに暇。


---



 「ぉ、ぉぃ、、、、お~い、何寝てんのよ明、」


 ……座ったまま少し寝ていたようだ。

 声の方を見ると有栖ありすが立っていた。

 名前は鬼龍院有栖。


 有栖は俺の幼なじみで口は悪いがなかなかに優しく、困ったときには色々と助けてくれる。

 それと数少ない、俺が本心で語れる人だ。

 そして俺が唯一……。


 「少し眠いだけだよ」

 「それでも今寝る~?いちお、お偉いさんたちいっぱい、いるんだよ~。」


(有栖と話すときは遠慮がなくて楽だ、それにこいつまた綺麗になってるな)


 「後で父さんに説教食らうかもね、でもここにいる人たちは俺に興味すらないよ、」

 「…………私は興味あるけどよ~」


 (一瞬天使に見えた)


 それから色々話していたら終わりの時間が近づいてきた。


 「そろそろパーティーが終わるな、今日は久しぶりに話せてよかったよ!楽しかった」

 「ありがと、私も楽しかった。最近二人とも忙しくて話せないもんね、それとさぁ、…………うぅん、やっぱいいや……」

 「大丈夫?どうかしたか?」

 「何でもないよ~、それと明、今まで色々ありがと……それじゃ、またね」


 (??顔色が悪いし、少し何かが引っかかるがいつものことだろう)


 「あぁ、またな」


 そして有栖とは別れた、


 俺は少し父を待つことにした。

20分ほど待った頃だろう、近くに有栖の執事である斉藤さんと使用人たちが顔が真っ青にして話していたので耳を傾けると少し不穏な会話が耳に入ってきた。


 「なんで有栖お嬢様がいないんだよ」「早く見つけないと俺らクビなるぞ」「ちょっと外探し行くわ」


 咄嗟に声が出た。


 「斉藤さん、有栖がどうかしたんですか?」

 「明様………少し問題がありまして、ぉ、お嬢様がいなくなられてしまって、先ほど明様と一緒にいられたところまでは見ていたのですが急にいなくなってしまい、ビル内を探してみたのですがどこにもいず......屋敷のほうにも電話したのですが帰っておらずのこと...」


 !!!!!?


 「見つけ次第俺に連絡ください、、、」


 足が勝手に動き出していた。

 今、有栖を見つけないともう一生会えない気がしたんだと思う。


 (何で今消えた?どおりで様子がおかしかったのか?)


 ビルを出たら、辺りはもう日が沈んでおり暗くなっていた、

 あいにく、ここらは有栖と俺が15歳になるまでは一緒に遊んでいた場所だ。何がどこにあるかなどはわかるが、、、

 

  

---



 1時間ほど走り探し回ったがどこにもいない...

 斉藤さんからの連絡もこない。

 万事休すというのはこのことだろうか?

 体力的にきつく、公園のベンチに座っていると、ふと、涙が出てきた。


 (もう周りがいなくなる嫌なんだよ...もう無理なのか...さっき言いたそうだったことを聞いてたら変わってたんじゃないのか...)


 ふと記憶がよみがえってきた。


 (懐かしいなこの公園じゃないけど昔はよくあの...)


 ふと、思い出した。


 名前は覚えてないが二人でよく行ってたあの公園。

 リスの形をした大きな滑り台がある。

 海が近くある、電車が横を通るので、行くなと言われたが親に秘密で何度も行ってたあの公園を...


 もうすでに1時間以上走った俺の体力はとっくに尽きていて、速くは走れなかったが必死に体を動かしやっとのことで着いた。


 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、うっ...ふーーーぅ」


 (久しぶりの運動はきついな。俺も、もう歳かな...)


 時刻は11時頃、辺りを見渡すとリスの滑り台の上で体育座りをしている有栖が見えた。

 そっと近づいたが、気配を感じたのか、一瞬こちらを見てきた。


 泣いていた...


 「有栖~、大丈夫か、、、、?」

 「………………」


 返事はない、泣き止むのを待つとしよう。



---



 「大丈夫よ...、女の子にはね...色々あるのよ...」

 「何か悩んでるからこんなことしてるんだろ?俺が聞いてやるから、今思ってることを俺に吐けよ」

 「……………………、私ね...結婚相手が決まったの、それでね、、ちょっと...」


 (そういうことか俺も少し...いや大分ショックだ......)


 「幼いときから、その覚悟はしてただろ?」

 「ぅ、うん、でも昨日いきなり言われたし、初めて見た人だったし、20上の人なんだよ...それでどうすればいいか分からなくなっちゃって...逃げだしたんだとおもう...」

 「有栖の気持ちは痛いほど分かるよ。でも俺たちは生まれたときから操り人形だよ...俺だって何度も死のうと考えた、家から逃げようともしたさ。でも今は頑張ってる。だからさ有栖も一緒に頑張ろうぜ。結婚もそんなに嫌なら俺が親に苦言してもいいよ。だから今は家に帰ろう!」


 (俺がどうにかできることではないが、今は有栖を家に帰らせることを第一に動く)


 「……………………わたしさ……、明のこと……結構好きだよ。明は私のことどう思う?」


 !!!!?


 (はぁぁぁ?急にこいつは何を言ってるんだ...これは素直に言った方がいいのか?いやこんなチャンス絶対にもうこないだろう。素直に言うとする)

 

 「俺も有栖のこと好きだよ!、困った時に助けてくれる、俺をからかってくる、相談に乗ってくれる、そんな有栖が世界一好きだ」


 (言葉が自然に出たが、何言ってんだ俺...普通にキモい、少し過去に戻りたい...)


 「フフフ、あっ、ごめん笑っちゃった、あんたが必死すぎて。でもうれしいわ、あんたがそう思ってくれることが。」

 

 反射的に声が出た。


 「もし有栖がいいなら付き合わないか?」


 (有栖は驚いた顔をした、まぁ当然の反応だな、普通こんなこと言わないもんな)


 「ぁ、あんたがいいなら...付き合ってやってもいいわよ...」

 「ぇ...まじ?はっ、これは夢か......」


  すーっと目から涙が出てきた


 「何泣いてんのよ、あほ...」


 (それから少し静寂が続いが、もう12時頃だ俺が有栖を家に送らないと。なんたって有栖は俺の彼女だからな)


 「帰るか?」

 「うん、」


 スマホで斉藤さんに有栖を見つけたから、屋敷に送ると伝えて、雑談をしながら二人で帰った。


 それから無事に有栖を家に届けた。

 鬼龍院家に着くと一家勢揃いで待っていた。

 有栖の両親は最初、憤慨していたみたいだったが無事だった様子を見ると緊張した空気が抜け有栖の両親、斉藤さん、使用人たちが皆が涙している異様な光景ができあがった。


 俺は泊まっていけと誘われたが特に用がないのでそのまま家に帰ることにした。

 時刻は1時。

 30分ほどで家に着くだろう。


 (今日は疲れた、色々濃い一日だったわ、それに、有栖と付き合えたのはいいけど、親になんて言おう...まぁなんとかなるか、ようやく俺の人生にバラが咲いたんだ!)


 ふとスマホを見てみると、親からの連絡は一つもない。


  (まじで俺に興味がないんだな...今に始まったことではないが少しショックだ...まぁ今日は付き合えたことで満足だ、父のことなんて考えん)


 とぼとぼ道路を歩いてると少し先に、道の真ん中で横たわってる人間がいた。


 (ホームレスか?まぁ帰ってもいい気はしないし、危ないから少し声をかけるか)


 肩をたたき声をかける。


 「あのぅ、大丈夫ですか?」

 「ぁあ?寝てるだけだ、これ以上話しかけたらお前殺すぞ。今俺はイライラしてんだよ」


 (口が悪いな、だが慣れてるし、こういう人間には厳しく言わないと、あとあとこの人自身が困るだろう)


 「心配して声をかけた者に対して言う言葉じゃないですね。それにこんなところで寝るなんて車に轢かれますよ。轢かれるあなたは良くても轢いた本人からすると冗談じゃない。」

「お前何様だぁぁぁぁぁ?話しかけたら殺すと言ったよな、それにお前どこかの富豪か?ずいぶん高そうな服を着てやがる、俺がお前の金を有効活用してやるよ、」

 


 ドスッ!



 !!!!!!!!!!!!!?



 その瞬間俺はホームレスにナイフで腹を刺された。


 「かッハ...」


 (は?どこからナイフを出した?まずなんで刺された? てか、こいつ頭のネジが飛んでんだろ...)


 こいつから逃げたいが体が痛すぎて動けない。


 逃げれずにいる俺にこのホームレスは容赦なく追加で刺してきた。


 ドスッ!ドスッ!と二度


 てか、痛い、それに熱すぎる、腹が熱くて仕方ない。


 叫びたいが口から溢れ出る吐血がそれを邪魔する。


 「ククク、くっっくく、はっははははは、ぉ、お前が俺の睡眠の邪魔をするから悪いんだからな、今日俺はなあぁぁぁ、家族も仕事も金もすべて失ったんだよぉぉ、俺の何がぁぁぁ...」

 

 まだ何か言っていたが意識は遠のいていく。


 それにこいつの雑談を聞いてる余裕はない。


 血が全然止まらない、地面が辺りいったい俺の血でそまっている、そりゃあ三カ所刺されてるんだ当然か...


 先程まで全身熱かったのに対して今は寒くなってきやがった。

 俺の体は忙しいな...


 視界が暗くなっていく...


 (死にたくねぇよぉぉぉぉ、でも.......これは死ぬな.........)

 



 そうして九十九つくも 明という一人の人間は自由を体験せずにあっけなく死んだのだ。




---




 俺は何を間違ったんだ?普通に注意しただけじゃないか...

 俺は正しい行動をしたんじゃないか?


 つくづく俺は運が悪いな...クソみたいな家に生まれてきてホームレスに刺されて死ぬという、100人聞いて100人意味が分からないであろう死に方...

 

 有栖の家に泊まっておけばよかった...

 ホームレスに注意なんてしなければよかった...

 家なんて早く逃げてればよかった...

 親の言うことなんて聞かなければよかった...

 

 俺の人生後悔ばっかだな...

 

 有栖とせっかく付き合えたのに...


 それに、俺まだなんだよなぁ...

 彼女ができたから毎日セ○クスするつもりだったのに...

 

 まぁ、そんな勇気ないか...

 

 と言うより、今俺はどこにいるんだ?何も見えないが...これが走馬灯というものなのか?



 そうか、俺は死んだんだな...

 


 俺は神を信じているから、一つだけ俺の願いを言ってもいいだろうか、それにもう死んでるんだ。




 神様…………………………俺はもう一度生きたい!!、もし新しい人生をもらえることができるなら、後悔ない人生にしてみせます。


 俺は生まれ変わりたい!!!!


 それと有栖が幸せでありますように。

  



 この願いが神様に届くと良いな。



 ……何やってんだ俺は、馬鹿か...


 そしてかすかにあった意識、そして思いは海よりも深く沈んでいった。



---



 普通死んだ人の思いはつまり、魂は地球から宇宙の果てまで沈み、消えてなくなるものだ。

 それを成仏といい、稀に思いが地球に残り成仏できない魂が幽霊となるのだが、それは今どうでもいい話。

 もちろん明の思いも沈んで成仏するはずだった。


 しかし、そこで一つが起こった

 その瞬間一人の悪魔がその思いを見つけたのだ。

 普通ではあり得ない確率だろう。

 
















 「フフフ面白い人間がいるものじゃ、二度目の人生を与えてやろうか。 生前みたいに楽な人生は送らせ!」


 「ベルゼブブ、丈夫な器を用意しておけ」


 「はっ、すべてはルシファー様の名の下に」


 こうして九十九明という一人の男は二度目の人生を神ではなく悪魔からもらったのであった。

 

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