番外編 リリシアは幸せ
ある時のことだ。
「ワタクシ先日から料理を始めましたの!」
「僕は料理したことないのですけど、難しいものですか?」
「それはもう、難しいですわ。明日テクト様も一緒にしません?」
「それは良いけど...」
したことないというのは嘘だ。
ただし、やったことあると答えて、下手だなと思われたくなかったからだ。
俺は前世、学校の調理実習でやらかした記憶がある...
確か...班でカレーを作ろうとしたんだ。
そのとき俺は米とカレーの煮込み担当だったはず。
それで米とカレーは大焦げ...
そう俺は料理についての程度が分からない。
生まれ変わっても料理は苦手だろう。
---リリシア目線---
その日の夜。
これはもしかして
フフ...フフフ...えへ...えへへ
ハっ…………ダメよ...リリシア冷静になるのですわ。
ワタクシはテラウス家の長女。
可憐に美しく生きるのです。
テクト様も最初の頃は話すときなど距離を取っていましたけど、最近は遠慮してきてませんの。
心を少しずつ許してくださっているのです。
そうここが大切。
テクト様の胃袋をつかむのですわ。
---テクト目線---
リリシアの城に行ったのだが、リリシアが出迎えてくれなかった。
普段なら、俺が来る頃には門の向こうで待っているはずなのだが...
少し心配だ...
困っていると屋敷の使用人らしき人が話しかけてきた。
「テクト様でしょうか?ワタクシはこの家の執事、ビッグマンでございます。あなた様のことは普段からお嬢様に聞き及んでおります。現在お嬢様はあちらの塔でご就寝なさっています。昨晩、夜更かしが過ぎたのでしょう」
「…………分かりました。ここで待ってても良いでしょうか?」
「それも良いですが、テクト様が迎えに行ったら喜ぶでしょう、迎えに行くのはどうですか?」
いい人そうなおじいさんだ。
それに今まで俺はリリシアの部屋には入ったことがない。
いや、リリシア以外の女部屋にもだ。
だが男一人を、女の子の部屋に連れて行って良いのだろうか?
もちろん手などは誓って出さない。
だが女の子の部屋には初めて入ることになる。
少しぐらいのラッキースケベイベントなどあったら嬉しい。
など、少ししか考えてない。
もう一度言うが、誓って手は出さない。
「分かりました、行ってみます!」
「それは良かった、だがなガキ、発情の匂いがする。お嬢様に手を出したらお前の金玉を引きちぎって、代々呪ってやるから覚悟しとけよ」
「え?.........ハハハ、そんなことするわけないですよ。ハハハ、面白いなぁぁ、ハハハ、それでは」
爆速で逃げた。
死を感じたからだ。
リリシアには発情しない、するつもりも、もうない。
俺、あのおじいさんが怖いよ...
---リリシア目線---
バン
「はぁ、はぁはぁ、ふーーーあの人怖いな...」
これは夢なのでしょうか?
ワタクシの家にテクト様が入ってきましたの。
テクト様は部屋全体を見渡しているのでしょうか?
何を見ているのでしょう?
次は鼻をクンクン動かしていますわ。
この部屋くさいのでしょうか?...
そしてテクト様と目が合った。
「えっ、ちが、違う。これは違います。」
え?
ワタクシは今気づいた。
ワタクシ自身が起きていことに。
乱れた髪と服、寝起きの顔、部屋、
それを見られてしまったの...
「みっ、見ないで下さいまし...」
次第にテクト様の顔が赤くなってゆく。
………ワタクシに呆れたのでしょうか...
昨晩調理するものを考えていたワタクシがバカだったのですわ...
早く起きないといけねば、ならなかったのです...
「き、着替えて。料理をしようか...」
「そうでございますわ...」
フフフ、失敗ですわ...
話すとき、ワタクシから目を離してましたの...
捨てられたのでしょうか?...
しかしその後のリリシアは幸せそのものだった。
---リリシアの日記---
今日はテクト様と一緒にハンバーグを作りました。
なぜかテクトのハンバーグだけ、辛くなりましたの。
その後も他の物を作ろうとなりましたが、調理場をテクト様が爆発させてしまいました。
すぐに生成魔術で修復されてましたの。
すぐに謝ってきましたわ。
優しいのですわ。
その後も一日中遊びました。
今までこんなに楽しかったことはありませんでしたわ。
途中ビッグマンが怒って
「テクト、お前を殺す」
などと言って追いかけっこをしていたのも面白かったです。
最近ワタクシ、毎日が楽しいですわ。
本当にテクト様と結婚したいですの。
ですがお父様が許してくれるでしょうか?
テクト様がワタクシを選んで下さるかも分かりません。
それでも日々を楽しむだけですの。
この恋はワタクシが幸せになれば良いのですわ。
テクト様を愛してます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます