09話 カザレの森1

 魔物の勉強をしているうちに4歳になってしまった...


 

---


 

 俺はダンジョンと魔物のいる森のどっちに行くかというリサの問に森と答えた。


 森のほうが安全そうだからなのと、ダンジョンだと必須スキルの勉強に時間がかかるからだ。

 俺的には前回のリサとの戦いが終わった次の日にでも行きたかったのだが、必要最低限な魔物の知識は学んでおけ

 という助言によりここ5ヶ月魔物の勉強をずっとさせられている。

 リリシアも一緒にだ。

 そう"5ヶ月”



 「いや、、、、長げぇよおおおおお」

 「いきなりどうしたのですか?」

 「テクト様が壊れましたの...」

 

 心の声が漏れてしまった...


 いつまで勉強するんだよ...

 筋トレの時もそうだったが、リサって極端だよな...

 森にはリサと戦った後すぐ行くんじゃなかったの?

 あれは夢だったのか?


 「師匠、いつになったら森に行かせてくれるのですか?」

 「全世界の魔物の名前、特性、住んでいる地域をすべて覚えてからと言いましたよね?。覚えていて損はないですし、森では何が出てもおかしくないのですよ」

 

 全部って...

 リサは魔物が何万、何十万種類あるのかを分かって言っているのか?


 「そんな事言ってますけど、師匠は覚えてるのですか?」

 「もちろんですよ、子供の時に頑張りましたから」

 「マジですか?...」

 「マジです」


 いや、こういうのって全部覚えるものなの?

 俺がおかしいだけかな?

 いや、リサがおかしいに決まっている.


 「リリシアもこんなの異常だと思わない?」

 「覚えるのは得意でございます。わたくしは残り2000種ほどで覚え終わりますわ」


 この人もおかしい人間だった...


 その後の3ヶ月は死ぬほど勉強した。

 魔術の勉強以上にだ。



---3ヶ月後---


 

 「いよいよ、今日が来ましたね」

 「テクトが覚えるのが遅いから8ヶ月もかかってしまいましたね」


 俺が普通の人間に決まっている。

 リサがおかしいのだ...


 「今日から行く森は”カザレ”と言います。テストキアの北部へ50キロほど進んだところにあり、推奨ランクはEランクですが、今のあなたはEランクほどの実力はあると思うので心配いりませんね」


 Eランクと言ったがランクシステムの強さの具合を言っている。

 ランクシステムとは最悪の魔族ジャック・タナトスの側近、ミツキ・アキトールが作ったGからSSに強さ指標を区切ったものだ。


 測定不能→SS→S→A→B→C→D→E→F→Gという具合で大まかな強さを表すらしく、総合力や魔力総量、武術の腕、魔術の強さ、難易度などに使われるらしい。

 そこまで考える必要はないらしいが、色々と指標に使われるそうだ。

 実際にいるのかも怪しいが、巷では測定不能者のことをエンペラーと言うらしい。

 男心をくすぶる...

 


 「結構遠いですね。移動は歩きですか?」

 「今回の目的は旅ではないので火炎馬生成フレームフィアードを使って一気に行きましょうか」

 「わかりました...」


 リサとのふたり旅も良いとは思ったんだけどな...

 

 ちなみに今回リリシアは城でお留守番だ。

 不満そうだったが危険なのだから仕方ない。

 

 「行きましょうか」

 「ですね」


 サリーとシュタインに挨拶をして出発した。

 シュタインが心配してきたが、リサの大丈夫という声で安心していた。



---



 「着きましたね、ここを進めばカザレになりますね」

 1時間ほどで着いた。


 「入ったら多くの魔物がいると思うので、常に周りに注意を払う必要があります」

 「何日ほど滞在するんでしたっけ?」

 「今回は初めてですし一週間にしましょうか。それと課題を与えます。セガクソベアというC級魔物の討伐依頼を魔術組合から取ってきました。既に数人の被害者が出たようですので早く討伐して欲しいとのことです。テクト出来ますね?」

 「Cランクですか...」

 「今のテクトが真面目に正面から向かったら負けて死ぬでしょう。しっかり作戦を立てて勝ちにいかなければなりませんね」

 「えっ...?僕一人なんですか?」

 「当たり前でしょう、行きたいと言ったのはテクトなんですから。生活も一人でしてもらいますよ」


 マジか...

 てっきりリサも一緒に戦うのかと思っていた。

 勝てるか心配になってきたな...


 ていうか、生活も一人って実質一人暮らしなのでは?

 憧れてたんだよな。

 サバイバル生活のほうがしっくりくる気がするが...


 「そのために魔物の勉強をさせたのです。あなたなら勝てますよ」

 「……期待に答えられるように頑張ります...」


 人から認められることは少し嬉しいものだな。

 いや、リサからだから嬉しいのだ。


 「荷物の確認は良いですか?」

 「バッチリです、と言うかほぼ持ってきてませんし」

 「それじゃカザレに入りますか。入ったら一週間出れませんよ」

 「気構えはできました。行きましょう」



---


 

 20分ほど歩いた


 外から見ると分からなかったが中に入ってみると美しい森林が広がっていた。

 この世界に針葉樹などの言葉があるかは知らないが、針葉樹と広葉樹が共生し、多くの植物が混在している景色が続く。

 水源である川や湖などもところどころにあり、動物も多々いる。


 皆が想像するであろう、よくあるファンタジー世界の森だな。



---


 

 「私はここを拠点にして一週間生活したいと思います。なにか困った時はこの辺に来てください」


 リサは小さな湖が近くにある場所を拠点にするようだ。


 俺も拠点を近くにしたいが、男としてのプライドもある。

 困ったからリサに頼るではだめだろう。

 

 1キロほど歩いたところに洞穴ほらあながあった。


 ここで休もうか。

 

 「ふぅ」

 

 森の地面は平面でない、起伏が激しいところを歩き続けるのは疲れるな。

 とは言っても日頃からトレーニングを欠かしてないせいか、数分休んだらすっかり疲れが取れた。

 昔だったら、今頃疲れて寝てたよな...


 ここを拠点にしようかな?

 そこまで広い訳では無いが、1週間生活する分には問題ない。


 荷物を置く。

 

 持ってきた荷物は短刀のみ。

 業物というわけではないが刀には強化魔術が使える。

 魔術を使うだけで前世の地球だったら世界一番切れるであろうナイフ以上の性能を引き出すことができる。

 まさに異世界様様だ。


 今日中にやるべきことは食料を見つけることだ。

 水は生成魔術で新鮮で美味い天然水を作ることができる。

 だが食料は作れない。

 熟練の魔術師は作れるらしいが今の俺には無理だ。

 この世界に携帯食などがあればいいのだがな。

 ということで食料を見つけることが最優先事項になる。


 と考えてるとちょうど外から音がする。


 ガッサ......カサ......


 できる限り気配を消して近づく。

 

 10メートル先に姿が見えた。

 あれはケイハケボウだ。

 本に書かれていた姿と全く一緒だな。

 イノシシのような見た目をしている魔物。


 確か食べれたはずだ、森のタンパク源とか言われてるようだったし。


 音を立てないように魔力を込める。

 

 ”魔力砲ペクシアン


 パンッ

 という音と共にケイハケボウの頭がなくなった。


 申し訳ない気もするが、俺も生きるためには必要なことだ。

 後で美味しく食べさせてもらうとしよう。


 洞穴前に運ぶ。


 困ったことは俺が料理を全くと言っていいほどできないことだ。

 俺には生で食べる、焼いて食べる、この二つの選択肢しかない。

 流石に生で食べるのは怖いので、結局焼いて食べるのつもりだが。


 炎魔術で焼き食べた。

 

 美味しくなかったが、命を奪ったのだ、全て食べなければならない。


 水もそうだったがこの世界は前世とは違い魔術というものがある。

 よって炎に困ることはない。

 魔術の便利さを再実感する。


 

 その後は特に何も起きず、1日目が終わった。


 

---シュタイン・ガランティーナ---



 得意魔術  なし

 苦手魔術  なし

 好きな魔術 サリーの魔術


 特徴

 23歳

 黒髪ショート

 ほっそりした体型

 子供好き

 魔力総量が著しく低い

 

 趣味

 魔道具の開発

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