10話 カザレの森2
2日目、3日目は特に何もなく終わった。
食料も結構集まり順調とはこのことだろう。
---4日目---
今俺は自作の釣り竿で魚釣りを楽しんでいる。
釣りをしている川は水深が深く、流れが速い。
大きい魚もいるのだが、俺の釣りスキルが下手なのか、餌が悪いのか小魚しか釣れない...
4日目にもなるとこのサバイバル生活にも慣れてきたころだ。
このあたりには弱い魔物しかいない、俺が釣りをしている間にも、G、Fランクの魔物が川の水を飲みに来た。
弱い魔物だからかもしれないが殺気をなくしていると、近寄って来たりもする。
俺も無駄に殺傷は好きでないので、害を与えてこない限りは攻撃はしようとは思わない。
異変に気づいたのは、3匹目の魚を待っているときのこと。
普段は何かしらの音が絶えないのだが、物音一つしない静寂に包まれた。
妙だ...
と思った瞬間にはもう遅く、爆音が続く。
ボッカン、ドッカン、ーーーーー………シャーーーーー………
何だ?
と振り返った瞬間に見えたのはセガクソベアの姿。
10メートルほど先に、セガクソベアが3メートルほどの魚を殴り殺し食べているのが見えた。
全身が真っ黒な毛で覆われて、見るからに獰猛だ。
体長は5メートルほど...
目があった。
あってしまったのだ...
”殺される”と直感で感じた。
今すぐにでも逃げ出したいのだが、あまりのおどろおどろしさに腰が抜けてしまった...
おい、俺の体...早く動けよ...
恐怖なのか、心拍数の上昇と共に息が上がる。
「はぁ、はぁ....はあぁ」
俺の考えとは裏腹にセガクソベアはあっさり俺から目を背けた。
助かった?...のか...?
安心したからか体が動く。
大事な時に動いてくれよ...
てか、あれを倒さないといけないのか...
今日はもう戦える気がしないので、また日を改めよう...
どこにいるかを分かるように、俺は微量の魔力をセガクソベアに飛ばし、この場を去った。
---
爆速で拠点である洞穴に戻った。
怖かった...
やはり本で見るのと実際に見るのは全く違うな...
少し思い出そう。
---セガクソベア---
黒い毛で包まれた体長5メートルほどの魔物
毛には対魔性があり、魔術の耐性が高い
主食は魚
熊のような見た目
普段は温厚だが狩りや攻撃された時に獰猛になる
二足歩行で歩く
視力が非常に良い
戦闘方法は拳や手についている鉤爪での肉弾戦を好む
こんな感じだったはず。
魔物の勉強をしていて良かったな。
さて、作戦を立てようか。
---5日目---
遠目からセガクソベアの観察を行った。
分かったことは俺と同じような洞穴に住んでいること
正午を過ぎると活動を始め川に行き、魚の捕食を始めること
魚を狩る時の攻撃速度はそこまで速くなく、リサの攻撃のほうが脅威だなと思ったこと
以上だ。
まだ準備することはある。
---6日目---
セガクソベアの住処の近くに罠を作る。
作るのは簡単な落とし穴だ。
穴を掘りそこに
作った穴を生成魔術で作った布で隠す。
この落とし穴をここら一帯につくる予定だ。
大変だったがこの作業が俺を後々助けてくれると思うと、体は動く。
---7日目---
目覚めたのは早朝
いつもはもっと寝るのだが、今日あまり眠れなかった。
自覚してないがやっぱり怖いのか?...
いや、戦いが怖くない奴なんていないだろう。
まずは落とし穴が壊れてないかを見に行く。
なにか大物が落ちてたら面白い。
着いて見ると敷いていたはずの大半の布が穴の中に落ちていた。
中を見てみると夜行性の小動物がたくさん罠に引っかかっている。
確認してて良かったな。
確認せずに戦っていたら負けていたかもしれない。
それと
布を再度被せ、セガクソベアの住処に行く。
まだ睡眠中だ。
俺が行動を起こすのは太陽が登り始めてだ。
それまでは静かに時を過ごすとしよう。
---
時は来た、俺は今から戦う。
リサとの模擬戦などではない本気の殺し合いだ。
戦いは好きじゃないが、セガクソベアは人に被害を与えている、そう考えたら、俺も心置きなく戦うことができる。
しかし...
体が震えている...
やはり怖いな...
だがこの恐怖が俺を冷静にさせてくれる。
さぁ戦おうか!
開始早々に
「グルルゥ...ガアァァァァ」
当然起きるよな。
こっちを見てくる。
前回とは違い、明確な殺意を感じる。
そして俺に向かって走ってきた。
もちろん俺は真正面から戦うほど馬鹿じゃない、落とし穴の場所まで全力で走る。
幸いなのが相手の足がそこまで速くないことだな。
無防備に逃げるのではない、
地味だがこういう攻撃が大事なのだ。
目的の落とし穴場に着く。
邪魔をしまくったおかげか、結構な距離を取ることができた。
真っ直ぐ進んだら俺が罠にハマるので、
あとは待つのみだ。
数秒すると、全速力で走るセガクソベアの姿が見えた。
万が一でも、落とし穴の存在に気づかれるのは嫌なので、
ボーンッ……
心配するの必要はなく、あっさり落ちた。
変なことを考える必要はない、
何十発といった爆発音とセガクソベアの咆哮が絶えない。
死んだか...?
と、簡単にもいかず毛が燃えていて、見るからに瀕死の状態で穴から出てきた。
「ガァァァァァァァァァァ」
もう落とし穴は用済み、すぐさま生成魔術で穴を埋める。
相手が構えた。
地面に下り俺も構える。
毛が燃えているとは言え、耐魔性はあると考えろ。
常に油断はするな。
よって魔術での攻撃という選択肢を消す。
となれば相手の得意な肉弾戦といこうか。
見た感じ、足を負傷している。
勝ち目は十分にあるってことだ。
こちらは短刀を使わせてもらうがな。
どちらも動かない。
両者のにらみ合いが続く。
そっちが動かないならこっちから動く。
相手の強みを弱点に変えるのが魔術師の戦い方だ。
俺は目を隠し叫ぶ。
「
セガクソベアの目の前に無数の光を展開。
普通に使ったら電球ぐらいの明るさを照らすだけの魔術だが、俺のありったけの魔術を込めた
俺の体と短剣にかける。
狙うは首。
今できる俺の最高速度で間合いに入るのと、同時に首を切るモーションに入る
奴も俺の存在に直観で感じたのか、拳を振り下ろしてきた。
両者の攻撃速度は同じだった。
つまり俺は首を、セガクソベアは俺の腹をえぐった。
雄叫びを上げる暇もなくセガクソベアは死んだ。
対して俺は額と腹に傷を負い、尋常でない痛みに襲われる
「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
頭の中が死ぬという言葉で溢れる
生前に刺された時と同じ感覚だ...
これはマジで死ぬぞ...
「
痛みが引いてゆく。
「大丈夫かい?」
あぁ、助かった...
声の方向を見ると、知らない男がいた。
「死ぬとこでした...ありがとうございます」
「お礼はいらないさ、回復魔術を使っただけだしな」
魔力総量が大きいな...リサ並みだ
「俺の名前はショウ・カクダリス。君は?」
「僕の名前はテクト・ガランティーナ」
「セガクソベアを倒すところを見てたよ、僕より幼いのにすごいね。今何歳?」
「4歳ですね」
「俺の3歳下か...僕はこの辺でもう行くよ、気を付けてね。」
「本当にありがとうございました!」
「うん、なんだか君とはまた会う気がする。バイバイ」
「はい」
奥の方へと歩いて行った。
あの子は何だったのだろうか。?
リリシアと同じ年で、あの魔力総量はすごいな。
「テクト、大丈夫ですか?」
「ワッ!?」
振り返るとリサがいた
リサか...びっくりした...
なんでここにいるんだ?
「驚かせてすみません。本当は怪我をしている時に行きたかったのですが、男の人がいましたので」
もしかしてずっと俺のことを見てくれていたのだろうか?
見られている感じはなんとなくしてたが。
「もしかしてずっと俺のこと監視してましたか?」
「………してませんよ...」
ハハ、この反応はしていたな。
やっぱり心配していたのだろうか。
「………戦いの音が凄かったですから...」
「わかりましたよ、師匠が見てなかったことは」
「ならその顔をやめてくださいよ」
「はーい」
その後は魔術組合へセガクソベアの死体を持っていった。
大きい報酬をもらえたのでその後は普段は食べれなさそうなお店で飯を食べ家に帰った。
家の料理の方が美味しい、リサとの会話は楽しいと
無意識にだがそう思うようになってきているテクトであった。
---???---
「ハハハハ、あんな子初めて見たよ
人間であれは勿体ないよなぁ
俺が貰っても良いかな?」
---セイ・ガランティーナ---
得意魔術 使用可能な魔術全て
苦手魔術 なし
好きな魔術 ヤノン砲
特徴
21歳
茶髪ショート
筋骨隆々な肉体
身長3メートルほど
戦闘狂
緻密な魔力操作が可能
漆黒の暴君の異名を持つ
趣味
魔式の開発
鍛錬
魔物狩り
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