11話 溺愛じいさん~変わり者の集まり~
5歳になった。
時が経つのは早いものだ。
この1年は変わらず魔術の勉強に精進した。
肉体面、精神面、知識面すべて成長してると思う。
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「明日からあたしの父さんが来るのよ~」
「久しぶりだね、この家に来るのは初めてになるのか。家を綺麗にしておかないといけないな」
「だね~テクちゃんは初めて会うんだっけ?」
「そうですね」
「おじいちゃんよ~」
「どんな人なんですか?」
「あたしには厳しかったわ~元々騎士団に入ってて今は辞めたけどそれなりに強い人よ」
俺のおじいちゃんは厳しい人だったみたいだ...
怒られるのとかは慣れてないんだよな。
やらかさないように気を付けなければ...
---次の日---
今日はおじいちゃんが来るのか...
普通は緊張しないのだが、厳しいと言われていたせいか、心構えてしまう。
色々考えても進まないのでいつもと変わらない生活を始める。
リリシアの城に迎えに行き、そのままダンジョンに向かった。
最近リサがダンジョンに来ることが減った。
メイド以外の仕事が立て続けに入ったそうだ。
リサがいないからと言ってやることは変わらない。
「テクト様これを見てくださいまし!---我が求めるのは美しき花、ここら一帯に咲きほこれ、ムロクス」
すると黒紫の薔薇のような花が、草しか生えてないこの場所に広がっていく。
「どうでございますか?」
「綺麗だね、なんて花?」
「ムロクスと言ってわたくしの髪色とテクト様の髪色を混ぜたような色になっていますわ」
そう言われたそうだ。
それに、俺は魔術が得意でないリリシアがこれほどの魔術を使えたことに驚く。
「花言葉は一生の愛と一生寄り添うですわ。わたくしと結婚してくださいまし!」
リリシアは毎日とはいかないが1週間から1カ月のペースで求婚をしてくる。
俺の性格上、普通だったら鬱陶しいと思いそうなのだが、不思議と嫌な気はしない。
もうリリシアと出会い2年か...時は過ぎるのは早いな...
「大人になったら考えようって毎回言ってるじゃないですか」
「テクト様のケチ...」
これが毎回の下りとなっている。
「これって何ランクの魔術?結構難しいでしょ」
「また魔術の話でございますか...Eランクでございますが...」
リリシアが拗ねたが、まぁいつものことだ。
それより俺はリリシアがEランクの魔術を使えたことが嬉しい。
「頑張ったんだな」
「はい!テクト様の為に頑張りましたわ!」
その後も少し魔術に触れていると、正午になった。
「そろそろ終わろうか、昼飯食べに行かない?この間街で美味しそうな店を見つけたんだ」
「どこでございますか?」
「行ってからのお楽しみさ!一昨日の魔術組合での報酬が美味しかったからおごるよ」
「わたしくもお金は持ってますし、わたくしがおごらせていただきますわ」
「女の子に払わせる男はゴミさ...女の子におごられるぐらいなら俺は死ぬよ」
「……分りましたわ」
---
実際に食べてみると可も不可もない料理店だった。
「普通だったね」
「普通でしたわ」
同意見だったらしい。
最近は魔術組合で得たお金でうまい飯屋を漁っているのだが、なかなか美味い店はない...
「俺はダンジョンに戻るけど、リリシアはどうする?」
「わたくしも行きますわ」
「なら行こうか」
俺たちは歩いてダンジョンに向かう。
---
それは、もうすぐで街の郊外に出るというところで聞こえてきた。
「じいさん、ずいぶん金を持ってそうだな。金を出せよ」
「お金なんてないさ...ワシはただの老いぼれよ」
カツアゲだ。
3人組のチンピラが一人のおじいさんに言い寄っている。
無視してもいいんだが、リリシアも見てるしな...
どうしたものか...
「テクト様、助けてあげないのですか?」
案の定、リリシアが尋ねてきた。
あんまり巻き込まれたくないんだがな...
かっこつけさせてもらうか...
リリシアを角に寄っておかせ、近づく。
「おい、チンピラどもその人は僕の家族だ、手を出すなら僕が相手になるぞ」
「誰だお前?」
助ける口実に嘘をつく。
するとボス的なやつが言ってきた。
「知らないようなら言っとくが、この方はヨウシ・タナンカさんだ。この辺では顔が広いぞ」
「そうさ、今なら見なかったことにするから、ガキはどっか行ってな」
取り巻き二人も何か言っている。
威圧してくるが、魔物に比べたら怖くないものだな。
一応魔眼を使っとくか。
魔力総量はボス的なのがE、他はF。
かと言って体も強そうじゃないし、俺が負ける要素はない。
正直に言って雑魚だ。
と言うか、このおじいさんの方が強いな...
これは助けなくて良かったかもな。
まぁここまでやったのだから、引きはしない。
「聞こえなかったのか?ガキ。それとも怖くて、声が出ないのかな?」
ボス的な奴が煽ってくる。
「お前には1ミリも怖がる要素はないよ」
「ガキだからってあんま調子のんなよ、言っとくが俺はもとEランク冒険者だ。さっきまでだったら許してたが、一回ボコボコにされるというのを経験した方が良さそうだな」
噛ませのように喋り、指をポキポキ鳴らすチンピラと、さっきから何も話さないおじいさん。
「話はいいから、早くかかってこいよ」
「なめやがって」
男が走ってくる。
俺が普段戦っている相手よりも動きが遅い。
男が大ぶりで拳を下ろしてくる。
俺はそれを避け、風魔術を込めた拳で殴り飛ばす。
比喩ではなくホントに飛ばした。
ついでなので取り巻きも殴り飛ばしておいた。
これで当分は懲りるだろう。
「ありがとうねぇ。君みたいな勇敢な若者がこの国を支えるのだろう」
「当然の事をしたまでです!」
リリシアが居なかったら助けてなかったのかもしれないが...
「テクト様かっこよかったですわ!」
リリシアも来る。
「ところで少しいいかい?」
「何でしょうか?」
「この場所に行きたいんだけど、どうも地図の見方が分らなくて」
俺の家だ...
リサの仕事相手か何かだろうか?
「ここなら分りますので案内しましょうか?」
「すまないね、頼むよ」
---
家に前着くとリサが急いでやってきた。
やっぱりリサの仕事相手だったのだろうか。
「久しぶりでございます。フライト様」
「リサか!でかくなったな!」
「サリー様が待ってます。さぁ中に入ってください」
サリーの客だったらしい。
「父さん!!久しぶりです!」
「あぁ、久しぶりだ」
父さん!?
この人が俺のおじいちゃんなのか、完全に今日来ることを忘れてた。
「この子が案内してくれてね、何か与えてやってくれ」
「この子って...あたしの子よ...」
「はい?」
「だから、あたしの子って」
「はあああぁぁぁぁぁぁぁーーー、もしかして君はワシの孫なのか!?」
「…………そうみたいですね...僕も気づいてませんでした」
「そこの女の子は?」
「テクト様の嫁ですわ」
「
「そうか...孫を見れた事でも驚いたのにガールフレンドがいるなんて...おじいちゃん幸せ」
テンション高いなこの人...
「ひ孫が見れるときも近いかもしれない...」
---色々話した後の自室---
分ったことはこのおじいちゃんが大の孫好きと言うこと。
さっきも、おじいちゃんと読んだだけで
「なんて良い響きだ!ワシ失禁してしまう」
なんて叫んでいた。
大の大人が5歳相手にだ...
サリーも時々ガキっぽくなる時があるが、あの人に似たんだろうな...
扉を叩く音と共にフライトとリリシアが顔を覗く
ノックの意味ないじゃん...
「テクトォ、夕飯の準備ができたそうじゃ」
「そうですか、今行きます」
ベッドから降り向かう
「それで、その時言ったのですテクト様が…………」
「そうか…………」
リリシアとフライトはすっかり仲が良くなったみたいだ。
リリシアも変わってるとこあるしな...
今日はリリシアも残り、夕飯を共にするらしい。
俺の家での夕食はリビングの長机で食べるのだが。
普段は少し空いている場所に二人が座る事によって、満席となる。
こう見ると家族みたいだな...
まぁ家族なんだが
今日の夕食はシチューのような物。
良い匂いだ。
「それで父さんは何日ほど滞在していくのですか?」
「え?帰らないけど」
「「「「「「はぁぁぁ?」」」」」
皆の声が揃う。
普段の食事では声を出さないメイド達でさえ。
「言ってなかったっけ?」
と言いペロッっと舌を出したが、全然かわいくない。
「今より面白くなりそうだね!」
そんな中シュタインだけは脳天気であったのだ。
---フライト・リンドル---
得意魔術 生成魔術 召喚魔術
苦手魔術 防御魔術
好きな魔術 植物を操る魔術
特徴
茶髪ショート
57歳
見た目が年の割には若く見える
大の孫好き
サリーには厳しいが、それ以外には優しい
変わり者
元騎士団所属
趣味
ガーデニング
人との会話
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