18話 選出されし者

 クラス選抜者。

 クラスの代表。

 この単語は人によって捉え方が違う。

 嬉しい者もいれば、嫌な者もいるだろう。

 俺は後者の方だ。

 俺はあまり目立つのが好きではない、そういう生き方をしてきたからだと思う。


---


 テルが家に呼ぶ事の手続きで学園に数日行けていなかった。

 つまり俺とテルは久しぶりの登校になる。


 今日からテルとは一緒に学園まで登校するつもりだ。

 一緒に住んでいるので当たり前の事だろう。

 普段はウズラの家にまで寄って行くのだが、テルの件もあるので今日は無視しようと思った。

 だが、わざわざ学園で説明するのもめんどくさいので結局寄ることにした。


 「ここを真っ直ぐ行ったらあの女のところか?」

 「そうですけど、気まずくないんですか?」

 「一人の女の子で気まずい思いをするなら、今まであんな態度取れていたと思うか?」

 「なんか納得しますね...」


 そう話しているうちに玄関前に立っているウズラが見えた。


 「おはよう」

 「うんおはよう!今日は来たのね。最近学園にも来てないから、心配してたわ」

 「色々ありましてね...」


 何だろう?

 化粧をしているのだろうか?

 美容に詳しくない俺でもパッと見て分かるほどに可愛い。

 若干髪質も良くなっている気がする。

 極めつけは香水の匂い。

 シトラスのような匂いがそよ風に乗って香る。

 ウズラも女性、美容に目覚めたということだろうか?

 それか、好きな人ができたとかもあり得そうだ。


 「ウズラ、なんか変わったね」

 「分かる?色々イメチェ………ゲッ....なんであいつがいるのよ?」


 あいつというのは言わずもがなテルのことだろう。


 「説明が少し複雑なんだけど...えっとね………………」

 「簡単に言うとテクトの奴隷になった。色々あったが過去は忘れてくれ、これからよろしく頼む」

 「なんの説明にもなってないし...それに私こいつ嫌いなんですけど」

 「まぁそんなこと言うな、俺はこれからもテクトに着いていく、俺が嫌いなら他に友達を見つけることだな」

 「はぁ?あんたどの口で言ってんの?テクトに負けた負け犬のくせして、よくそんな口がきけるわね」

 「おい、それは禁句だろ。テクト、俺もこいつが嫌いになった」

 「なら一人登校すればいいわ。あんたには、だっさい翼があるんだから」

 

 「………………君たち仲いいね...」


 「「仲良くない!!」」



---授業中---



 「ウズラ、この世で一番戦ってはいけない魔族は何だ?」

 「竜族だと思います」

 「正解だ」

 「そこの寝ているテクト、それがなぜか分かるか?」


 「………………………強いから?........」

 「一回死んでおけ

  確かに強いのもあるにはある

  だが一般的に竜族と戦ってはいけない理由としては、奴らは一匹倒すと竜の群れを呼ぶからだ。

  竜族は生まれたときから、ある魔術が組み込まれており、それは死んだときに発動する。

  その魔術によって仲間の竜を呼ぶことができるため、一気倒すと何十匹ものの竜が飛んでくる。

  そいつらを倒してもまた魔術が発生するため、今の現象が繰り返される。

  以上の事から竜と出会でくわした時は隠れるか、逃げるのが無難な選択だ。

  分かったか?テクト」

 「はい...」


 キン~コン~カン~コン~


 丁度授業が終わる。


 「丁度良い。お前達に連絡がある。

  知っている奴も多いとは思うが、もうじき人華祭が始まる。

  人華祭を知らない奴に説明するとしたら、各学年代表クラスの五人が戦う祭だ。

  簡単に説明すると、クラス内の五人が先輩たちと戦うということ。

  これは毎年行われるもので、入学したばかりの一年の実力を問うことと、二年生、三年生である先輩の実力を目の当たりにさせると言う目的がある。


  その前哨戦である。クラス対抗戦が始まるわけだ。

  この学年で一位となったクラスが人華祭の本戦に参加できることになる。

  毎年AクラスやBクラスが勝ち上がっているが今年のこのクラスなら本戦まで行けると私は思っている。

  その参加する五人を今決めたいと考えているのだが、参加したい奴はいるか?

  いなくとも五人は今日中に決めないといけないがな」


 一瞬クラス内が静かになった。

 体育大会的なものだろうか?

 だが俺には関係ないことだ。

 クラス内で五人というのなら俺は立候補するつもりはない。


 真っ先に挙手したのはハルヒ。

 「俺は強くならなきゃならねぇ。ライス先生、俺が勝ちに導いてやるよ」

 「最近のお前は見違えるほど強くなっている、期待しておく」


 良い自身だな。

 こいつ強くなると確信した瞬間だった。


 「わたし!私も参加します」

 「あぁよろしく頼む」


 次に声を出したのはウズラ。

 学級委員長なので当然と言えば当然だ。


 次は誰が出るだろうと思っていたらテルが手を上げる。

 こいつも立候補すると思っていたので意外ではない。


 「先生、俺とテクトも参加する」


 ???????

 聞き間違いか?俺の名前が聞こえたが...


 「テクトもか?許可はもらったのか?」

 「あぁ俺が許可をした」


 テルさんや、最近あなたアホォになってませんか?


 「僕は参加しませんよ、テルは黙っててくれ」

 「だが………………」

 「知ってるか?テクト。人華祭で好成績を出した者は学期末の座学試験で赤点を取っても留年しないんだ。今のお前が赤点を回避できると思っているのか?私はそうとは思わん」

 「………………………」


 良い条件に聞こえる。

 だが一つ引っかかる。

 俺はこの学年の強さを知らない。

 この人が言っているのは”好成績を出したら”の話だ。

 ただ注目を浴びて、ボロボロに負けるのは避けたい。

 逆にこれは良い機会になる可能性もある。

 この学年の強い奴が分かれば仲間集めが楽になるかもしれないからだ。

 どうするべきか?

 あと一個だけパンチが欲しい。


 「テクト、活躍すればモテるぞ」


 持てるぞ?もてるぞ?

 モテるぞ!!


 「モテるなんてどうでも良いですけど、ライス先生、僕も参加しますよ」

 「………………お前は分かりやすいな...」


 「あと一人だ、誰かいないか?」


 教室は静かなまま...


 「カイセ・カンザリお前なんかどうだ?実力は今の奴らに劣らないぞ」

 「嫌っす、俺は見る専っすよ」


 この空気は好きじゃない。

 皆が何も言わないが誰か出ろよと静寂の中で押しつけ合っている。

 本来は俺もそっち側だ。


 「そうだな...はぁZクラスの問題児、ウェカナ・トルマリン、お前はやらないか?」

 「………ワイが出たら百、勝ってもうやん。それでええんか先生?」

 「その自信が本物か見せて欲しいところだ」

 「そうやなぁ、ほな本気で勝ち狙いにいくで」


 こうして無事に人華祭の前哨戦メンバーは決まったのであった。



---ウズラ・ホースト---

 得意魔術  回復魔術 生成魔術

 苦手魔術  攻撃魔術

 好きな魔術 召喚魔術


 特徴

 緑髪 ロング ポニテ

 九歳

 少々ツンデレ

 テクトのことが気になっている?

 B級ヒーラー免許持ち


 趣味

 愛犬との戯れ

 ひなたぼっこ

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