番外編 君が笑う日 ~ケーキの味~

 仲良い相手や親しい人、心を許している者には笑顔を見せる。

 それは自然の摂理だと思う。

 相手が笑ってくれないのは、俺のことが好きじゃないのかもしれない、だから無理に笑って欲しいとは思わない。

 だが今までにこれほど、他人に笑ってほしいと思ったことがあっただろうか?

 いやあった。

 他人の笑顔ほど良いものはない!



---



 テルが家に来て5日が経った。

 

 あいつは驚くほど早く家に馴染んだ。

 コミュ力が高いのだろう。

 テルは誰と話すのにもニコニコしているなと思っていた時、リサが俺に言ってきた。

 

 「テル様は笑うことが少ない方ですか?」


 言われたら心の底から大笑いしている姿は見たことがない。

 社交辞令でも良いさ、だけどこれからこの家に居続けるなら、少しは俺達に心を許してほしい。


 そう思ってリサとサリーに頼んでテルが家に来てから1週間経ったことを祝うパーティーを開催することにした。

 もちろんテルには内緒だ。



---当日---


 

 テルには普通の夕食と言ってリビングに来てもらった。

 周りの光景を見て一瞬キョトンとした顔をしたが黙って食卓に座った。

 

 乾杯の合図とともに食事が始まる。

 リサが作る料理は基本的にどれも美味しいが、今日はいつも以上に気合いが入っている気がする。


 「美味しいですか?」

 「あぁうまいよ」


 またこの顔だ...

 作ったような顔。


 「そんな辛気臭い顔をしないでくださいよ」

 「あぁ?そうか?俺はいつもこんな顔だぞ」

 「それなら良いんですが...僕ケーキを作って見たんですよ。食べませんか?今日のために頑張りました」

 「ケーキは俺の大好物だ。もちろん食べる。」

 

 リサに頼んで持ってきてもらう。


 「ケーキを作るのは初めてなので、そんなに味を求めないでくださいね」

 「初めて作った料理を他人に食べさせようとするなよ。だが見た目は良いようだ」


 そう言って、ケーキに手を付けようとする。


 「いただきます」



 少しの静寂が続きテルが言った言葉は。



 「…………マッズぅ...」




 嘘だろ?と思ったが、続いて俺もケーキを口にする。


 「………………不味いな……」


 砂糖が多すぎるのだ...甘いの限度を超えてる...

 それに下の方はしょっぱい...

 塩を入れた?

 よく聞くことだが、本当に俺がこんなミスをするなんて、

 





 「ハハッ塩と砂糖どっちも入れるなんて...馬鹿かよッハハハ」




 ……笑った……





 「やればできるじゃないですか」

 「何がだよ」


 考えすぎだったな。

 テルはあまり笑わない奴なんだろう。

 だけど笑顔を見せてくれた。

 少しは俺達に心を許してくれているのだろうか?

 そうだったら嬉しいな。 

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  人は簡単に笑う

 時には考え過ぎているときもある

 一度頭で考え直すことも必要だ

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---二人はこの日食べたケーキの味を永遠に忘れることはないだろう。そうに---

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