06話 壁とは成功への挑戦権
成長してると思う。
前と同じように稽古の多くは筋トレだ。
だが最近は魔術も教えてくれるようになった。
ちょうど今教えてもらっているのは、攻撃魔術「
魔力そのものを具現化し放つ魔術と言われているが、実際は魔素を固めている感じであり、簡単に言うとビームだ。
今までの俺の攻撃魔術は実戦では使いにくいものばかりだった。
使おうと思えば魔力付与量を多くすればもちろん使える。
しかしそれではだめだろう
ということで本格的な攻撃魔術を教えてもらっている。
生前の影響でビームはイメージもしやすく簡単そうだなと思ったが、意外とこれが難しい。
普段から魔素が見えるので形にすることは可能だ。
だがそれを動かすとなると話は別である。
直進ならまだできるが、実戦では敵も動くその分、射出方向の調整、移動した敵へ、
これを一瞬でしなければならない。
まさに至難の業。
リサにコツを聞いたとこ
「慣れですね、無意識にできるようになるまで反復練習が必要です」
とのこと。
とか言うリサは召喚魔術で30匹ぐらいの空飛ぶ魔獣を召喚し、一匹一匹を一発で仕留める神業を披露した。
「流石です師匠!」
「すぐにテクトもできるようになりますよ。あなたは魔眼を持ってますし、魔術の扱いは私よりセンスがあると思いますよ。私はこのレベルにいくのにだいぶ時間をかけてしまいました。それに比べテクトは成長が早い」
と本人は言うが、この子が小さい頃天才と呼ばれていたことはサリーから聞いている。
悩んでも仕方ない、いっそ気分転換でもいこうかな。
「明日一日だけ休みをもらっていいですか?」
「いいですけど、なぜです?」
「明日は街を見ていこうかなって思ってるんですけど」
「それは良いことです!私が案内しましょうか?」
「いえ、大丈夫です。こういうのは一人で開拓していきたいんですから」
というやり取りの下、明日一日はオフをもらった。
最近根詰めし過ぎなんだ、たまには休んでリフレッシュしようか。
---翌日---
お金も貰ったことだし外に出るか。
食べ歩きとかしたいな。
「ちょっと待ってテクちゃん」
「なんですか?」
「この街は治安良いように見えて結構悪いから、気をつけるのよ。危ないとこには行かないでね」
「行かないよ、お母さん」
まぁ約3歳児相手なら心配になるのもわかる。
「いってきます!」
「いってらっしゃーい、本当の本当に気をつけるのよ~」
「はーい」
家の門を出て街を回る。
俺は週一で休日をもらっているのだが普段の休みの過ごし方は家で魔術の勉強。
つまり稽古の日と、さほど変わらない。
前に休日はいらないとリサに言ったが、それはだめと押し通された。
なので俺が休日に外の観光に行くのはこれが”初めて”だったりする。
普段は移動のついでに流し見する程度だが、こう見ると、露店が多いな。
街の活気が良いことは、賑わっている証だ。
---
好奇心をそそる匂いのもとに行く。
アイデックスの尻尾?
「店長これは何の肉ですか?」
「おぉ、坊主、見ない顔だな。俺様の名は”レン・ジューシー”ここらでは有名な狩人だが、知らないか?」
「知らないですね」
「これは名前の通りアイデックスって言う10メートルぐらいの魔物の尻尾だ。寝ているアイデックスを俺様の
口の中のヨダレが止まらん。
「……1本もらえますか?」
少し見た目が怖いが興味をそそる。
豪快にかぶりつく。
うまいな...
見た目に反して肉も柔らかく香ばしい、癖になる美味さだ。
この世界の食文化は前世の日本より発展している気がする。
一本をぺろっと平らげた。
「レンさん、この肉あと3本もらえますか?」
「あいよ」
「また来ます!」
噴水の段に腰を掛け食べる。
最近というよりこの世界に来てずっと俺の生活は充実しているな。
前世がクソ過ぎたのもあるが、生まれ変わって良かったとつくずく思う。
普通は前の世界に戻りたいと思うかもしれないが、俺はそう思わない。
あんな親は二度と見たくない。
心残りがあるとしたら有栖だが、もう有栖のことは忘れることにする。
戻るつもりがない世界の人を考え続けるのはつらい...
九十九明は死んで今の俺はテクト。
俺は次の恋を探すとする...
と思っても簡単には忘れらないのが現実だ...
せめて有栖には幸せになって欲しいのは願っている。
「キャーーーーーー」
叫び声が聞こえた。
不吉だな。
なにか事件か?
行かなくても良いかもしれないが、人助けは大事だ。
声が聞こえた方に向かう。
「助けてーーーーー、助けてくださいましーーーー...」
人攫いだ。
大男が少女を抱え走って逃げている。
なんで他の人は助けないんだ?...
巻き込まれたくないのだろうか...
俺は生前が日本人ということもありこの状況は許せん...
攫ってる奴も傍観者も。
「
魔術を使い追いかける。
見る感じ、この男は強い。
筋骨隆々な上、魔力総量が多い。
「待てよ人攫い」
男は俺を無視する。
「助けてーーーッッ」
「
男が何かしらの魔術を使い少女の音が消えた。
便利な魔術だな。
「
少女に巻き込まないように威力を下げて放つ。
けれども、
「チッ...」
追いつくのは多分無理だ。
こいつは俺より体力がある。
このまま行けば、街の郊外に出られてしまう。
できればすぐにかたを付けたい。
今の俺が咄嗟に使える魔術はエレメンタルシリーズのみ。
だがこいつを倒す火力を出そうと思うと少女への影響は避けることができない。
どうしようか?
……………やるしかないな...
今ある勝ち筋はただ一つ”
狙いは
作戦は走りながら
そこまで効果は見られそうにない。
しかし今回は相手の注意を引くだけでいい。
「
「さっきからお前しつこいんだよぉ、ガキがなぁ、邪魔するな」
気を引くことは成功かな。
あとは
テクト!集中とイメージだ、邪念を混ぜるな!
「
魔力を形にすることは成功...
魔力量普通
軌道は直線
縮小していき威力を上げる
あとは放出のみ
「いっけぇぇぇーーー」
軌道を曲げろ。
前に回り込めさせろ。
イメージ通り
「クソガキィぃぃぃ、大人を舐めるなよ」
男は少女を投げ捨て戦闘態勢に入った。
次に大剣を構て走ってくる。
ヤバい...
俺はさっきのでイケたと思ったが、回復魔術で傷を直しやがった。
もう無理かも...
奴は俺より強い、多分だが勝てん。
もう負けたかもな...
バァーーーーン
次の瞬間男が爆音と共に吹っ飛び黒煙が広がる。
何だ?
「ハッ、ハッ、ハハハっ」
すると誰かの笑い声が聞こえた。
笑い声が聞こえた方を見ると人攫いの3倍はあろう図体をした男が歩いてきている。
敵か?
続けて戦闘態勢に入る。
「そう警戒しなさんな、大丈夫か?坊主」
敵ではなさそうだ。
よかった...
「……ありがとうございます、助かりました」
黒煙が晴れ、人攫いの方を見ると気絶していた。
「こちらこそ、ありがとよ、坊主が足止めしていなければ今頃攫われていただろうさ、それとシュタインの息子だろ?テクトだったか?」
シュタインの知り合いだろうか?
それにこいつ魔力総量が大きい。
今まで見てきた人間の中で
「はい...そうですけど、誰ですか?忘れてたらすみません」
「分からないのも無理はない俺が一方的に見てただけだしな。俺の名はセイ・ガランティーナ!シュタインの弟で、お前の叔父になるわけだ。ハッ、ハハハっ」
初耳だ。
「困ったときは騎士団”オーディナリー”に色々相談をくれよ。それとサリーの姉御によろしく言っておいてくれ!」
その後セイは人攫いを肩に乗せ、飛んでいった。
そして少女もいつの間にか消えていた。
「と、いうことがあって、
「それは良かったです」
「それでセイさんは強いんですか?」
「今の騎士団では最強だと思います。あの子がいなければ今この人国は成り立ってないでしょう、ちなみに騎士団時代の私の後輩なんですよあの子」
「どんな人だったんですか?」
「手がつけれない子でしたね、でも強く、良い成績を残す子だったので怒るにも怒れず...思い出したら腹が立って来ました...」
「仲が良かったんですね」
「まさか」
まだまだ俺には強さが足りないなと実感するテクトであった。
---その頃のガランティーナ家---
「兄貴、ちょっといいか?」
「あぁなんだい?」
「少しお宅の息子さんの話があってな」
「テクトがどうしたのかい?」
「あれはバケモンだ、テクトが戦ってた相手、あれはD級、指名手配ムクムクニーヤだ。逃げ一方だったとは言え、D級に傷をつけるガキがいるとはな」
「喜んで良いのか悪いのか...」
「褒めてるぜ」
「”漆黒の暴君”と言われ他国から恐れられる君が褒めるんだ、テクトは才能があるんだろうね...サリーに似ちゃったか...」
「まぁあれは、今のうちに魔術を叩き込んでた方がいい」
「分かったよ、みんながそう言ってきてね...最近は悩みっぱなしだよ...」
---テクト・ガランティーナ---
得意魔術 攻撃魔術 強化魔術
苦手魔術 防御魔術
好きな魔術
特徴
2歳9ヶ月
魔眼持ち
ガランティーナ家長男
黒髪ショート
趣味
魔術の勉強
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