07話 過去との餞別 〜女の子って難しい〜
俺は女性と話すことが苦手だ。
どうしても話している時に有栖のことを思い出してしまうからだ。
何度も忘れようと思った。
だがどんなに忘れようとしても脳裏によぎる。
最初の頃は店の店員が女性ってだけで話すのを
最近はマシになってきたが、時々女性と接点を持つのを躊躇ってしまうことがある。
もちろんサリーやリサ、メイドさん達には抵抗がない。
これは家族だからだとなんだと思う。
そんななか、俺の家に一人の女の子がやってきた。
数名の傭兵も付いてきている。
皆がリビングに集まった。
「先日助けていただいたリリシア・テラウスと申します。6歳でございます。」
ラベンダーのような透き通った紫髪。
可憐という言葉がよく似合う容姿だ。
「………無視でございますか?」
「ぼ、僕です?」
「そうでございます]
誰?...
ヤバい思い出せない...
前に見た記憶はあるが...
「誰でしょうか?」
「2ヶ月ほど前に助けてくださったではありませんか、もしかして忘れてますの...」
泣きそうになっているが分からないのは仕方ない...
2ヶ月前......ペクシアンを打てるようになったぐらいだな...
あっ、あの時の少女か?
それで礼を言いに来たって感じか
「あぁ、思い出しました。人攫いに遭ってた女の子ですか?」
「そうでございます、先日は助けていただき、ありがとうございました」
「それで、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「今回はテクト様とお話がしたくて参りました。」
話が見えない。
特に話すことなどないだろう...
あの時以外の接点はないよな?...
「攫われてるのを助けた事以外で接点ありましたっけ?」
「いえ、話すのは初めてでございます。…………先日の件で...わたくしテクト様のことが好きになりましたの。…………私と結婚してくださいまし」
「は?」
---
咄嗟に街に逃げ出してしまった。
何か体の中から上がってきそうになったからだ。
この頃は何かある度、レンのテキ屋に行っている。
最近は通いすぎ仲が良くなっている。
いつも通りにエニウェアバードの焼き鳥を頼む。
「いつもありがとな。売上が上がってかみさんも喜んでるぜ」
「こっちこそ助かってますし、礼はいいですよ。いつも美味しいですからね」
しかしリリシアは何を考えてるのだろう?
リリシアを助けたのは確かに俺だが、好きになるほどか?
それに6歳児...俺とは3歳差、子供の3歳差はでかいだろう...
「何か悩んでるようだなテクト?いつもに増して深刻そうな顔をしてやがる」
「色々あるんですよ...」
「その顔は女だな?」
なんでこの男は分かるのか?
そんなに分かりやすい顔をしてたか?...
「そうですよ、悪いですか?いきなり話したことのない女の子から求婚された。だから逃げた。でも僕は色々あって女性が苦手なんですよ...」
「悪くねぇさ、異性が苦手じゃない男なんていない、俺も過去には色々あった、だがな求婚されたと言ったが、その言葉を言うのにどれ程の勇気がいるかは分かっておいた方が良い」
…………確かに逃げるのはダメだったかもしれない...
「ハッハッハ、俺は求婚した方なんだがな」
「今は幸せですか?
「おうよ子供もできて、かみさんはうまい飯を作って俺の帰りを待っているんだ」
考えすぎなのかな...
リリシアと言ってたか?
話したいと思う、でも有栖が頭に出てくる...
俺は正直もう有栖のことは忘れたい、だが普通に忘れてはだめだろう。
テクトと九十九明という二人の人間は、同じであって異なる人間なんだ。
「少し視野が広がりました、いつもありがとうございます!いってきます」
「あぁ、また来な」
やるべきことが決まった気がする。
俺は急いで家に帰る。
家の門の前にはリサがいた。
「そろそろ帰ってくると思いましたよ」
「リリシアさんは?」
「帰ってしまいましたね」
「そうですか...」
悪いことをしてしまった
「リリシア様はですね、この国の王、
………マジか...
驚いた...
地位が高いだろうとは思っていたものも、これほどとは...
「そんな方が、先日頭を下げて、テクト様と結婚させてくださいと、頼んできたのです。最初はサリー様もシュタイン様も止めていたのですが。何度も何度もお願いをされていくうちに負けてしまいましてね。本人の意思を組むということになりました。」
「状況は分かりましたけど、最初に僕には言っててくださいよ」
「それはリリシア様に止められましてね。自分の口から言いたかったそうです。リリシア様のことを簡単に話しましょうか。彼女は一人での外出に憧れていたそうです。その想いが止められなくなって一人で城から抜け出してしまったそうなのですよ。年頃の女の子にはよくあることです」
「それで人攫いにあったと?」
「そうです。死ぬんじゃないか、奴隷にされるんじゃないかと思い、泣き叫ぶも周りの人間は何もないかのように沈黙を通す。そんな中一人の男が助けてくれた。これで好きになるなって方が無理ですよ」
なるほどな...
だがいきなり結婚とは飛躍しすぎだと思うな...
「2ヶ月間ずっとテクトと会いたいと思っても行動できず、何度も悩みやっと会うことができた。もちろん話さなくてもテクトの意志ですから、良いです。ですが不器用な女の子の気持ちをは少し考えれる男の子のほうがあなたの師匠としては嬉しいな」
「何も聞かずに逃げたのは申し訳なかったです...」
「それもそうですが、明日もまたいらっしゃるようです。ぜひ会ってあげてほしい」
「もちろんですよ」
明日また会えることが分かった
それと今日俺にはまだやることがある
「師匠、庭に造りたいものがあるのですが…………」
---
「できた!」
俺はリサやサリー達に許可をもらって、庭に九十九明の墓を造った。
これが良い行いなのかは分からない。
だが過去の自分、九十九明との関係の幕引きにしたい。
忘れるわけではない、心に刻むのだ。
九十九明、鬼龍院有栖、そして前世の両親はここに置いていく。
俺は
---次の日---
「昨日はいきなり逃げてしまってすみませんでした」
「大丈夫でございますの、本来はわたくしが謝るべき立場でございます」
今も女性と話すことが苦手なのは変わってない。
だが、気持ちの整理ができたのが原因か、不思議と気楽に話せる。
「テクト様、改めてわたくしと結婚してくださいませ」
もう俺が言うことは決まっている。
「正直いきなり結婚は厳しいです。でも友達から。友達から仲良くしていきませんか?」
---サリー・ガランティーナ---
得意魔術 炎魔術 防御魔術
苦手魔術 なし
好きな魔術 炎系統の魔術
特徴
22歳
魔眼持ち
テクトの母
赤髪ロング
過去に騎士団団長
獄炎の獅子王の異名で呼ばれていた。
趣味
魔術とテクトの成長を見ること
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