16話 闘いとは唐突に起こるもの 〜女遊びは程々に〜
入学してから約一ヶ月。
俺の生活も安定してきた。
友達はウズラ一人だが毎日が充実している。
だが何も悩みがないわけではない。
前にも言ったが俺のクラスには問題児が多い。
勉強しかできない者。
実技しかできない者。
成績が良いが面接での対話が苦手な者。
素行が悪い者。
と言った感じにこのクラスは問題児だらけだ。
このクラスでも群を抜いて問題児だったのがハルヒだったのだが、今は大人しくしている。
少しの間は平和だった、だが悪者がいなくなっても平和になるわけではないのだ、次の悪者が出てくる、その繰り返しだろう。
万人が彼を悪者とは言わないだろうが、俺はあいつが許せない
そうこの学園で女を誑たぶらかしまくっているあいつを。
俺はテル・ニガリアスを許さない。
---
テル・ニガリアス
ニガリアス家の長男
文武両道で人とのコミュニケーション能力も高い
イケメン
ニガリアス家はこの国の中でも有力な貴族一家
これが俺が集めた奴の情報だ。
文武両道でコミュニケーションも顔も良い。
その上、実家も権力を持っている。
誰もが羨むであろう人間だろう。
しかし完璧な人間などいないのだ。
性格に難ありで大の女好き。
入学当初に女子教師を口説き自分の女にしたことによってZクラスに配属されたようである。
なぜこいつを許せないのかを言おう。
昨日の話だ。
---1日前---
最近は放課後ウズラと他愛もない話をしている。
「でさ、この間のライス先生凄かったですよね」
「分かるわ。教室の端で……」
「君ってウズラちゃんって名前で合ってる?前々から思ってたけど、ウズラちゃんって可愛いよね!僕と付き合わない?」
いきなり男がウズラに告白してきた。
俺が居るのが、こいつは見えないのだろうか?
普通告白だったら俺はこの場から立ち去るべきだろうが、気になる部分がある。
こいつの周りに女が10人ほどいることだ。
「だれよあんた」
「それは失礼。女性に名乗るを忘れてはいけないね。僕の名前はテル・ニガリアス。将来人王になる男さ。だからこれから僕に着いてきたら、ここの彼女達みたいに良い暮らしができるのさ。僕と付き合おうか!」
頭のネジがぶっ飛んでる男がいるもんだな...
「嫌よ」
「最初は皆そう言うさ、さぁ僕に着いてきなよ」
そう言って、テルはウズラの腕をつかもうとした。
トンっ...
無意識に俺の手がそれを阻止していた。
「なんだい君?僕は男には興味ないのだよ」
「許可なく女の子を触るのは失礼ですよ」
「質問に答えなよ。なんだい君は?」
俺は何だ?
ウズラの友達か?
うん、そうだろう。
「ウズラの友達です」
「友達なら友達の恋路に口を出すのは失礼だろ?」
ムカつくな...
まずこれは恋路でもなく一方的な告白だ。
ウズラの気持ちも聞いてない。
「だから……」
「分かったさ!君は彼女が好きなのんだろ?」
ウズラの肩が大きく動いた
ビクッと音が出そうな勢いで。
変に話を広げないで欲しい...
俺には師匠がいるんだから...
「話を変えないでくれ、俺はただ友達が……」
「シャイボーイなんだね。平民は好きな女は一人と決めている者達ばかりだからね。実に愚かさ」
こいつは人の話を聞けないらしい...
どうやって説得しよう。
いっそ、魔術でボコすか?...いやだめだ。それじゃ俺も人の話が聞けないみたいじゃないか...
どうするか...
「だが貴族たる者、愚民に手を伸ばすことも必要さ。男らしくタイマンといこうか!」
だめだこいつ...脳がチンパンジー並だ...
「決戦は5日後。テストキアの東部の闘技場でやろうか。君が負けたらウズラちゃんは僕の嫁にする」
「待てよ、僕は……」
「言っとくが僕は生まれてから一度もタイマンにおいては負けなしだ。心得ておくように。それじゃバイバイ!」
そう言ってテルは去って行った。
馬鹿にしてきた挙げ句、勝手に決めやがった...
許さねぇ...あいつ...
今まで色々な人間に会ってきた。
だがここまでキャラが濃い人間には初めて会った。
---翌日---
「勝手に何決めてんのよ」
「見ましたよね?僕の話は一言も聞かずに決めていったの」
「私あんなのと結婚しないわよ」
「本当にすみません...」
「で、どうするの?」
「やるしかないですよ...テストキア中にこんなビラ貼られたら...」
ビラには俺とテルが4日後に戦うと言うのが、大きく書かれている。
「しょうがないわね...まぁテクトが勝ったら何貰うの?」
「何がです?」
「勝者にはバチ・ニガリアスから望んだものを何でも貰えるらしいの」
「……へぇ...考えとくよ」
新しい魔書でも貰おうかな。
聖戦に向けて兵士を貰うのはどうか?
まぁ、まだ時間はあるんだ、ゆっくり考えよう。
「私...とか言わないでね...」
「テルみたいなことは言わないですよ」
「なら...いいんだけど...」
テルの情報でも集めておくか
---当日---
闘技場の名前は『ニガリアスの花園』
名前の割に花は咲いてなく。
なぜこの名前?という感じだ。
今日の闘いのことは一気に街中に広がり、今日の観客は1万人近く来るらしい...
意外にガランティーナと言う家系は有名なようで、ガランティーナ家の長男とニガリアス家の子息の闘いには興味があるらしい。
著名の方が数人来るらしいのでミスして恥をかかないようにしないとな...
闘いは正午に行われるのだが、少し早めに来てしまい、今は待合室で待って居る状況だ。
コンコン
まだ返事をしなかったのだが、勝手に入ってきた。
「今日は負けないよ!父様も見てるんだ。君に勝ち目はないと思ってもらってかまわない」
許さないと言ったが俺は別にそこまで怒っている訳ではない、ただこいつの態度の少しだけ腹を立ててるだけだ。
だから俺は別に負けても良い。
俺に直接的な害はないからだ。
けれども、折角できた学園での友達を失いたくない
よって俺はこいつを倒す。
「あぁ、僕も負けるつもりはないよ!」
---
そのあとすぐにウズラが来た。
「負けないわよね?」
「勝ちますよ」
「あんな男に着いていきたくないわ」
「大丈夫ですよ。何があってもウズラは僕が守ります!」
最高にベタなセルフで格好付けた。
惚れても良いんだぜ?
「…………ありがとう...」
いつものような強気な言葉は返ってこない。
確かに勝手に結婚を決められたんだ。
それもテルはこのようなことを毎月のようにやっているらしい。
結果、嫁は増える増える。
そんな家庭でウズラは幸せに暮らせるだろうか?
否
そこには金はあっても愛がない生活だろう。
そんな男の元でウズラは生きたくないだろう。
そろそろ時間か...
「見てて下さい。僕は負けませんから!」
「それで負けたら許さないから」
いつもの調子のウズラに戻った。
「闘いに行ってくるよ」
しばらくしてテクトとテルが試合場に現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます