04話 滞りと師匠
魔素の種類を理解するのに半年がかかった。
うーん...多すぎるな...
この半年間でどの魔素がどの属性の魔術に合うかなどは大体理解はできた。
半年間ずっと魔術に触れ続けた結果かもしれないが、最近だと無意識に魔素の選択ができるようになってきた。
自分が怖い...体が覚えてるのだろうか...
この頃は魔術を使うたびに、冒険者に憧れてきた。
当面の目標は強い冒険者になることで、魔術の練習に努めている。
この半年での成長をまとめると大きく2つのことができるようになった。
1つ目は
100%とは言わないが90%ぐらいは魔眼を使いこなせるようになったこと。
俺の魔眼には2つの性能が兼ね備えていることが分かった。
1つは魔素が見えること、これは半年前にわかったことだ。
2つ目は生物の”魔力総量”が見えること。
これが分かった時のことは、いまだに覚えている。
最初の頃の俺は一人の時間でしか魔力を使っていなくて、それでも問題がなかった。
だが最近の俺の体は寝る時以外何かしらで魔力を使ってないと、落ち着かなくなってしまうようになってしまった。
完全な魔力依存症だ...
ということで、家族でご飯を食べる時に魔眼に魔力を込めた瞬間、サリーからオーラのようなものが溢れ出したのだ。
もちろん最初は何のことかは分からなかったのだが、このことは魔書にて簡単に見つかった。
世界で一番多い魔眼は「魔力眼」らしいのだが、魔力眼の性能の中に他人の魔力総量が見えるというものがあった。
完全に俺の置かれている状況と同じだったため、俺の魔眼には生物の魔力総量が見えるという”魔式”も備わっているということが分かった。
ちなみに俺の家庭の魔力総量事情は、サリーが一番多く、次にリサ、その次にメイド達、最後にシュタインとなっている。
シュタインは多分
子どもとして心配だよ...
逆にサリーはというと、俺の1000倍以上は魔力総量が大きいと思う。
もちろん、俺は魔眼で魔力効率がバカがつくほど良いので、惨敗かと言われれば、そうでもない。
うん...負け犬の遠吠えだな...
それより、なんでサリーはあんなに魔力総量が多いのだろうか?...
前にも思ったことだが絶対強いよな...
少し魔眼について長くなってしまったが、2つ目は防御魔術以外の5つの魔術を”いちおう”出せるようになったこと。
攻撃魔術は魔眼の影響が顕著に出ており、イメージできる簡単な魔術は大半できるようになった。
もちろん消費魔力が俺の魔力総量より多い魔術や、複雑な仕組み、複雑な詠唱の魔術はまだ使えない。
大規模魔術もやってみたいのだが、少なくとも家の中では無理だ。
俺って未だに外へ出たことないのだが、そろそろ外に出てもいいとは思う。
強化魔術は
これは今のとこ
召喚魔術はアリみたいなちっさい魔物を出せた。
召喚というイメージがあまりできなく、何度も練習に練習を重ねた結果、アリ...の召喚に成功...
これからも召喚魔術は練習していきたい。
回復魔術は擦り傷程度の回復なら可能だ。
怪我をするということがあまりなく、これは練習したくてもできない。
普通はエニウェアバードなどの数が多い生物で回復魔術の練習をするらしいが、まず家に入って来ることが少ない上に、俺は生物を傷つけることに少し抵抗がある...
最後に生成魔術だが、複雑な構造以外の物は簡単に作れるようになった。
しかし、これには魔力が大量に必要とされる。
無から一つの物体を作り出すというのはそれだけ魔力を使うということだろう。
最近一番ハマってる魔術は生成魔術だ。
今試そうと考えてる練習は、生成魔術で水を作り出し、その水を魔力で操作すること。
「
そこで、水自体を操る事によって
魔力消費が多いことが問題だが、俺の魔力効率にかかれば、そこまで問題とはならない。
それに実戦では雨の日や水辺などの場所で使うことになると思うので、かなり強力な力になると思う。
防御魔術は何度も練習したが、1回も使えない。
防御魔術の基本の自分の防御力をあげるというのは、強化魔術で多少上げることはできる。
だが、シールド生成ができないのだ。
魔術師の基本的な戦い方は攻撃魔術で相手に攻撃。
相手の攻撃はシールド生成し防ぐ。
これを繰り返し相手に隙ができるまで続ける。
もちろんこれ以外の戦術はあるが、この戦い方が普通だ。
俺はこのシールド生成が使えない、これは魔術師としては致命的な問題だ...
それともう一つ、順調に魔術の技量は高まっていると思うが、最近は自分の成長が魔術を使い始めた当初に比べ、感じにくい。
1年頑張り、できることは多くなったが個人では限界があるということだ。
魔術学園に通う
家庭教師を雇ってもらう
という手を考え、リサに相談したのだが
魔術学園に通う、これについては基本10歳になる歳で通うらしい、中学校みたいなもんだろう
もちろん10歳以下の年齢でも通うことはできるらしいが、変な目で見られることは確定だろう。
俺が中学生で学校に2歳の子供がいきなり入ってきたら、ビビるし、あまり話さないだろう。
家庭教師を雇ってもらう、この事を相談したらリサが自分が教えると言ってきた。
今聞いたことなのだが、リサとサリーは昔、騎士団で働いていて、そこそこ強かったらしい。
ありがたいことだが、サリーとシュタインに報告して許可をもらってからという話になった。
俺は未だに親に魔術使ってること言ったことないんですよね...
まぁ
---夕飯の時間---
メイドさん達が作る料理はうまい。
この世界の料理のレベルが高いのか、この家が恵まれているのかは分からないが、俺は今の環境に満足している。
今は前世にはなかった優しい両親、家庭がある。
だから、親に隠し事をするのは良くないだろう。
今までしてきたのだが...
「お母さん、お父さんに少し話があるのですが...」
何かを知ってるような顔をするサリーと何も知らなそうな顔のシュタイン。
「なんだい?テクト」
シュタインが言う
「1年ほど前から魔術の勉強を独学でやってたんですけど、最近は壁に突き当たるというか、成長を感じれないんです。それでリサさんに相談したところ、リサさんが鍛えてくれるってことになったのですが、その許可が欲しいんです、いいですか?」
「……1年って、1歳の頃からかい!?」
「…………はい...」
秘密にしてたことを怒られるかな?...
「そうか、テクトは魔術の才能があるんだろうね、サリーに似たかも。そんなことに許可なんていらないさ、テクトの好きにしていいよ」
優しいな...他人はくだらないことだと
ただ、親から”優しくされる”という簡単なことを前世でしてもらえなかった俺の心には染みる...
「ありがとうございます!」
「いいさ、サリーもいいだろう?」
「あたしはテクちゃんのこと、前々からリサから聞いてたし、別にいいよ〜」
「前から知ってたなら僕に教えてくれても良かったじゃないか」
「あなたの反応が見たかったのよ〜」
「君はいつもそうなんだ、少しは教えてくれていいじゃないか」
「は〜い」
「僕には君しかいないんだから、頼むよ」
…さっきまでカッコよかったシュタインが少し惚気けた...
俺の気抜けした視線を感じたのか、シュタインが急にこっちに話してきた。
「………まぁともかく...安全第一、体には気をつけるように、いいね?」
「はい!」
その日はそのまま終わり、明日からリサから鍛えてもらうことになった。
---次の日の修練場にて---
「今日から私がテクト様に魔術とそれ以外の教育などもしていきたいと思います、これからよろしくお願いしますね」
「はい、リサさん、こちらこそよろしくです!」
「
「え...」
あまりのキャラの変わりように声がでた。
「え、じゃないです、いいですか?、私は今メイドである以上にあなたの師匠になるわけです、師弟関係はしっかりしましょう、ね?」
まぁ俺のほうが偉いとかないし、それに可愛いからいいか...
改めて挨拶だ。
「はい、これからよろしくお願いします、師匠!」
リサの頬が少し緩む
これから楽しみになってきたな。
今思えばこの時がどんなに楽だったか、
たった今、楽しくも辛い地獄が始まったのだ。
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